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【激白】プルデンシャル元部長が語る「腐敗の予兆」 31億円詐取事件はなぜ防げなかったのか

社員ら100人以上が、顧客から総額約31億円をだまし取るなどしていたことが発覚したプルデンシャル生命保険。生命保険業界で「最強の営業集団」とも称される同社で、なぜこのような不祥事が起きたのか。

松本 健太

松本 健太

富裕層のお金 ガイド

保険業界で10年以上、数百の法人、富裕層(経営者・医師・プロ野球選手等)を担当。IFA(資産アドバイザー)として「超まじめ」に保険・証券を扱い、広く資産形成に関する提案をしています。2020年より総合保険代理店・IFA法人「EMPRO Risk Management株式会社」代表取締役。

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不祥事
社員ら100人以上が、顧客から総額約31億円をだまし取るなどしていたことが発覚したプルデンシャル生命保険。生命保険業界で「最強の営業集団」とも称される同社で、なぜこのような不祥事が起きたのか。同社の元部長で、現在は富裕層向けの資産アドバイザーとして活動する筆者は、実は在籍当時から「腐敗の予兆」を感じていた。社長の引責辞任にまで発展した今回の不祥事の背景について、私なりにひも解いてみたい。

売れない営業社員が「借金の持ち逃げ」をしていた?

まず、今回明らかになった問題のあらましを、簡単に振り返っておこう。

プルデンシャル生命が実施した顧客調査によれば、社員および元社員ら106人が、架空の投資話を持ち掛けるなどして、顧客から金銭をだまし取ったり、借り受けたりする不適切な行為を行っていたことが判明した。

被害に遭った顧客はおよそ500人にのぼり、被害総額は30億8000万円。そのうち22億9000万円は返金されていないという。

私は早稲田大学を卒業後、総合商社を経て、2010年9月にプルデンシャル生命に入社し、2019年までの9年間、同社に在籍していた。2015年春には、社内で最高ランクの「エグゼクティブ・ライフプランナー(部長)」に昇格している。

今回の不祥事を知った時、私が大きなショックを受けたのは言うまでもない。基本的に、私はプルデンシャル生命が大好きだ。純粋に「良い人」が多い会社だと感じてきたからである。特にトップレベルで活躍している営業社員には、倫理観が高くて人間的にも素晴らしい人が多い。

にもかかわらず、なぜ被害総額約31億円と極めて大規模な不祥事が起きたのか。ここで注目したいのは、「顧客から金銭を借りたまま返済しなかった」というケースが全体の6割を占めているということだ。

元社員である私の感覚からすると、これは「保険が売れなくて生活ができず、借金をして逃げた」というのが実態ではないかと直感している。

実際、ビジネス誌『ダイヤモンド』(*)の報道によると、逮捕に至った2事案に関与した営業社員の平均年収は600万円前後とされている。年収2000万円を超える社員も少なくない同社の中では、明らかに「売れない営業社員」だ。やや率直な言い方になるが、「売れない暇な営業社員」は何をしでかすか分からない。こうした社員を放置していたという構造が、背景にあった可能性がある。

*『【独自】プルデンシャルがひた隠す「投資トラブル」全6件の全容判明!濱田会長の引責辞任は不可避だった』ダイヤモンド・オンライン、2025年10月16日

現場で見てきた予兆と腐敗

今振り返れば、私が在籍していた当時から、不祥事の予兆めいたものはあったように思う。本業の保険ではなく、不動産業者に顧客を紹介してキックバック(紹介料)を受け取る、あるいは平気で複数の名刺を持ち歩くといった不届き者がゴロゴロいたからだ。実際、私自身も社外の不動産業者から「(顧客を)紹介してくれて成約したら100万円をあげる」と持ち掛けられたことがある。

もちろん、普通の良心的な営業社員はそんな話に乗るわけがない。私も「本当に良いものなら紹介するけど……」と前置きした上で、きっぱりと断った。しかし、お金がなく暇な営業社員の中には、そうした話に流されてしまった人もいたのかもしれない。

本来、ライフプランナー(編集部注:プルデンシャル生命では営業社員のこと)は、保険のプロであるべき存在だ。にもかかわらず、そうした立場にありながら、小銭稼ぎに走ることに疑問を抱かない。そうした空気が蔓延しているのを、私は途中から感じるようになっていった。

私は今、自ら保険代理店を経営しているが、自社ではそうした行為を絶対に許さないためのマニュアルを整備している。少しでも本業以外で稼いでしまうと、腐敗していくのは明白だからだ。当時のプルデンシャルは、そのあたりの脇が甘かったと言わざるを得ない。

昇格したのに……感じた「恥ずかしさ」と2014年以降の変質

皮肉なことに、エグゼクティブ・ライフプランナーに昇格した2015年前後から、だんだんと「プルデンシャルの名刺を出すのが恥ずかしい」と感じるようになっていったことを思い出す。

単なる保険の営業ではなく、時には人生全般の相談相手としてお客さまに伴走する存在として、長年にわたり信頼されていたプルデンシャルだが、その頃からそのブランド力に陰りが見え始めていたように思う。

今ではネットでもよく揶揄されているが、「青いスーツにツーブロック、ピンクのネクタイ」といった変な集団が社内で台頭してきたのだ。見た目だけならまだ良いのだが、悪い噂も絶えなかったのである。私たちが大事にしてきた「品格」のようなものが崩れていくのを感じていた。

元々、プルデンシャルは知識と人格を備え、お客さまから信頼され、長く付き合うことを重んじる、素晴らしい会社だった。私が師匠だと慕っていた先輩たちの多くも、まさにそうした人物だった。自分自身も含め、そうした価値観を大切にしてきた人たちは、当時の風潮を苦々しく思っていた。

私自身、東京メインで仕事をしていたが、「あぁ、プルね。みんないろいろやってるよね」と言われるのが嫌で、名刺を出しづらくなっていった。「保険業界最強の称号」だと信じ、必死の努力の末に手に入れたプルデンシャルのエグゼクティブ・ライフプランナーという肩書きだったが、皮肉にも、なってからの方が悩みは尽きなかったのだ。

死せる創業者、生ける会社に「呪縛」をもたらす

では、なぜ会社はそういう状況を放置してしまったのか。なぜ、システムを変えられなかったのか。実はそれこそが一番難しい問題だと思う。

同社が採用するフルコミッション(完全歩合)の「ライフプランナー制度」は、景気が良く、保険が順調に売れている時には優れた仕組みなのだが、今のように市場環境が厳しくなると、制度に無理が生じ、維持できなくなるのは明白だった。それでも、変えられなかった。

中国の故事に「死せる孔明、生ける仲達を走らす」という言葉があるが、私は今回の事案に、その構図を重ねて見ている。

米国に本社を置くプルデンシャルだが、日本法人には「絶対的な創業者」が存在し、はっきり言って神格化されている。彼が作った仕組み自体は当時としては優れたものだったが、惜しくも早くに亡くなってしまった。私の入社前に亡くなっているため、私も会ったことがない。

亡くなってしまっているのもあって、「創業者が作ったこの素晴らしい制度は変えない」と会社が言い張ったまま、時代が止まってしまっているのだ。まさに「自縄自縛」の状態である。

時代に合わせて制度を変えられず、無理が生じて、その歪みが今回の不祥事として噴出したと私は見ている。

食いつぶされた信頼は取り戻せるのか

今後、プルデンシャル生命はどうなっていくのだろうか。

私が入社した頃の師匠クラスの先輩たちは、本当に素晴らしい人たちだった。服装は全く華美ではなく、徹底してお客さま目線で仕事をし、会社とお客さまの双方を愛していた。保険の知識も凄まじく、まさに「本物」と呼ぶにふさわしい人たちだった。そうした人々は、いまや引退前後の年齢となり、現場を去りつつある。

もちろん、現在も優秀な人は多くいると思う。ただ、2010年代後半には、先人が築いてきた良いイメージを、一部の倫理観に欠けた人たちが換金していってしまっているように感じる場面もあった。このままでは、先人たちが築いてきた信頼を食いつぶしてしまうのではないか。大好きだった会社だからこそ、今回の件を機に変わってほしいと強く思っている。
 
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