怖いのは、「ここからが老後」という明確な区切りがないことです。現役時代の延長のように日々を過ごしていると、いつの間にかじわじわと家計が苦しくなる……というのはよくある話です。
「これくらい大丈夫だろう」という油断や、まわりと足並みをそろえたお金の使い方が、退職後に思わぬ落とし穴となることも。収入が大きく変わるタイミングでは、思いきって「お金の使い方」を見直すことが大切です。今回は、その中でも厄介な「見栄消費」について掘り下げてみましょう。
現役時代と退職後、決定的な違いとは?
一番の違いは「収入」です。現役時代は、毎月の給料に加え、ボーナスなどの臨時収入もあり、多少の出費は取り戻せる安心感がありました。
一方、退職後の収入は、パートなどの収入と年金が中心。増えることはあまりなく、貯金を切り崩し始めたら、補うのは難しくなります。
いわば、「リカバリーが効かない世界」に入るのが老後。現役時代と同じ感覚で「たまにぜいたくしながら生活」していると、家計はじわじわと崩れていきます。
見栄消費とは? 知らずに続けていませんか?
「自分は見栄でお金を使っていない」と思っていても、実は無意識にやっていることがあるかもしれません。見栄消費を具体例でみてみましょう。・元部下や後輩との食事でおごる
「昔の肩書き」を引きずって、つい気前よくなってしてしまう。
・ご祝儀や贈り物で無理をする
生活状況より「恥ずかしくない金額」が優先に。
・子ども・孫への過剰な支援
高級ランドセルや旅行費用など、頑張ってしまう。
・持ち物のグレードが落とせない
使用頻度にかかわらず、なんでもいいモノを選びたいと思ってしまう。
これらに共通するのは、「今の自分」ではなく「過去の自分」や「世間の目」に固執している点です。見栄にお金を使ってしまうと、老後の生活を苦しくしてしまう原因にもなります。
見栄消費をやめるために。今すぐ実践すべき3つのステップ
見栄を捨てることは、みじめなこと、寂しいことではなく、むしろ「自分軸」「本当に心地よい暮らし」で生きるためのプロセスです。●「自分にとっての幸福」を再確認する
「みんなが持っているから」「この年齢ならこれくらいが普通だから」という基準を一度捨て、「自分が満足できるか」という基準を把握します。「他人の評価」のために払う1円は、老後の自分を苦しめる1円だと認識しましょう。
●「家計の見える化」で現実を直視する
見栄は「なんとかなるだろう」という楽観の中に巣食います。
・自分の正確な受給年金額
・残りの人生(30~40年)で必要な総生活費
・現在の貯金や資産状況
これらを一度「見える化」してみると、今後の使い方が見えてきます。
●生活レベルの見直しをポジティブにとらえる
生活レベルを下げることを「我慢」ととらえると長続きしません。「これからはシンプルで身軽な暮らしを楽しむ」というポジティブに転換しましょう。
車を手放す、スマホを格安に変えるなどの選択も、「生活をダウンサイジングする」というより、「新しいライフスタイルを始める」と考えると、前向きになれます。
本当の「豊かな老後」は、見栄の先にない
「見栄消費」は、未来の自分に借金をさせているようなものです。過去の自分や他人の評価にとらわれていては、お金がいくらあっても足りません。「見栄消費」にとらわれる人の共通点は、自分の家計の限界を認めず、外側の世界に合わせようとすること。今日から「見栄」という重荷を捨てて、自分の手の届く範囲で楽しむお金の使い方に変えていきましょう!








