日々の暮らしがどんどん忙しくなっています。気が付かないうちに私たちは、スピードと競争しています。一生懸命追いつこう、追い越されまいと暮らしているのです。そんな今だからこそ「食事くらいゆっくり食べよう。」なのです。
「食事くらいゆっくり食べましょうよ。」というスローフードの提案は、1986年、イタリア北部ピエモンテ州のブラという町で始まりました。きっかけは、ローマの休日でおなじみの観光名所、スペイン広場の一画に、米国系ファーストフードの1号店がオープンしたこと。トリノに住むカルロ・ペトリーニさんという男性が、NPO(非営利組織)の「スローフード協会」を設立しました。1989年にパリでも「スローフード宣言」が発表されてからは、世界中にこの運動が広がり、ドイツ、スペイン、アメリカ、フィンランド、ブラジル、それにクロアチア、スロベニア、ハンガリーなどの東欧諸国、日本など、世界の38か国、130以上の都市に約7万人の会員を抱える団体に発展しています。スローフード協会は、世界的な規模で拡大している食の均一化に警告をならす団体です。世界中どこでも同じ食物が売られている今の時代、ファーストフードが当たり前になった時代に、美味しい食卓をもう一度考え直そう、という提案を、この協会はしています。 そうは言うものの、共働きの友人は どんな環境にいても、一生懸命生きている人にとっては、毎日時間がたっぷりある、なんてことはありえないと思います。現代生活の中で、スローフードの考え方を日常習慣にするのは、現実には非常に難しいことだと思います。でも、「イベントのひとつとしてスローフードを考えてみる」ことなら、今すぐできるような気がしませんか? たまには時間をかけて丁寧に素材を選び、いつもは漠然と口に運んでいる素材や料理について考え、ゆっくりと料理をし、食事を共にする人との会話を楽しむ時間を大切にする。つまり、普段7時に起きている人に、「毎日朝5時に起きるようにしましょう」というような生活習慣の変更をせまっているのではなく、「家族でディズニーランドに行ったり、ドライブに行ったりするように、たまにはスローフードも楽しみましょう」というように、新たなイベントのひとつとして考えてみたらいかがでしょうか。 日本のスローフード協会は、1999年春に設立されました。日本の伝統的な食材や料理、日本酒、焼酎などを守り育てること、味の文化や、地域ごとの食事の多様性などの大切さを訴えていく活動を展開しています。京野菜に代表される地方の特色ある食材、郷土料理、地酒などを見直そうという動きは、全国各地に広がっていて、地元の良い食材を見つけ、住んでいる土地でとれた農産物を食べる「地産地消」という言葉は、スローフードと近い意味で使われています。 日本のスローフードを考える時、『一汁三菜とごはん』が分かりやすいと思います。スローフードは決して特別なことではないのです。主菜は魚介類中心に。副菜はなるべく地元でとれた季節の野菜、豆製品、乾物や海草で。煮る、焼く、和える、蒸す、という伝統的な調理法できちんと作り、ゆっくり味わう。一汁三菜とごはんで、日本のスローフードを試してみませんか? 乾物や根菜、雑穀をたっぷり食べる「一汁」と「ごはん」のレシピをご紹介しましょう。 ◆しみじみおいしい乾物の炊き込みごはん --------------------------------------------------
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