本日、8月14日より19日まで、上野の松坂屋デパートにて、ハワイアンキルト展が開催されています。ハワイアンキルトは、最近若い人たちにも人気の手芸です。ふだんは手芸などに興味がなさそうなサーファーの女の子や、海やハワイが大好き!というアクティブな若者にも興味を持たれています。私もハワイアンキルトの本を、2年連続で出版したこともあり、興味深かったのでさっそく行って来ました。
お盆は東京には人が少なく、ましてや雨の中、それほど会場も混んではいないだろうと思っていたら、大間違いでした。初日ということもあり、すごい人の波で、みなさんキルトに魅入られたように熱心に鑑賞していました。確かに、これまでもハワイアンキルト展は何度も開催されましたが、本場ハワイの、しかも100年以上前のアンティークとなると、ハワイにでも行かない限り、なかなか見られません。その辺りのことも、ハワイアンキルトファンの皆さんはよくご存知なのでしょうね。
今回私がいちばん見たかったのが、「ピカケとチューブローズ ジャスミンの花」(1938年) ハンナ・ベーカーズ作。残念ながら写真は撮ってこれませんでしたが、このキルトは、以前に本でも見たことがあり、世界中のハワイアンキルトファンに愛されているキルトです。このキルトのパターンを真似たり、アレンジして、今までにもたくさんのキルターが作品を作ってきました。エメラルドグリーンの地色に、白いジャスミンの花がアップリケされた、とても美しいキルトです。実物を見るのは初めてですが、アップリケの細かさと、キルティングの量のバランスがとてもよく、感激しました。
ハワイアンキルトに限らず、アンティークキルトには、人々の生活や文化の歴史が刻まれています。なぜ、ハワイの先住民の人たちは、王制がなくなってからも、王族に捧げたキルトをたくさん作り続けたのでしょうか。ハワイにキルトをもたらしたのは、アメリカ人の宣教師の妻たちです。それまでハワイに住んでいたネイティブの人たちは、布の衣服を身に着ける習慣がありませんでした。
「アメリカ人に教えられたキルトの手法でもって、そのアメリカ人によって消えていった王朝に捧げる敬愛のキルトを作る」 これは皮肉なのでしょうか? それとも精一杯の抵抗だったのでしょうか? 私には分かりません。
ハワイというと、"常夏の楽園"、"サーファーのあこがれの地”、”陽気なハワイアンミュージック”etc・・・。そんな明るいイメージしか持ち得ません。しかし、その歴史の中には、秘められた悲劇や、時代の波に押し流されてしまった出来事が、たくさんあるのではないかと思うのです。そんなすべての人々の想いが、キルトに深く刻まれているような気がしてなりません。もっと歴史を学ばなければという気にさせられました。
残念ながら大阪店での展示はもう終わってしまいましたが、静岡店、名古屋本店はこれからです。お近くの方は、ぜひご覧になってみては?
魅惑のハワイアンキルト展 ~布に描かれた常夏の叙情詩~
■ 上野店2003年8月14日(木)~19日(火)
午前10時~午後7時30分
※最終日は午後5時にて閉場、ご入場は閉場の30分前まで。 本館6階大催事場
■ 静岡店2003年9月3日(水)~8日(月) 本館8階大催事場
■ 名古屋本店 2003年9月10日(水)~16日(火) 本館7階大催事場
詳しくは松坂屋イベント情報のサイトへ。
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