従来の延長では通用しない
国際線客室サービス
国際線就航20年。その道のりは決して平坦ではなかった。 |
「赤字の要因はいろいろです。国際線としての知名度不足もその一つ。また当初は、デイリー運航ができないような路線をどんどん拡大していました。毎日飛ばそうが週に数便だろうが、海外支店などには必要な人員をきちんと配置しなければなりません。便数が少ないぶん、1フライト当たり、あるいは1座席当たりの単位コストは高くついてしまう。そんなジレンマと格闘する毎日でした」
乗務員のサービススキルの向上も重要なテーマでした。国内線と国際線では、サービスの内容がまったく違います。東京/グアム線就航の前年には、社内に国際線CAの教官を育成するためのワーキンググループを結成。国際線客室サービスのノウハウとスキルを習得するため、教官候補の11名をキャセイパシフィック航空に派遣しました。
たとえば機内でワインをサービスする際、慣れないと栓を抜くときにコルクの屑をボトルの中に落としてしまう。そこでCAたちは大阪全日空ホテルの宴会場に交代で出向き、実戦訓練を重ねたそうです。それでも実際の乗務では、ウェルカムドリンク・サービスとして用意した高級シャンパンをドライアイスで一気に冷やし過ぎてボトルの半分を腐らせてしまったり、栓を大きな音を立てて飛ばしシャンパンを頭からかぶってしまったり……。
「初々しさに好感を持ったと言ってくださるお客さまもいたと聞きますが、それで満足しているわけにはいきません」と言って、藤村氏は苦笑します。「一人ひとりが熟練して、国際線にふさわしいサービスを提供できるようになるまでには、勉強の期間が必要だったようです」
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