年金

「65歳からもらう」は本当に得? FPが明かす“年金受給開始年齢”の最適解

年金は65歳から受け取るのが当たり前と思われがちですが、繰り上げ受給や繰り下げ受給を選ぶことで受給額は大きく変わります。後悔しない受給開始年齢の選び方をFPが解説します。

All About 編集部

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「65歳からもらう」は本当に得?(画像出典:PIXTA)
「65歳からもらう」は本当に得?(画像出典:PIXTA)

「年金は65歳から受け取るもの」と考えている人は少なくありません。しかし実際には、受給開始時期を早める「繰り上げ受給」や、遅らせる「繰り下げ受給」を利用することで、受け取る金額を大きく変えることができます。

ファイナンシャル・プランナーの服部貞昭さんは著書『知れば知るほど得する年金の本』(三笠書房)の中で、受給開始年齢の選択は老後資金に大きな影響を与えると説明しています。

同書より一部抜粋・編集し、繰り上げ受給と繰り下げ受給のポイントを紹介します。

目次

年金を早くもらうメリットと知っておきたい注意点

国民年金だけしか加入していなかった人は老齢基礎年金だけをもらいますが、厚生年金に加入していたことがある人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類の年金をもらいます。

繰り上げ受給では、特別な場合を除き両方の年金を同時に繰り上げます。たとえば、ずっと年収500万円で40年間勤務した人が、60歳から繰り上げ受給する場合を想定してみましょう。

65歳からもらう本来の年金の月額は、老齢基礎年金が満額の約7万円(2026年度時点)、老齢厚生年金が約9万円で、合計約16万円です(以後、厚生年金については簡易的な計算を行ないます)。

60歳から繰り上げ受給をすると、年金は24%減額され、本来の金額の76%となります。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を繰り上げますので、年金の月額は、16万円×76%=12万1600円となります。4万円くらい減額されますが、その代わり、早くもらえます。

一度選ぶと変更できない「繰り上げ受給」の落とし穴

繰り上げ受給をしたい場合は、「繰上げ請求書」を年金事務所に提出します。自動的に案内は送られてきませんので、必ず自分から手続きをする必要があります。

繰り上げ受給の最も注意すべき点は、一度、選択してしまうと取り消しできないことです。

たとえば、60歳定年で退職したけれど生活が苦しいので、繰り上げ受給を開始したとします。その後、就職できたので、やはり65歳からもらうことにしたいといっても取り消すことはできません。年金の金額は減額され、それが一生続くことになります。

「長生きリスク」というように、想定より長生きすると、生活がきつくなります。安易な気持ちで繰り上げ受給をしてしまうと、後悔することになりかねません。

繰り上げ受給の手続きをする際には、年金事務所から注意事項に関する説明を必ず受けますので、よく検討してから判断しましょう。

繰り下げ受給には複数の選択肢がある

繰り下げ受給では、老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらか片方だけ、または、両方繰り下げる、とパターンを選ぶことができます。

繰り上げ受給では、両方一緒に繰り上げることしかできませんでしたが、繰り下げ受給では、いろいろな繰り下げのパターンがあります。

どの方法が良いかは、それぞれの状況によって異なります。

さきほどの例で、こんどは75歳まで、両方を繰り下げた場合を見てみましょう。

65歳からもらう本来の年金の月額は、両方合計で約16万円です。75歳で繰り下げ受給をすると、年金は84%増額されます。年金の月額は、16万円×184%=29万4400円となります。13万円以上も増額されました。

繰り下げ受給は申請しなくても始められる

繰り下げ受給をしたい場合は、特に何もする必要はありません。

65歳近くになると、年金の手続き案内が送付されてきますが、申請しなければいいだけです。すると、自動的に繰り下げている状態になります。その間は、まだ年金をもらっていませんので、「繰り下げ待機中」または「繰り下げ待機期間」と呼ばれます。

年金をもらいたいと考えたタイミングで「繰下げ請求書」を年金事務所に提出すれば、そのときから年金をもらうことができます。

繰り下げをしたけど、やっぱりやめたいという場合、65歳までさかのぼって繰り下げを取り消すことができます。つまり、65歳から年金をもらい始めたことにできます。

たとえば、67歳ちょうどで繰り下げをやめて年金をもらい始めた場合、65歳から67歳までの待機期間2年分の年金の全額を一括で受け取ることになります。年金の金額は増額されず通常どおりです。

65歳までさかのぼって年金を受け取りますので、2年分の加給年金も合わせて受け取れます。

ただし、過去の所得が増えますので、過去の年度の修正申告が必要になります。また、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料等にも影響が生じる可能性があります。

繰り下げ受給を途中でやめることも可能

年金の時効は5年ですので、70歳以降になった場合は、最長5年までしかさかのぼることはできません。

もし72歳になって繰り下げをやめてさかのぼる場合は、67歳からの5年分になります。ただし、その5年分は、67歳からもらい始めたと仮定して16.8%増額された金額をもらうことができます。そして、以降も増額された年金をもらえます。

これは、2023年4月からできた制度で、「特例的な繰下げみなし増額制度」といいます。以前は、さかのぼってもらうと増額されなかったのですが、改正により増額されるようになりました。

75歳まで待つと生まれる“早死にリスク”

繰り下げ受給の最も注意すべき点は、想定より早く亡くなってしまうと、年金を十分にもらえなくなる可能性があることです。「早死にリスク」と呼ばれたりします。

最長75歳まで繰り下げると、繰り下げなかった場合と比較して、年金の累計受給額(今までにもらった年金の総額)が逆転するのは、86歳11カ月からです。男性の平均寿命は81.09歳、女性の平均寿命は87.13歳(2024年度時点)ですから、男性は不利になる可能性が高いです。

繰り下げ受給で年金が増額されるのは嬉しいですが、繰り下げすぎると、年金を十分にもらえないリスクもありますので、慎重に検討したほうがいいでしょう。

この書籍の著者:服部貞昭 プロフィール
ファイナンシャル・プランナー(CFP〈R〉)、新宿・はっとりFP事務所代表、エファタ株式会社取締役。1977年、長野県須坂市生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院修了後、KDDIに入社。EZwebシステム構築、法人向けモバイルSE業務等に従事し、2014年に独立。現在は、お金に困っている人の相談にのりながら、身近なお金に関する情報発信に携わる。

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