
日本人は終業時刻が来ても残業を続け、休みの日でも仕事のことを考えてしまいがち。それこそが正しい働き方であると信じ込んでいませんか?
松居温子さんの著書『日本の3倍休んで1.5倍の成果を出す ドイツ人のすごい休日』ではドイツ人の休み方について詳しく解説しています。
2023年以降、GDP(国内総生産)で日本を上回っているドイツですが、いったいどのような休日を過ごし、生産性を高めているのでしょうか。本書から一部を抜粋し、その極意をご紹介します。
仕事が忙しくともしっかり休むドイツ人
エンジニアとして働いているドイツ人の友人は、夏になると1カ月くらいを休暇に充て、アルプス登山をします。その期間、彼は一切の仕事から離れ、登山に集中します。プロジェクトがどんなに停滞していても、放置してそのまま休暇に入るのだそうです。
そして毎日、アルプスの自然のなかで自分が楽しいと思うことをやり尽くし、完璧にリフレッシュした頭で休暇明けを迎えます。
彼と話したとき、復帰したらまったく発想できなかった新しいアイデアが生まれ、休暇に入る前には停滞していたプロジェクトが劇的に前進した、と話してくれました。
また、ホテル業界で働く人事の方と話す機会がよくあります。その方によるとどれだけ忙しい日でもそのホテルでは残業を極力なくすための工夫を徹底しているとのことです。シーズンによっては業務が重なったり、宴会対応で深夜までお客様がいらっしゃることもあります。
そんな日はどうしても残業が発生しますが、それでもマネージャーは「今日はここまで終わればOKだから」と、はっきり仕事の切りどころを指示します。そして、できるだけ全員が定時に上がれるように調整し、もし残業した場合には、翌日などに早上がりするよう指示を出すのが一般的です。
忙しい日に大切なのは、時間内にすべてを完璧に終わらせることではありません。完成度は多少低くても、業務を効率よく合理的に進める。そのために職場全体が協力し合い、負担を最小限に抑えるのです。だからこそ、疲れやストレスが溜まりにくく、毎日楽しく働けるといいます。
「休むことは義務」という考え方
実際にドイツで「Hotelfachfrau/mann(ホテル専門職)」を目指して研修を受けている留学生によれば、満室ですべてを清掃しなければならない日には、壁紙のあまり目立たない汚れなど細かい箇所まで手を入れません。まずは、お客様が快適に過ごすために優先すべき箇所を清掃し、細かい部分は空き部屋数に余裕のある日に回すそうです。
(中略)
ドイツでは、長時間働くことは、かえって評価につながりません。休むことは義務であり、人生において必要不可欠な時間だと考えます。
休まないと逆に上司から「休みなさい」と家に帰されますし、残業ばかりしている人は「自己管理ができない人」と見なされたり、休暇中に対応をしていると上司から「〇〇さんに引き継いできちんと休みなさい」と言われます。長時間働き、休日も対応できる人が評価される日本とは真逆の価値観で、彼らはできるだけ短く働き、しっかり休むことを大切にしているのです。
彼らの仕事ぶりは非常に合理的です。与えられた仕事は自分の責任においてしっかりと果たしますが、それ以上のことはきっぱりと線を引きます。ここは大事だ、というところは慎重にこなしますが、なんでも完璧にしすぎず、余裕をもたせる工夫をしているところも特徴です。
休息がより良い成果を生む
また、疲れたまま働き続けるよりも、いったん休んで回復してから再開したほうがより良い成果が出せると考えます。そのため、ダラダラと仕事をしたり、会社に居残ったりすることもありません。予定していた仕事が終わらなくても、切り替えて翌日に持ち越しますし、休日にメールを返信したりオンライン会議に参加したりする人も、まずいません。上司から自分の責任範囲外の仕事を任されそうになったら、あっさりと断ります。
当時銀行員だった父も、ドイツ駐在中によく同じ経験をしたそうです。ドイツ人の部下が17時ぴったりに退社する姿を見て「あっ、仕事を頼み損ねた」と思う時が度々あったそうです。17時直前に仕事を頼んでも「明日対応します」とあっさり退社していく。その姿を見て「ここはドイツだった」と思ったことも一度や二度ではありません。これは40年前の出来事ですが、この働き方は今も変わっていません。
彼らは、休息すること自体がより良い成果のために欠かせないと考えています。だからこそ、休みも将来の成果を見据えて意識的に取っているのです。
周囲の目を気にしすぎる日本人
日本人の場合、周囲が忙しそうに働いているなか、自分だけ早く帰るのはなかなか勇気がいります。有給を取るにも周りの様子や状況を優先しますし、自分の権利なのに「取りづらい」と感じてしまうことも多いでしょう。
そして、いつの間にか当然のように、他人からの評価のために仕事をし、休むときでさえ、今度は家族の要望に応えるために休んでいます。しかし、ドイツ人たちが大切にしているのは、自分の責任の範囲や果たすべき役割、それが会社や組織の目的に貢献できるかどうかです。
彼らは組織のゴールや目的を明確にし、そこを目指して仕事をこなします。そのため、ゴールまでの最短コースを考えます。だから意味のない会議はしません。また、何か課題がある場合には相談するべき人と話をしたり、行動を変えてほしい相手とはきちんと直接話したりするようにしています。直接関係のない同僚とダラダラと愚痴を言い合ったりすることはあまりしません。
無駄をできるだけ省いて効率を高め、きちんと自分の時間を確保します。だからこそ、仕事と同様に休むことを大切にします。そして自分のために使う休日を過ごすのです。
松居 温子(まつい・あつこ)
株式会社ダヴィンチインターナショナル代表取締役。ドイツ歴40年。父の転勤により8歳から13歳までドイツで暮らし、現地校に通う。ドイツ語を習得し、文化や生活に深く触れた少年期を過ごす。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、日本銀行に勤務。その後、ドイツのマイスター制度に解決策を見出し、高野哲雄とともにドイツ専門留学会社、株式会社ダヴィンチインターナショナルを設立後、ドイツに現地法人A&T GLobal GmbHを設立し現在に至る。






