デジカメ画像の中には魔物が棲んでいる?
10枚ほどの画像を送っていただいて見てみた結果、トラブルはすべて同じものだった。
手ぶれである。
ピンぼけはあくまでもピントのずれによって起きる。一方、手ぶれは被写体全体にズレが起きることだ。これがすべての写真で起きているのだ。ピンぼけと思われるものは、1枚も存在してはいなかった。
──といったわけで、その旨を告げた。
「いただいた写真ですけど、これピンぼけじゃなくて手ぶれですよ」
「ええ、そうなの? でもいままで写真を撮っててこんな風に手ぶれしたことなんて一度もなかったけどなぁ」
「ああ、それには原因があるんですよ」
「やっぱりデジタルカメラだからってことじゃないの?」
「うーん、そう言えなくもないんですけどね」
この方の撮影歴は普通のコンパクトカメラで年に数本~十数本のフィルムを消費するというようなもの。いわば、ごくごく一般的なサンデーカメラマンだ。
ここに落とし穴がある。実は、いままでの撮影でも手ぶれは起きているのだ。ただ、それに気がつかなかったにすぎない。
いままでのLサイズプリントでは見えなかったところまで、500万画素のデジタルカメラでは見えてしまっているのが原因である。
そう、すべての原因はサイズにあったのだ。
大きく見えることの良し悪し
通常のプリント(Lサイズプリント)は約12.6cmX8.8cm。
それに比べていまPCで使用される、もっともポピュラーなサイズと思われるXGA(1024X768ピクセル)15インチ液晶の表示部分は30.8cmX22.7cm。辺長でだいたい2.5倍、面積では6.5倍。
さらに500万画素デジタルカメラの画像は、2560ピクセルX1920ピクセルとなるので、XGAでは表示しきれない。画像そのもののサイズはさらに辺長が2.5倍、面積では6.5倍となる。
つまり、500万画素のデジタルカメラで撮った画像をPC上で表示させると、Lサイズプリントに比べて辺長で約6.25倍、面積比ではなんと約40倍にも拡大されて表示されているのだ。
これまで、手ぶれが目立っていなかったLサイズプリントであっても、大きな4つ切といったサイズに拡大してプリントすれば、手ぶれもピンぼけも見えるようになってくる。
そういった意味では、デジタルカメラは如実に写真の腕が分かってしまう残酷な機械であるということもいえる。
逆にいうと、多少の手ぶれはPCで縮小することによって目立たなくさせることができるというわけだ。
「というわけで、デジタルカメラ固有の現象というわけではないんですよ。いままでのカメラでも手ぶれはしていたんでしょうね。それがLサイズプリントでは見えなかっただけなんです」
──といった説明を行い、ようやく納得していただいた。
「でも、ちゃんと手ぶれをなくす撮り方……みたいのもあるんでしょ? それも教えてもらえない?」
もちろん、撮影方法によって手ぶれを抑えることは充分に可能である。
次回は、デジタルカメラにかぎらず、手ぶれをなくすための撮影方法を書いてみよう。
それは購入相談からはじまった記念写真が全滅!?デジカメ画像の中には魔物が棲んでいる?