それぞれの心に響いたシーンとは
――完成した映画は撮影のときにイメージしていた通りでしたか? 好きなシーンはありますか?芳根:撮影しているときに「こんな感じかな」とイメージを膨らませて、ワンシーンずつ芝居をつなげていったのですが、その一方で「どうなっているんだろう」という気持ちもありました。もしかしたらその気持ちの方が大きかったかもしれません。
高橋:そうですね。完成した作品のことをイメージするよりも、その瞬間、瞬間をまなみとして精いっぱい生きなくては!という思いでいっぱいだったので、僕は完成した映画を見て、すごくいい映画になっている!とびっくりしました。 芳根:陸は自分のことに必死過ぎて、ちゃんとまなみのことを見ることができていなかったので、完成した映画を見たとき「まなみのこの表情好き!」というシーンがたくさんありました。それから、出産前に陸が一人で本音を語るシーンが特によかったと思います。まなみがひそかに陸のことを見守り支えてくれていたことが分かるからこそ、グッとくるシーンだったと思います。
高橋:まなみは陸の家族と生活をしているのですが、それを陸が見にくるシーンが印象深いです。陸はそんなふうに一人になるシーンが多いような気がしました。陸とまなみがぶつかり合うシーンも、まなみのことを思いながら気持ちをぶつけてくれていたんだなと感じましたし、一人でいるときの陸の表情、顔が涙でいっぱいになっているシーンなど、すごく刺さりましたね。
一人ぼっちになった瞬間に人間は心が開いて気持ちがあふれるのかなと思いました。
俳優の自分と素顔の自分とのギャップを乗り越えて
――この映画は、体が入れ替わった後に、どうやって自分の人生を生きるかという葛藤が描かれています。そもそも人間は誰もが生活の中で演じている部分があると思うのですが、芳根さんと高橋さんは俳優として他者を演じながら、自分とのギャップを感じることはありますか?芳根:以前は、映画やドラマに出ている自分と素の状態でいる自分とのギャップに悩んだり、もやもやしたりすることはありました。ただ、どれも「本当の私」と受け入れられるようになったら、とても気持ちが楽になったんです。
一度、友達にその話をしたら、彼女も会社にいるときの自分、家にいるときの自分に違いを感じると言っていたんです。みんな同じなんだと思いましたし、どの場所にいても、何をしていても、全て自分で選んだこと。そこにうそはないんです。そう考えるようになったら、スッと自分を信じて生きていけるようになりました。
高橋:いいこと言うなあ。
芳根:じゃあ、以下同文にしておきますか?
高橋:そうですね(笑)。自分の考えをしっかり持っていることは本当にすてきですよ。“芳根京子の哲学”って感じがしました。 ――高橋さんはアイドル、俳優として活躍する自分と普段の自分とのギャップに悩んだりすることは?
高橋:世間の皆さんが知ってくれている自分は、おそらく100%の自分ではなく、僕の中の何%かだと思うんです。それだけで「高橋海人はこういう人」と判断されてしまうと「それはほんの一部なんだよ」と思ったりはします。
でも、他人を100%知ることって難しいじゃないですか。とても時間がかかることだとも思いますし、僕自身も自分のことを100%分かっているかと聞かれたら分からないですし。永遠のテーマかもしれません。
芳根:自分のことって意外とよく分からないですよね。
高橋:僕はメソメソしてしまう時期が割と長くあったんですが、自分が歩いてきた道、経験したこと、選択してきたことに対しては、自信を持てていないとだめだなって思って。世間の人にどう思われても、自分だけでも自分を愛してあげたいと思います。
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