「髪は女性の命」……ヘアケアについて考えよう!
いつの時代も「髪は女性の命」
<目次>
櫛(くし)でとかしてヘアケアした、平安時代
平安時代の女性は、黒髪を長く垂らしていました(『新源氏物語 (中) 』田辺聖子著・新潮社/文庫本) |
このころのヘアケアは、どんな感じだったのでしょうか。600年~700年ごろは、五味子(さねかづら)という植物の、つるや葉から出るねばねばの汁を髪につけ、整えたり、つやを出したりした、とされています。黒くてツヤのある髪は、昔も今も憧れなんですね。
平安時代になると、ヘアケアには、?(ゆする)と呼ばれていた米のとぎ汁が使われるようになりました。それを入れて髪を洗うための?杯(ゆするつき)という入れ物もあったようです。ただし、このころの洗髪は、1年に1回程度だったとか(いろいろな説がありますが)。とぎ汁は、シャンプーというより、櫛をとかす際に使うヘアスプレーのような感じで使われたようです。平安時代の女性が好んでお香を焚いたのは、髪のにおいを隠すためだったのかもしれません。
髪を結いはじめた、江戸時代
日本髪の種類は100以上もあったとされます。表紙の髪型は「春信風島田髷」(『日本の髪型―伝統の美 櫛まつり作品集』京都美容文化クラブ編/単行本) |
日本髪の種類は100以上もあり、世相を反映する結い方が流行りました。主に、遊女から一般女性に広まっていきました。寛永(1624~1643年)ごろに流行したのは兵庫髷(ひょうごまげ)。頭に輪をひとつ作って結んだヘアスタイルです。元禄(1688~1703年)ごろになると、元禄島田髷(げんろくしまだまげ)が町娘の間で急速に広まり、兵庫髷は流行遅れとされました。
また、大衆文化によって広まったヘアスタイルもあります。明和(1764~1771年)ごろに広まったのは浮世絵に描かれた春信風島田髷(はるのぶふうしまだまげ)。江戸後期~明治(1860年代)にかけて広まったのは、芝居の「お染久松」でお染が結っていたおそめ髷。現在でいうモデルやアイドルのヘアスタイルを真似る、といったところでしょうか。
さて、江戸時代のヘアケアですが、髪を結っていたこともあり、洗髪は月に1回程度だったようです。髪を結うために、加羅油や五味子が使われました。宝暦(1751~1763年)ごろになると、櫛を逆さにして巻き込んだ櫛巻という、簡易的で経済的なヘアスタイルが主流となりました。庶民の間で、洗髪の回数が増えたせいかもしれません。シャンプーとして使われていたのは、ふのり、うどん粉、粘土、卵の白身、椿油の搾りかすなどでした。
日本髪が根強く残った、明治時代
明治時代の働く女性の象徴・樋口一葉も銀杏返しに結っていました(『現代語訳・樋口一葉 たけくらべ』松浦理英子 (翻訳)・河出書房新社/文庫本) |
断髪が進んだ、大正時代
大正時代のイラストレーター中原淳一が描いた「モガ」(『ひまわりみだしなみ手帖―中原淳一エッセイ画集〈2〉』中原淳一著・平凡社/単行本) |
ヘアケアについてですが、明治~大正は、ようやく石鹸が普及し始めた時代。身体と一緒に、髪も石鹸で洗っていました。
多様なヘアスタイルが登場した、昭和時代
ヘアスタイルが多様になったのは、戦後になってからのこと。アメリカ文化に近づこうと、茶髪やパーマヘアにする女性が増えていきました。シャンプーが普及しはじめたのは、昭和30年代(1955~1965年)から。シャンプーが粉末から液体へと進化したのもこのころです。1960年代に入ると、ロンドンでヴィダルサスーンが登場。ハサミで髪をカットするという新しい技術を広め、「ヴィダルサスーンカット」と呼ばれるボブスタイルが、世界的に流行しました。その技術は日本にも入ってきて、髪をカットする道具がカミソリからハサミへと移行していったのです。
聖子ちゃんヘアは専属スタイリストによって作られた流行だった!(『夏の扉 (CCCD)』ソニーミュージックエンタテインメント/CD) |
バブル期の象徴!? ワンレン&ボディコン(『お嬢だん (2)』中尊寺ゆつこ著・双葉社/文庫本) |
自分の存在をアピールする、「マイヘアスタイル」時代へ
現代は、自分の個性や存在をアピールする「マイヘアスタイル」時代 |
ヘアスタイルと同様、ヘアケア製品も多種多様になっています。髪質やダメージの度合いなどによって細かく製品が分かれており、「自分に合うものを」探し求める女性が増えています。
「櫛で髪をとかす」日本の……日本のヘアケア文化を見直そう
今回、ヘアスタイル、ヘアケアの歴史をひもといてみて、改めて思うことがあります。それは、櫛で髪をとかすことが大切だということです。平安時代の女性は、髪を櫛でとかすのが毎日の日課でした。それに比べて現代女性は、ブラッシングの時間がとても短いのではないかと思います。ブラッシングは頭皮を刺激し、血行を良くし、皮脂を出す効果があります。自分の皮脂を髪に伸ばすことは、一番自分の髪に合うヘアケア剤なのではないかな、と思うのです。櫛でもヘアブラシでも結構です。1日1回ゆっくりとブラッシングして、リラックスする時間を作ってみてはいかがでしょうか。
・参考文献:『化粧文化 第39号』ポーラ文化研究所(1999年)
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