【そもそもなぜ法科大学院?】
 2001年6月、政府の司法制度改革審議会が提言した内容に、「今後の日本は、規制と調整型社会ではなく、事後チェック・救済型の社会に変化する」という流れに沿っている。現状のままでは、裁判官・弁護士・検察官など法曹の数が圧倒的に足りなくなるため、新しい仕組みを作ろうとしたのが発端となっている。現在の司法試験では年間1000人の弁護士・検察官などが世に出ているが、新制度が始まる2004年には1500人、2011年には3000人と3倍に増やして、2018年頃の法曹人口全体を現在の2.5倍にあたる約50,000人にまで増やすことを目的としている。
 法科大学院は、いわば日本版のロースクール。法学部出身者なら2年、それ以外の学部出身者なら3年間勉強すれば新しい制度下での司法試験で約7割から8割が弁護士資格を得ることができるという。

【弁護士になる期間は短縮されるのか?】
 今の議論がそのまま実現すれば、新制度下では確かに速くなると思われる。法学部出身者が2004年まで待って法科大学院に入学したとすると、最短2年後の2006年には新司法試験を受験できる。これに本当に7~8割合格するとしたら、2004年まで待てば最短2年で合格できることになる。現在の司法試験の平均合格年数は5.2年といわれているから、かなり速いと言える。

【現行司法試験はどうなるの?】
 現在の司法試験も2010年までは存続する。今の試験制度である程度勉強してしまった人は、こっちを受けることになるだろうから、2006年までに合格してしまえばその方が速い。
 ややこしいことに、現行司法試験廃止後に、予備試験というのができる。これに合格すれば法科大学院を卒業したのと同じ資格を得ることができる。したがって、新司法試験の受験資格ができるという訳だ。現行司法試験の受験を目指して法科大学院に入らずに勉強していた人を対象にしているため、この制度の開始は2011年から。
 ただし、この予備試験には問題も多いため、さらに検討することになっている。

【法科大学院は何校できる?教員はどういう人がなるの?】
 今の予定では約100校弱はできそう。ただし、3年制だけではだめとか、通信教育が認められるかどうか?など未定の部分も多い。教員には裁判官などの実務家も含めることが予定されており、米国のロースクールを模した実務的な厳しい授業内容になる予定。
 法科大学院設置を求める大学は多いのだが、実際に高い授業レベルを保とうとすると、教員のレベルを高く維持する必要がある。すでに水面下では法学部教授の引き抜き合戦が始まっているという。このままでは、名の通った一部の有名大学が設置した法科大学院に学生が殺到する可能性もある。

【こんなところにも族議員の影が】

 こういった法科大学院設立における財政支援をめぐって法務族と文教族の争いが先鋭化しているのだという。法務族は、これまでの文部科学省が行ってきた大学の法学部教育は失敗だったとの思いが強い。「奨学金などの財政支援は、学生個人に対して行うべきだ」と主張している。これに対して文部科学省は、「財政支援は大学に対して行うべき」との立場を崩していない。文教族にとっては、ここで引いてしまうと、他の職業教育についても他の口出しを許すことになるため、絶対に引けない一線なのだというのだが…

【法科大学院はばら色か?】
 2004年に法学部を卒業して、法科大学院に入れる学生は最短2年で弁護士資格をかなりの確率で獲得できる。非常に羨ましい制度だが、本当にそんなにうまくいくのだろうか?
 これには私の友人の弁護士の話を引用しておこう。彼によると、政府審議会が引き合いに出す米国の司法制度では、税理士や司法書士の業務も全て弁護士が行っているため、あんなに弁護士の数が多いのだという。日本で同じ位の弁護士を作ってしまったら、税理士や司法書士の業務領域を侵食するため、新たな摩擦を生むだろうという。
 また、新司法試験における合格率にも疑問があるという。8割も合格させないのではないかというのだ。仮に5割だとしたら2年で合格できる可能性は五分五分になってしまう。
 鳴り物入りで登場した法科大学院構想は、実現までにはまだまだ紆余曲折がありそうだ。