人間関係

「一緒に行ってもいい?」友達との飲み会に来たがる定年夫。妻に拒絶されハマった「迷惑な趣味」とは

定年退職を機に妻と過ごす時間が増え、いつしか妻にべったりになる夫は少なくない。妻はうっとうしいと感じながらも、夫婦の関係を壊したいわけではない。そんなとき、妻はどうすればいいのだろうか。※画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

人間関係 ガイド

どうして男女は愛し合い、憎み合うのか。日々、取材を重ねつつ男女関係について記事や本に書きつづっている。近年は家族・友人・職場などの人間関係全般や、お金が絡む人間関係のトラブルについても執筆。『くまモン力-人を惹きつける愛と魅力の秘密』など著書多数。

妻の送迎が趣味のようになってしまった夫(画像:PIXTA)
妻の送迎が趣味のようになってしまった夫(画像:PIXTA)

ひところ「濡れ落ち葉」という言葉が流行した。定年退職した夫が、妻にべったりつきまとうことを表現している。なんともさみしい言い方だが、今も「妻と行動をともにしたがる夫」は多いようだ。

行くところもすることもないから

「まさにうちの夫がそうですね。60歳で定年退職したときは、2、3カ月ぶらぶらしたらまた働くと言っていたんですよ。でも結局、1度休んでしまうともう働く気などなくなったんでしょう」

冷たい口調で、だが顔は少し笑いながら、トモカさん(64歳)はそう言った。現在、夫は62歳、トモカさんは今も仕事をしている。定年は65歳なのだが、それ以降も仕事を続けていくつもりだそうだ。
結婚して33年、2人の子どもたちは独立した。

「平日は、夫が家事をしてくれています。もともとが几帳面な人なので、私が掃除するより家の中はずっときれい。ただ、きちんと家事をしても昼間は時間が余ると言っています。行くところもすることもないとつぶやくこともある。図書館とか地域のサークルとかはどうなのと言うと、『図書館には時々行ってる。サークルは知らない人の間に入るのがちょっと』って。人見知りなところがあるんですよね。だったら一人で楽しめることをもっと見つければいいんですが」

夫が全面的に頼りにし、一緒にいたいのはトモカさんだけなのだ。それがトモカさんには少しうっとうしい。

妻の送り迎えをするように

「私は今も、平日夜はスポーツジムに行くことが多いし、同僚と飲み会もする。休日は学生時代の友人たちと会う機会が増えました。以前、夫が『一緒に行ってもいい?』と聞いてきたので、それだけはやめてと言い渡しました」

すると夫は「じゃあ、送り迎えだけでも」と言いだした。送り迎えしてくれるのは楽だからとうっかり頼んだら、それが当たり前になってしまった。

「酔ったときはいいんですけどね。散会の少し前に『迎えに来て』と電話すれば来てくれて、友人たちも送り届けてくれるから。でもこっちが楽しく飲んでいるのに『まだ終わらないの?』とメッセージを送ってこられるとムッとします」

夫はトモカさんが大好きなのだ。それが分かっているから、トモカさんはどんどんわがままになってしまうという。

ありがた迷惑になってきて

「友人たちにもありがたがられるからと、夫は私を迎えに来るのが当然、もはや趣味という感じになっています。先日は『どうせなら会社にも送迎しようか』って。それはやめてと断りました。彼が自分の存在理由を探しているように見えて、私はちょっと痛いなと思っているんです。だから子犬を飼うなんてどうかと聞いたのですが、生きものは世話が大変すぎると断られました。私は自由に生きたいんです。夫は別に私を監視しているわけではないけど、なんだか見張られているようで……。それに夫自身も、何か自分のためにやった方がいいと思うんですよね」

子どもたちの手が離れたのだから、もう自分のために生きた方がいいとトモカさんは考えている。だが夫は、「結婚したときから家族のために生きてきた、今さら自分のためには生きられないよ」と言った。

「優しい人なんですよね。現役時代から、どちらかといえば私は仕事が主で、夫は家族のためにあまり残業もしないタイプでした。当時はそれでいいと思っていたけど、今はもうちょっと自分のやりたいことをしたり、社会と関わったりしないと老けるのが早いよと脅しています」

一人旅がしたくて夫についたうそ

あるときトモカさんは1週間ほどの一人旅を計画した。だが一人だと言えば、夫がついてくるだろうと思い、友人と一緒だと夫に告げた。だったら送迎すると言われ、友人とは現地集合だからと伝えて、自分だけ空港まで送ってもらった。

「ちょっと心が痛みましたけど、私は一人がけっこう好きなんですよね。でもきっと夫には分かってもらえない。だから仕方がないなとうそをつきました。ちょっと自己嫌悪に陥ったけど、夫を傷つけないためにはそれしかなかった」

平日も、帰宅すると夫は「今日はどんなことがあったの」と尋ねてくる。それもまた、ありがたいようだがうっとうしい。そしてうっとうしいと思う自分が狭量だと感じてしまう。

「これって結局、夫とは合わないということなのかなと考えるようになっています。誰から見ても優しくていい夫なんだけど、私はときとしてイラッとする。夫が悪いのか私がいけないのか……」

夫がいなくなったら、きっと寂しいと感じるだろうとトモカさんは言う。それが彼女の今の夫に対する気持ちの判断基準だそうだ。いなくなってもいい、いない方がいいとなったら、おそらく離婚を考えるようになるのだろう。

「そんな日が来ないことを願いますけど」

トモカさんの表情がふっと曇った。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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