ある殺人事件
2月25日。週明けの月曜日、朝9時10分過ぎに起きた銃声。人の命を救う場所である病院内の集中治療室で、突然起こった殺人事件。暴力団同士の抗争によるものと見られていますが、一般市民にも被害が及ばないとも限らない場所での銃撃事件でした。被害者の暴力団組長は前日の日曜日の夕方5時頃に豊島区内の路上で銃撃され重傷の治療のため、文京区千駄木の日本医科大学付属病院東館高度救命救急センターに搬送されていたものです。4発の銃弾を受けて治療を受けていたところ、さらにこの銃撃で2発を頭に受けて間もなく死亡しました。
マフィアの抗争を思わせるような出来事。「安全な場所はないのか」と思えてしまうような意外な場所での銃撃です。しかも、集中治療室の出入り口には警察官2名が警戒にあたっていました。
今回のケースでは、数時間前に場所を移されていたのに窓際のそのベッドの位置を知っていて、確実に窓から襲撃していますから、その場所を把握したのは数時間以内のことでしょう。病院スタッフしか知り得ないその位置をどうやって知り得たのかは、今後の捜査に任せるものですが、やり方はいくらでもありそうです。
病院には医師や看護婦を初めとするスタッフと、ケガや病気治療のための入院、通院する患者さんたちとその家族や見舞い客といった人たちがいます。つまり、それ以外の人には用事のない場所ともいえます。逆に言えば、病院内にいる人たちというのはなんらかの関係者であると思いこんでしまうものです。
映画やドラマでも病院内に侵入しようとして、白衣を着たり、花束を持って見舞客を装ったり、パジャマを着たり、中には松葉杖をついて患者のふりをするような場面を見ることがあります。病院内にいても不思議ではない人物を装うわけです。人はまずは見た目で判断するものですから、誰も疑うことはありません。ましてや「病院内」で、殺人事件が起こるなどとは想像もしないものでしょう。
また集中治療室は建物の1階で正面からは見えない建物の裏側にあり、塀の向こうは住宅地が迫っています。廊下側には警戒の警察官を配置していても、1階でありながら窓側には警戒がなかった、また窓の外の裏庭には警備がなかったという点は、被害者がたとえばVIPのような日ごろから個人警護を必要とする人物であるかないか、にもよったのでしょうが、すでに襲撃されており、生命を狙われていたことが明らかなわけですから、生きている以上はまた狙われることは想定できたのではないでしょうか。
被害者は前日の襲撃で落とさなかった命を再度の襲撃で落とした…たまたま場所が病院内であった、ということかもしれません。無事に退院したとしてもまた狙われたであろうことは想像に難くありません。もちろん、それがやむを得ないということではなく、一般市民には理解の出来ない世界であるということです。