この記事では、退職後に受け取るお金の課税・非課税の整理と、健康保険・年金の基本的な考え方を押さえ、退職後1年目を乗り切るためのポイントをまとめます。
退職後に受け取るお金を「課税・非課税」で整理する
退職後に受け取るお金は種類が多く、課税・非課税が混在します。全体像を把握することが、手取りの見通しを立てる第一歩です。
※退職金は企業によって支給時期が異なりますが、税法上は「退職に基因して支給されるもの」が退職所得として扱われます。このうち、退職金や企業年金の一時金(DB・DC)は退職所得として扱われ、課税対象ではありますが控除が大きく、税額ゼロになるケースも多いのが特徴です。
ここでは、退職所得がいくらになるかの計算式を紹介します。
【退職所得控除の計算式】
勤続20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
【退職所得の計算式】
(退職金-退職所得控除)×1/2=退職所得
この退職所得に対して所得税・住民税が計算されます。
なお、退職金は支給時に源泉徴収で納税が完了していますので、翌年の住民税や国民健康保険料には影響しません。
退職後の“落とし穴”に備える
次に、退職後1年目に「あとから負担として表れやすいポイント」を見ていきます。・2026年からの新基準「10年ルール」に注意
退職金やiDeCoの一時金は受け取る時期が近いと、退職所得控除を二重に使えない仕組みになっています。これまでは、受取間隔が5年以上あれば控除の調整を避けられましたが、2026年1月からは10年以上に延長されます。
退職金やiDeCoの受け取り時期は、事前に間隔を確認し、可能であればタイミングを調整しておくことが大切です。
・放置厳禁!企業型DCは必ず移管
企業型DCは、退職後6カ月以内に移管手続きを行わないと「自動移換」となり、資産が現金化されたうえで運用が停止し、手数料も差し引かれます。退職後は次の職場の企業型DCや、個人型iDeCoへの移管手続きを早めに進めておきましょう。
・退職後1年目に届く“後払いの請求”に備える
住民税や国民健康保険料は、前年の所得をもとに計算されるため、退職後も「後払い」で請求が届きます。定年退職などで収入が減ったあとに請求が重なると、負担を大きく感じやすいでしょう。退職後1年目の税金や保険料を見込んだ資金準備が欠かせません。
健康保険と年金の仕組みを押さえる
退職後は、健康保険や年金について自分で選択・確認する場面が増えます。まずは、健康保険の選び方から見ていきましょう。●健康保険
退職後の健康保険は、次の順で検討すると判断しやすくなります。
①収入が基準内なら「家族の扶養」
保険料の自己負担がなく、年収など一定の基準を下回り、家族の扶養に入れる場合に選択肢となります。しばらく働かない人や、短時間労働の人、フリーランスに向いています。
②扶養に入れない場合は「任意継続」
最長2年、退職前に加入していた健康保険を継続できます。現役時代の標準報酬が低い人は、国保より安くなることがあります。
③単身で前年の収入(所得)が低い、逆に収入が高い場合は「国民健康保険」
国保は世帯の所得に応じた軽減や保険料の上限があるため、任意継続より安くなるケースがあります。
④働く予定があるなら「社会保険のある職場」
雇用条件によってはパートでも加入でき、保険料は会社と折半されます。
※介護保険料は65歳までは健康保険料に含まれますが、65歳以降は市区町村から本人に直接請求されます。扶養でも同じです。
●年金(保険料と受給)
年金は、健康保険とは別に考える必要があります。
国民年金の保険料負担は原則60歳までで、加入期間が480カ月に満たない場合は、65歳まで任意加入できます。老齢年金は65歳から受給が始まり、老齢年金を増やしたい場合は、厚生年金に加入して働くことで、その期間分が将来の年金額に上乗せされます。
一方、働きながら年金を受け取る場合は、給与と年金が合算されて課税されます。また、在職老齢年金は、賃金と老齢厚生年金の合計額が、次の額を超えると年金額が調整されます。
・2025年度は月51万円
・2026年度からは月62万円
知識が退職後の安心をつくる
退職後に受け取るお金は、課税・非課税の違いだけでなく、健康保険や年金、退職のタイミング、働き方によって手取りや負担が大きく変わります。ただし、全ての制度を完璧に理解する必要はありません。大切なのは、退職金や企業年金の扱い、退職後1年目にかかる負担、そして健康保険と年金の基本的な考え方を押さえておくことです。
事前に知っておくだけで、防げる負担は少なくありません。退職後の生活を安心してスタートさせるためにも、早めに情報を整理し、自分の状況を確認しておきましょう。








