防犯/子どもを犯罪から守る

「架空請求」未成年者の被害は親に責任

携帯電話使用による「架空請求」事件が再び増加傾向にあります。今回、12歳の子が15万円を振り込んでしまったという被害が発生しました。安全のために持たせたはずの携帯電話が危険を招いたことの責任は誰に?

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

脅された12歳

安全のための携帯電話のはずが

安全のための携帯電話のはずが

去る8月20日、S県の私立中学1年の男子生徒(12歳)が、「架空請求詐欺で15万円を振り込んだ」と、I署に届け出がありました。調べによると、17日午前11時ごろ、男子生徒の携帯電話に「サイトの料金滞納がある」などという内容のメールがありました。

指定された電話番号に男子生徒が電話すると、男から「振り込まないと家まで行くぞ」などと脅され、男子生徒は自宅から持ち出した15万円を無人ATMから2度に渡って振り込み送金してしまいました。男子生徒は20日に両親に相談して警察署に被害を届け出ました。
 

「架空請求」再増加? 

「架空請求」は携帯電話の普及により、2001年末ごろから急増した詐欺事件です。一時、被害件数は減少していましたが、ここにきてまた増加傾向にあります。当時、逮捕されたグループやメンバーが刑期を終えて出所してきたことにより、また同様の犯罪に手を染めているからだともいわれます。

つまり、新しく携帯電話を手にした「架空請求」をあまりよく知らない世代が、まんまと当初の被害に逢った人たちと同じように「架空請求」の被害にまた、遭うようになってきているといえるでしょう。

しかし、よく考えてみると、ローティーンの子どもたちは親から携帯電話を与えられているはずです。まれには自分のお金で手にするような子もいないとはいえないでしょうが、多くは家族割引などの制度を利用して、「子どもの安全のために」という名目で、子どもに買い与えているはずです。であるならば、当然、携帯電話にまつわるリスクについても教えていなければなりません。

携帯電話のリスクを知らない・知らせない親は×

携帯電話のリスクを親子で知らなければ

携帯電話のリスクを親子で知らなければ

携帯電話はあくまでも便利な道具=ツールなのです。子どもに道具を与えるときに、その危険性を知らせずにもたせることは危険の発生を子ども任せにするということです。大人であれば、「架空請求」という危険があることを知らないはずはなく、安全のために持たせたつもりが、危険を招くようでは、親の責任を果たしているとはいえないでしょう。

フィルタリングシステムを搭載することは必須ですが、よく分からずにそうしたリスク回避のシステムを使わない携帯電話を持たせてしまった場合、好奇心の強い子どもは怪しいサイトにアクセスしてしまうでしょう。一見、怪しく見えないサイトでも、世間にはきわどいサイトがたくさんあります。また、何の気なしに、「クリック」しただけで、「ご登録ありがとうございました」と出てくるなど、大人にとってもショックを受けるようなサイトはたくさんあります。

そうしたリスクを親子で知らずに、または親が子に伝えずに携帯電話を持たせることは危険を一緒に与えていることになります。危険を与えることは、たとえば、ライオンが谷底に子どもを突き落とすような生きていくための試練を与えることとはまったく意味が違います。「この携帯電話を持つことには便利さだけでなくリスクがあるのだよ」と教えなければ、今回の事件のようなことは繰り返される恐れがあります。

今回の事件はたまたま被害者が警察に被害を届け出たから発覚したことですが、自分のお年玉を溜めた預貯金などから数万円などを振り込んでしまって、誰にも言えずに悩んでいる子どもがいないとは限りません。むしろ、今回の届けでは氷山の一角と考えるべきではないでしょうか。ついこの前まで小学生だったようなローティーンには「架空請求」は非常に怖いはずです。便利な道具、安全のためにと持たせる携帯電話が被害をもたらすことがないように、親は万全の態勢で子に持たせることが大切なのです。

 

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