"飛行機をデザインする"。これをうらやましいと思わない男性はいないでしょう。そんな夢を実現させてしまったのが、今回登場するデザイナーの松井龍哉氏です。松井氏といえば、「Posy」や「PINO」といったロボットデザイナーとして、あまりにも有名ですが、今回は、ロボットの話から少し離れ、普段はあまり語られることのないプライベートタイムの過ごし方や、デザイナーとしてのあり方などについて伺いました。もちろん、2006年3月に就航を開始する「スターフライヤー」の新エアラインの制作裏話も語ってもらいました。
初恋の相手とは結ばれる運命にあるようです
松井龍哉(まつい たつや)フラワー・ロボティクス代表取締役。1969年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業。丹下健三・都市・建築設計研究所、科学技術振興事業団・ERATO北野共生システムプロジェクトを経て2001年より現職。、「Posy」「PINO」「P-noir」などの研究開発に注力。2002年より早稲田大学理工学部非常勤講師。 |
航空会社のデザインで、近ごろは話題がもちきりですね。お忙しいのでは?
松井:
なにぶん、エアラインのデザインは初めての仕事ですから(笑)。
ガイド:
たしか、今回は機体デザインだけではなく、会社案内、ウェブサイト、チケットセンターやラウンジのデザイン、スタッフの制服まで、トータルでデザインなさったのだとか。
松井:
そうですね。お客様がエアライン体験する部分は全て関わらせていただいてます。先程まで就航前の広告戦略で新聞広告やTVCMなどのデザインディレクションをしてました。
ガイド:
それは楽しいでしょうね。すべてが自分の手にゆだねられているというか。まして、男性にとって飛行機をデザインするというのは、まさに夢のようなことだと思いますが、松井さんにもやはり、そういった少年の頃の願望というか、そのあたりのお気持ちはありますか?
松井:
あると思います。僕は、初恋の相手と結ばれる運命を持ち合わせているようなんです。幼い頃や若い頃に思い描いていた物とうまく結ばれているというか。
たとえば、Bang & Olufsenのスピーカーに昔からあこがれていました。将来、会社を興したら絶対にあのスピーカーを置くんだと思っていましたので起業と同時に購入しました。そうしたら最近Bang & Olufsenより依頼があり日本における製品発表の空間デザインをさせていただきました。
飛行機のデザインもそうですが、自分が、こんなことをしてみたい、そんな風に思ったことはわりと実現してますね。
ガイド:
なんともうらやましいお話です。どうしたら、そんな夢が叶う人生が手に入るんでしょうか?
松井:
わかりませんが、考え方と気持ちの持ちようだとは思います。
「デザイナー」という仕事でみれば、考え方で仕事の仕方だってなんだって変わってきます。デザイナーといえば企業などからの下請けというような感覚を持っているかも知れません。つまり受け手という感覚です。ですがこの仕事は受け手ではなく姿勢として攻め手でないと希望するプロジェクトには出会えないと思います。クライアントあっての生業ですが、プロの仕事を依頼されているわけですから、言われた事をするだけではなく、あらゆる可能性を提案していく事だと思っています。
ガイド:
なるほど、発注を受けるという意味では受け手ですね。
松井:
ですが、デザイナーの視点で本質を突いたアイディアは沢山あるはずです、もっとこちらから、仕掛けたり提案していくべきだと思います。日本語では「デザイン」を「意匠」と訳してしまうのでわかりにくいのですが、デザインとはそもそも、プランニング(設計)のことだと思うんですね。たとえば、明日の予定を考えたり、自分の将来を考えるのもプランニング、すなわちデザインだと思うんです。
ガイド:
たしかに、デザインは身の周りにたくさんある。たとえば、仕事の段取りを決める、とかそういった小さなこともデザインと言えるわけですよね。
松井:
そうなんです。だから、デザイナーは、もっともっと自分たちの作りたいモノを、そもそもの「企画」から「製作」そして「管理」「利益の算出」といったところまですべてを考え、そして提案すべきではないかと思います。つまり、デザイナーひとりひとりが、トータルで考えられるメーカーの役割を果たさなければならない。
ガイド:
すると、自分の作りたいものを企画提案し、予算や利益まで含め提案することがイコール、かなえたい夢が手に入る、というわけですね。もちろん、そんなに簡単なものでもないと思いますが。
松井:
トータルで見ようとすればするほど、もちろん、パワーもかかりますし、責任も大きくなってきますからね。でもビジョンが明確なら最大限の努力をして実現あるのみです。
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