定年・退職のお金

50代に多い「低年金」妻の問題点……夫と死別した専業主婦・パート妻が直面する年金激減のリアル

夫に先立たれた際、妻の年金収入は大きく減少します。将来の「おひとりさま」生活に備え、受給額を一生涯増やせる「老齢基礎年金」の繰下げ受給が有効な理由と、具体的な試算結果を解説します。 ※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

夫との死別後の年金激減に備えるための繰下げ受給の仕組み ※サムネイル画像:PIXTA

夫との死別後に訪れる「年金激減」のリアルな数字は? ※画像:PIXTA

夫が亡くなると、世帯の年金は驚くほど減ってしまいます。そんな「もしも」の時に自分を守るためには、あらかじめ年金の受け取り方を知っておくことが大切です。

これだけ差がつく!老後のお金 55歳から15年で2500万円をつくる』(首藤由之著)は、年金など人生後半期のお金事情に詳しいファイナンシャル・プランナーの著者が将来のマネープランについて分かりやすく解説しています。

本書から一部抜粋し、意外と知らない「遺族厚生年金」の仕組みと、自分の年金を効率的に増やすための「基礎年金の繰下げ」という選択肢について紹介します。
<目次>

夫亡き後に年金が激減する現実

「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」は、同時に繰り下げることも、それぞれ単独で繰り下げることもできます。それも相対的に金額が多くなる老齢基礎年金を繰り下げることが有力手段になります。

なぜそうなるのか、おわかりになりますでしょうか? 夫が亡くなった場合、65歳以上の専業主婦やパート妻のもらえる年金は、「自分の年金」と「夫の遺族厚生年金」になります。

「夫の遺族厚生年金」は、夫が生前もらっていた老齢厚生年金(正確には、そのうちの報酬比例部分)の4分の3です。

老齢厚生年金120万円の「会社員A」なら遺族厚生年金は「90万円」(120万円×3/4)に、老齢厚生年金180万円の「会社員B」なら「135万円」(180万円×3/4)となりそうですが、そうではありません。

この場合、妻に自分の老齢厚生年金があるため、それを優先的に受給し、夫の遺族厚生年金は4分の3にあたる金額から妻の老齢厚生年金分を引いた金額になるからです。

専業主婦の妻なら自分の老齢厚生年金が「10万円」あるので、夫が「会社員A」なら遺族厚生年金は「80万円」(90万円-10万円)ですし、夫が「会社員B」なら「125万円」(135万円-10万円)となります。

となると、夫が亡くなったあとに実際に受け取れる年金額は次のようになります。

夫が「会社員A」なら
  • 専業主婦→自分の老齢基礎年金80万円+自分の老齢厚生年金10万円+夫の遺族厚生年金80万円=170万円
  • パート妻→自分の老齢基礎年金80万円+自分の老齢厚生年金20万~30万円+夫の遺族厚生年金70万~60万円=170万円
夫が「会社員B」なら
  • 専業主婦→80万円+10万円+125万円=215万円
  • パート妻→80万円+20万~30万円+115万~105万円=215万円

遺族年金と自身の年金の調整

もともと、夫が健在な時の2人の年金収入と比べてみましょう。

夫が「会社員A」の場合のもともとの年金額
  • 専業主婦世帯→290万円(夫200万円+妻90万円)
  • 妻パート世帯→300万~310万円
夫が「会社員B」の場合のもともとの年金額
  • 専業主婦世帯→350万円(夫260万円+妻90万円)
  • 妻パート世帯→360万~370万円
いずれの場合も大幅な減収です。生活費は夫婦2人で暮らしていた時より少なくなりますが、ちょうど半分というわけにはいきません。

1人になると「2人の時の7がけ」と言われますが、どの場合もその「7がけ」の基準を下回る減収になっています。

基礎年金の繰下げで不足を補う

しかし、ここまでの試算は妻が「繰下げ」しない場合の数字です。妻が自分の「老齢基礎年金」を「繰下げ」すると、繰下げ待機の期間にもよりますが、「2人の時の7がけ」の水準にどんどん近づいていきます。

「おひとりさま」になった場合の年金事情が前述のようになるからこそ、専業主婦やパート妻は自分の老齢基礎年金を繰り下げたほうが安心なのです。

【図で確認】低年金女性の問題点

ちなみに、「共働き世帯」の妻になると、自分の老齢厚生年金の金額が夫の遺族厚生年金を上回ってしまうため、遺族厚生年金は全額が支給停止になってしまいます。

したがって、フルタイムの共働き妻は、「自分の年金+貯蓄」で残りのリタイアメントライフをやりくりすることになります。
  文/首藤 由之(しゅとう・よしゆき)
特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP)。1959年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、朝日新聞社入社。2024年の定年まで、週刊誌『AERA』や『週刊朝日』などで主に経済分野を取材執筆、朝日新書編集長、書籍編集部長などを歴任後、編集委員を務めた。現在は、ファイナンシャルプランナーとしての活動をしつつ、リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の取材、記事執筆を行っている。著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー習慣』(CEメディアハウス)。
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