年金

年金を75歳まで繰り下げても得とは限らない…FPが解説する“早死にリスク”

年金を繰り下げれば受給額は増えますが、必ずしも得になるとは限りません。長生きできなかった場合の「早死にリスク」や加給年金への影響など、繰り下げ受給の注意点を解説します。

All About 編集部

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年金「繰り下げ受給」のデメリットとは?(画像出典:PIXTA)
年金「繰り下げ受給」のデメリットとは?(画像出典:PIXTA)

年金の繰り下げ受給には増額という大きなメリットがありますが、その一方で見落としがちなデメリットもあります。

ファイナンシャル・プランナーの服部貞昭さんは著書『知れば知るほど得する年金の本』(三笠書房)の中で、「早死にリスク」をはじめとする注意点を解説しています。

同書より一部抜粋・編集し、繰り下げ受給のデメリットを見ていきましょう。

目次

繰り下げ受給の前に知っておきたい6つの注意点

ここでは、繰り下げ受給のデメリットをあげます。

1. 早く亡くなると元をとれず損をする
2. 繰り下げ待機期間中の自己資金が必要
3. 84%増額でも、手取りは7~8割くらいしか増えない
4. 待機期間中は加給年金や振替加算を受け取れない
5. 待機期間中に亡くなると、受け取っていない年金の一部を遺族がもらえない
6. 遺族年金は増えない

長生きできなければ損になる可能性も

繰り下げ受給の一番大きなデメリットは、「早死にリスク」に弱いことです。

想定より早く亡くなると、年金を十分にもらうことができず損をします。

70歳まで繰り下げたら81歳11カ月まで生きないと損をします。

75歳まで繰り下げたら86歳11カ月まで生きないと損をします。

これは額面ベースで計算した場合であり、手取りベースで計算すると、さらに長生きしないと元がとれません。

繰り下げ期間中の生活資金をどう確保するか

年金を繰り下げると、待機期間中は年金をもらえませんので、その間、生活していくための自己資金が必要になります。

65歳以降も働ける時代とはいえ、体力が落ちてくると今までと同じ仕事をするのは厳しいかもしれません。

65歳以降も働いていて収入があるか、貯蓄が十分にあれば問題はありませんが、そうでない場合は、生活が苦しくなります。慎重に判断をしましょう。

84%増額でも手取りは思ったほど増えない

年金が増額されるのは嬉しいですが、残念なことに、税金と社会保険料も増えます。

日本の所得税は「累進課税」といって所得が多いほど税率が上がる仕組みですので、年金収入の増額分以上に所得税は増えます。

たとえば、本来の年金が月額16万円、年額192万円の場合、税金と社会保険料を差し引いた手取り額は約173万円です(75歳以上、新宿区在住のケース。2025年度時点)。

仮に、75歳まで繰り下げて84%増額されたら、年金は月額約29.4万円、年額は約353万円ですが、手取り額は約295万円です。手取り額で比較すると約70%しか増えていません。

手取りは思ったより増えないと考えたほうが無難です。

年金の手取り額を簡易的に計算できるツールを用意していますので、ご自由にご利用ください。

【年金手取り額計算シミュレーション】https://zeimo.jp/tools/69567

加給年金や振替加算を受け取れないケースも

「加給年金」とは、65歳未満の配偶者がいる場合に、通常の老齢厚生年金にプラスしてもらえる年金です。年額約42万円とそれなりに大きい金額です(2025年度時点)。

しかし、繰り下げ待機期間中は、加給年金をもらえません。そもそも、老齢厚生年金をもらっていないのですから、加給年金も当然もらえないのです。

加給年金の対策として、老齢基礎年金だけ繰り下げて、老齢厚生年金は65歳からもらう方法があります。これなら加給年金をもらえ、後で増額された老齢基礎年金ももらえます。ただし、加給年金の金額は増額されません。

次に、「振替加算」とは、配偶者が65歳になると加給年金がストップしますが、その代わり、配偶者の老齢基礎年金にプラスしてもらえる金額です。1966年(昭和41年)4月1日以前生まれの配偶者だけもらえます。金額は生年月日によって違いますが、1961年(昭和36年)4月2日以降生まれの人であれば、年額約1万6000円(2025年度時点)です。

配偶者が自分自身の年金の繰り下げ待機期間中は、振替加算をもらえません。老齢基礎年金をもらっていないからです。

振替加算の対策として、配偶者は老齢厚生年金だけ繰り下げて、老齢基礎年金は65歳からもらうという方法があります。そうすれば、振替加算をもらえます。ただし、振替加算は増額されません。一般的に振替加算の金額は少ないため、年金を繰り下げて増額したほうがお得になるケースが多いでしょう。

遺族が受け取れない年金が発生することもある

65歳以上の人が亡くなった場合、遺族は本人がまだ受け取っていなかった年金(未支給年金)をもらうことができます。ただ、繰り下げ待機期間中に亡くなると、一部をもらえないこともあります。

たとえば、繰り下げ待機中の夫が72歳で亡くなった場合、年金の時効は5年ですので、67歳からの5年分しかもらえません。また、未支給年金の金額は増額されません。

最悪なのは繰り下げ後、年金のもらい始めに亡くなることです。

繰り下げて増額された年金を受給し始めると、過去にさかのぼって年金をもらうことはできなくなります。そのタイミングで亡くなると、ほぼ年金をもらえないことになります。

繰り下げても遺族年金は増額されない

老齢厚生年金をもらっていた人が亡くなった場合、遺族は遺族厚生年金をもらうことができます。金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。

ただし、年金を繰り下げても、遺族厚生年金は増額されず、65歳から通常もらう金額をもとに計算します。

この書籍の著者:服部貞昭 プロフィール
ファイナンシャル・プランナー(CFP〈R〉)、新宿・はっとりFP事務所代表、エファタ株式会社取締役。1977年、長野県須坂市生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院修了後、KDDIに入社。EZwebシステム構築、法人向けモバイルSE業務等に従事し、2014年に独立。現在は、お金に困っている人の相談にのりながら、身近なお金に関する情報発信に携わる。

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