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いつの時代も「髪は女性の命」だった!? ヘアケア文化を見直そう

いつの時代も「髪は女性の命」だった……!? ヘアスタイルは、その時代を象徴するもの。とりわけ女性と社会、ヘアスタイルの関係は、切っても切れないものではないでしょうか。日本女性のヘアスタイルの歴史をひも解きながら、ヘアケアについて考えてみます。

執筆者:All About 編集部

「髪は女性の命」……ヘアケアについて考えよう!

いつの時代も「髪は女性の命」

いつの時代も「髪は女性の命」

ヘアスタイルは、その時代を象徴するもの。とりわけ女性と社会、ヘアスタイルの関係は、切っても切れないものではないでしょうか。今回は、日本女性のヘアスタイルの歴史をひも解きながら、ヘアケアについて考えてみたいと思います。
 
<目次>
 

櫛(くし)でとかしてヘアケアした、平安時代

新源氏物語 (中)
平安時代の女性は、黒髪を長く垂らしていました(『新源氏物語 (中) 』田辺聖子著・新潮社/文庫本
「髪を結う」という行為が一般的になったのは、実は江戸時代のはじめのこと。平安時代までは、大垂髪(おすべらかし=髪を長くたらしたロングヘア)が主流でした。百人一首に描かれている女性のように、髪の長い女性が「美人」としてもてはやされました。江戸時代のはじめごろまでは、びんの前方を切りそろえたり、ひとつに束ねたり、というくらいで、劇的なヘアスタイルの変化はありませんでした。

このころのヘアケアは、どんな感じだったのでしょうか。600年~700年ごろは、五味子(さねかづら)という植物の、つるや葉から出るねばねばの汁を髪につけ、整えたり、つやを出したりした、とされています。黒くてツヤのある髪は、昔も今も憧れなんですね。

平安時代になると、ヘアケアには、?(ゆする)と呼ばれていた米のとぎ汁が使われるようになりました。それを入れて髪を洗うための?杯(ゆするつき)という入れ物もあったようです。ただし、このころの洗髪は、1年に1回程度だったとか(いろいろな説がありますが)。とぎ汁は、シャンプーというより、櫛をとかす際に使うヘアスプレーのような感じで使われたようです。平安時代の女性が好んでお香を焚いたのは、髪のにおいを隠すためだったのかもしれません。
 

髪を結いはじめた、江戸時代

日本の髪型―伝統の美 櫛まつり作品集
日本髪の種類は100以上もあったとされます。表紙の髪型は「春信風島田髷」(『日本の髪型―伝統の美 櫛まつり作品集』京都美容文化クラブ編/単行本
女性のヘアスタイルを大きく変えるきっかけとなったのは、江戸時代初期に活躍した出雲の阿国(いずものおくに)だといわれています。出雲の阿国は、歌舞伎の前進となったとされる「お国歌舞伎」を舞った女性で、男性の役づくりのため、髷(まげ)を結いました。その阿国の若衆髷(わかしゅまげ)は「かっこいい」と評判になり、遊女たちの間で髪を結うのが流行ったとされています。この若衆髷から、後に、日本髪を代表する島田髷(しまだまげ)が生まれました。

日本髪の種類は100以上もあり、世相を反映する結い方が流行りました。主に、遊女から一般女性に広まっていきました。寛永(1624~1643年)ごろに流行したのは兵庫髷(ひょうごまげ)。頭に輪をひとつ作って結んだヘアスタイルです。元禄(1688~1703年)ごろになると、元禄島田髷(げんろくしまだまげ)が町娘の間で急速に広まり、兵庫髷は流行遅れとされました。

また、大衆文化によって広まったヘアスタイルもあります。明和(1764~1771年)ごろに広まったのは浮世絵に描かれた春信風島田髷(はるのぶふうしまだまげ)。江戸後期~明治(1860年代)にかけて広まったのは、芝居の「お染久松」でお染が結っていたおそめ髷。現在でいうモデルやアイドルのヘアスタイルを真似る、といったところでしょうか。

さて、江戸時代のヘアケアですが、髪を結っていたこともあり、洗髪は月に1回程度だったようです。髪を結うために、加羅油や五味子が使われました。宝暦(1751~1763年)ごろになると、櫛を逆さにして巻き込んだ櫛巻という、簡易的で経済的なヘアスタイルが主流となりました。庶民の間で、洗髪の回数が増えたせいかもしれません。シャンプーとして使われていたのは、ふのり、うどん粉、粘土、卵の白身、椿油の搾りかすなどでした。
 

日本髪が根強く残った、明治時代

現代語訳・樋口一葉 たけくらべ
明治時代の働く女性の象徴・樋口一葉も銀杏返しに結っていました(『現代語訳・樋口一葉 たけくらべ』松浦理英子 (翻訳)・河出書房新社/文庫本
明治時代に入ると、男性は断髪が強制的に行われて西洋化が進みましたが、女性はまだまだ日本髪が主流でした。働く女性の髪型として、銀杏返しに結う人が多かったようです。鹿鳴館以降、洋装に合う髪型が考えられましたが、日本髪をアレンジしたものに過ぎなかったようです。
 

断髪が進んだ、大正時代

ひまわりみだしなみ手帖―中原淳一エッセイ画集〈2〉
大正時代のイラストレーター中原淳一が描いた「モガ」(『ひまわりみだしなみ手帖―中原淳一エッセイ画集〈2〉』中原淳一著・平凡社/単行本
大正時代に入り、ようやく断髪してショートボブにする、モガ(モダンガール)が登場。時期を同じくして、日本にパーマネント(ヒートパーマ)の技術が入ってきて、髪を切り、パーマをかける女性が急増しました。「アメリカ人の真似をしている」などと非難を浴びることもあったようですが、このころから、日本髪から開放された女性たちは、社会的地位を向上させていった、とも言えるでしょう。

ヘアケアについてですが、明治~大正は、ようやく石鹸が普及し始めた時代。身体と一緒に、髪も石鹸で洗っていました。
 

多様なヘアスタイルが登場した、昭和時代

ヘアスタイルが多様になったのは、戦後になってからのこと。アメリカ文化に近づこうと、茶髪やパーマヘアにする女性が増えていきました。シャンプーが普及しはじめたのは、昭和30年代(1955~1965年)から。シャンプーが粉末から液体へと進化したのもこのころです。

1960年代に入ると、ロンドンでヴィダルサスーンが登場。ハサミで髪をカットするという新しい技術を広め、「ヴィダルサスーンカット」と呼ばれるボブスタイルが、世界的に流行しました。その技術は日本にも入ってきて、髪をカットする道具がカミソリからハサミへと移行していったのです。
 
夏の扉 (CCCD)
聖子ちゃんヘアは専属スタイリストによって作られた流行だった!(『夏の扉 (CCCD)』ソニーミュージックエンタテインメント/CD
若い女性に広まったといえば、1981年に登場した松田聖子の聖子ちゃんヘア(=聖子ちゃんカット)が記憶に残っているのではないでしょうか。松田聖子は、初めて“専属”スタイリストがついたアイドルといわれています。聖子ちゃんヘアは、専属ヘアメイクアーティストによって考え出されたヘアスタイルだったのです。
 
お嬢だん (2)
バブル期の象徴!? ワンレン&ボディコン(『お嬢だん (2)』中尊寺ゆつこ著・双葉社/文庫本
1990年に入ると、ディスコブームが巻き起こり、街はソバージュやワンレングスの女性であふれました。1993年ごろには茶髪ブームがはじまり、1996年には安室奈美恵のファッションを真似た「アムラー」が増殖し、茶髪が一般化したといえるでしょう。「茶髪なんて……」とまゆをひそめられていたカラーリングですが、今や、ファッションのひとつとして確立しているのですから、時代の変化とはおもしろいですね。
 

自分の存在をアピールする、「マイヘアスタイル」時代へ

マイヘアスタイル
現代は、自分の個性や存在をアピールする「マイヘアスタイル」時代
1995年には、エクステンションがイギリスから入ってきて、ますます多種多様なヘアスタイルが実現できるようになりました。ヘアスタイルは変化を楽しむだけでなく、マイスタイルとして個性化が進み、自分の存在をアピールするものになっています。

ヘアスタイルと同様、ヘアケア製品も多種多様になっています。髪質やダメージの度合いなどによって細かく製品が分かれており、「自分に合うものを」探し求める女性が増えています。
 

「櫛で髪をとかす」日本の……日本のヘアケア文化を見直そう

今回、ヘアスタイル、ヘアケアの歴史をひもといてみて、改めて思うことがあります。それは、櫛で髪をとかすことが大切だということです。平安時代の女性は、髪を櫛でとかすのが毎日の日課でした。それに比べて現代女性は、ブラッシングの時間がとても短いのではないかと思います。

ブラッシングは頭皮を刺激し、血行を良くし、皮脂を出す効果があります。自分の皮脂を髪に伸ばすことは、一番自分の髪に合うヘアケア剤なのではないかな、と思うのです。櫛でもヘアブラシでも結構です。1日1回ゆっくりとブラッシングして、リラックスする時間を作ってみてはいかがでしょうか。

・参考文献:『化粧文化 第39号』ポーラ文化研究所(1999年)

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