菊の花を見ると、なんとなく「仏花」を思い浮かべてしまう人は少なくありません。お墓参りや葬儀でよく使われるため、「縁起が悪い花なのでは」と感じることもあるでしょう。
けれど本来の菊は、9月9日の「重陽の節句」には長寿を願って愛でられ、皇室の紋章にも用いられるほど高貴な花です。吉祥の象徴であるはずの菊が、現代では仏花としての印象が強くなった背景には、文化の移り変わりがありました。この記事では、菊が「2つの顔」を持つ理由をひも解きながら、贈り物として選ぶときのコツも紹介します。
目次
菊が「縁起が悪い」と思われがちな理由

現代の暮らしでは、菊は仏壇や墓前に供える花として目にする機会が多く、「仏花=菊」というイメージが定着しています。白や黄色の菊が葬儀で並ぶ光景も一般的で、若い世代ほど「菊=お悔やみの花」という印象を強く持ちがちです。
しかし、これはあくまで近代以降の使われ方が前面に出た結果です。花言葉には「高貴」「真実」「長寿」など良い意味が並び、文化的には、むしろ吉祥の花(縁起の良い花)とされてきました。仏花としての役割が強く見えることで、本来のイメージが薄れてしまっているのです。
歴史の中での菊:本来は「長寿を願う花」

菊は古くから「不老長寿」を象徴する花として親しまれてきました。五節句の1つである「重陽の節句」は別名「菊の節句」と呼ばれ、平安時代の宮中では、菊の露と香りを移した真綿で肌を拭う「被せ綿(きせわた)」や菊酒・菊湯などで不老長寿を願う行事が行われていました。旧暦の9月は菊が満開になる時季で、秋の華やかな花として人々の暮らしを彩っていたのです。
また、皇室の紋章である「十六葉八重表菊(じゅうろくよう やえ おもてぎく)」に代表されるように、菊は格式と品位の象徴でもあります。つまり、菊はもともと「生命力」「気品」「長寿」を象徴する吉祥の花であり、仏花としてのイメージは長い歴史の中では比較的新しい側面だと言えます。
なぜ仏花になったのか:実用性と象徴性の両面から
では、なぜ菊が仏花として広く使われるようになったのでしょうか。その背景には、実用的な理由と象徴的な理由があります。
菊は花もちが良く、暑さにも比較的強いため、供花として長く美しさを保ちます。香りが強過ぎず、白・黄・紫など仏事に適した色がそろっていることも選ばれやすい理由です。
さらに「枯れにくい=故人を長く偲べる」という象徴性も加わり、菊は供花の定番として定着しました。こうした実用性が重なった結果、現代では「仏花」という印象が強く残るようになったのです。
本当に縁起が悪いのか:花言葉と文化から読み解く
菊の花言葉には「高貴」「真実」「あなたを愛します」「長寿」など、ポジティブな意味が多く含まれています。皇室の紋章である「十六葉八重表菊」は、格式と品位を象徴するものとして知られています。
つまり、「縁起が悪い」という印象は、近代の仏花としての使われ方が強く残っただけで、文化的な意味とは大きく異なります。菊は本来、高貴で祝い事や長寿を願う場面にもふさわしい吉祥の花なのです。
贈り物にするときのコツ:相手に誤解されないために

菊は、贈り物にもふさわしい花です。ただし、相手が仏花のイメージを持っている可能性も考慮し、選び方に少し工夫をすると安心です。
洋菊(マム)を選ぶ
ピンポンマムやスプレーマムなど、かわいらしい形の洋菊は仏花の印象が薄く、ギフトとして人気があります。
色選びに気を付ける
白や黄色一色は仏事のイメージが強いため、ピンク・オレンジ・グリーンなど華やかな色を選ぶと好印象です。
他の花と合わせる
菊のみだと仏花の印象が出やすいので、トルコキキョウやバラ、ヒペリカムのような実もの、ユーカリのようなグリーン、季節の花と合わせると一気にモダンで明るい雰囲気になります。
海外の「マム=母の日の花」というイメージを活用
オーストラリアでは、マムは「母の日」の定番フラワーです。感謝や尊敬を伝える花として贈ると、意味が自然に伝わります。
菊は「縁起が悪い花」ではなく「役割が広い花」
菊は「縁起が悪い花」ではなく、現代の暮らしの中で仏花としての役割が強く見えるだけにすぎません。本来は長寿や気品を象徴する吉祥の花であり、重陽の節句などの歴史を知ることで、菊が持つ本来の美しさと意味が分かります。
また、洋菊にも目を向けると、贈り物としての選択肢も広がり、季節の花としての魅力がより深く感じられるでしょう。現代の暮らしの中でも菊を楽しんでみてください。







