防犯/防犯小説

【連載第4回】男は、ついに少女の身元を探り出した! 出会い系サイト~男の執念(2ページ目)

[4/6]少女の姿を捜す男。タクシー内で得た情報によって刻一刻と少女に近づいていく。そして、いよいよ少女の身元が判明した! 妄執にもとづいた男の行動とは。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

情報、ゲッツ!

「はい、□○塾です」
「あ、□○塾さんね」
「はい、そうです」
「あのね、ウチの娘をそこに通わせたいのだけど」

本来なら孫になるはずだが、あえて娘と言ったところは自分の年齢に対する引け目なのか見栄なのか。

「あ、そうですか、それはどうもありがとうございます」
「でね、あのー、そちらに通っている中学3年生の娘さんでね、名前をなんといったかな。あのー、お姉さんが○○高校の2年生でね、まー、その人を知っている人から聞いたんだけど」
「ああ、N川M美さんですね。お姉さんが○○高校の2年生といえば」
「お姉さんは英語が得意だとか」
「ええ、お姉さんのK美さんは英語がよくできました。K美さんもうちの塾の卒業生ですよ」
「そうそう。K美さん、N川K美さんだった。その子がそちらの塾がとてもいいと言ってたようでね」
「あ、ありがとうございます。では、入塾案内書をお送りしましょうか?」
「いや、お宅の場所を知っていますから、今度取りに行きますよ」
「そうですか。それではお待ちしております」
「はい、どうも、お世話様でした」

電話を切ってからしばらく呆然としていた。
(こんなに簡単にわかるとは! N川K美!! K美ちゃんか! かわいい名前だなぁ。そうか。K美ちゃんに妹はM美ちゃん!) 信じられない思いで、メモ用紙に書いた少女の名前を見つめた。

(生徒の名前を簡単にもらしてしまう学習塾もどうかと思うが、それよりも自分の話術が勝っていたのだ。誰だってあの程度のことはしゃべってしまうだろう) 自分の手際の良さにほれぼれとしながら、市内地図を手にした。学習塾の場所はすぐわかった。その周辺の町名を確かめる。△△町の1~3丁目がぐるりと囲んでいる。(△△町か。その先だと徒歩じゃ無理だから、きっと△△町に住んでいるに違いない)いよいよ少女に接近してきた感じがして、胸が高鳴る。

役所のパソコンで…

男は役所の嘱託員である。所属する課は、住民の情報を管理する業務を受け持っている。当然、課員は職務上知り得た住民に関する情報はもらしてはならない「守秘義務」「個人情報の保護義務」がある。しかし、男が少女のことを知りたいという気持ちは、義務違反をしてはならないという意識をまったく無視した。

(情報を誰かにもらすとか、売るとかじゃない。知り合いの住所を確認したいだけだ)と、自分に言い訳をしていた。(ちょっと見るだけだ。誰だって、仕事中見ているんだから、同じことだろう。見たところで証拠が残るわけじゃなし)

ある夕方、他の職員が次々と帰宅する中、男は一人で職場に残っていた。「ちょっと書類の整理があってね」仕事を装って、ほかに誰もいなくなるのを待ってパソコンに向かった。住民台帳のリストを表示する。N川姓のリストをチェックする。世帯主とその世帯のすべての住民が一覧できるのだ。ディスプレーを慎重に見ていると、

「あった!」



最終ページで「ストーカー/心理と対策プチ講座Vol.3」もあわせてご覧下さい♪

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