食と健康

卵は体に悪いのか? 「卵は1日1個まで」「黄身は食べない方がいい」説の真偽

【大学教授が解説】「卵は1日1個まで」「コレステロールを上げ危険」「黄身は体に悪いから食べない方がいい」と考えていませんか? 卵は1日何個までにすべきなのか、卵は本当に危険な食べ物なのか、分かりやすく解説します。(※画像:shutterstock.com)

阿部 和穂

阿部 和穂

脳科学・医薬 ガイド

東京大学薬学部卒業、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員、星薬科大学講師を経て、武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳科学と医薬。

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卵パックを持つ女性

健康のためには1日1個までにすべき? 実際に、卵に健康リスクはあるのでしょうか?


「卵は1日1個まで」「コレステロールが上がるから危険」「黄身は体に悪いから食べない方がいい」と考えていませんか? 卵料理が好きでも、健康に気を付けて制限している人も珍しくないようです。卵は本当に危険な食べ物なのか、分かりやすく解説します。

卵は1日何個まで? コレステロールとり過ぎのリスク・体内での役割

まず結論からですが、健康に問題がないなら、卵は1日2~3個食べた方がメリットが大きいです。

確かに、卵は肉類や乳製品と並び、コレステロール含量が比較的多い食品として知られています。そのため、あまり食べ過ぎない方がいいと考えられ、「目安は1日1個まで」とする専門家もいます。また、特に黄身にコレステロールが含まれているので、「黄身を食べない方がいい」と考える人もいるようです。

しかし近年の研究から、体内コレステロール量は、以前に考えられていたほど食事の影響を受けないことが明らかになっています。そしてそもそも、コレステロールは体に悪いものではありません。

コレステロールが過剰になると、動脈硬化や、脳梗塞・心筋梗塞のリスクが上がります。しかし一方で、コレステロールは私たちの体に欠かせない役割を持っていることも、忘れてはいけません。コレステロールは全身にある細胞膜を形作る成分として機能していますし、副腎皮質ホルモンや性ホルモンの原料にもなります。骨を丈夫に保つビタミンDや、脂肪分の消化・吸収を助ける胆汁酸の原料でもあります。コレステロールがなければ、私たちは肉体を形作れず、正常に生きていくこともできないのです。

実は80%が体内で合成? コレステロールが気になる人が知っておくべきこと

実は、私たちはコレステロールを自分の体内で作ることができます。その役割を主に担っているのが、肝臓です。少し専門的になりますが、肝臓では「アセチルCoA」という物質を原料として、「メバロン酸経路」と呼ばれる段階的な化学反応を経て、常にコレステロールが生合成されるようになっています。

そして私たちの体が必要とするコレステロールの約80%は体内で合成されているのです。残りの約20%が、食事から摂取した分になります。ですから、少しくらい卵を多く食べても、体内のコレステロール量の全体に影響することはほとんどないのです。

脂質異常症などの病気があり、医師からコレステロールの摂取を控えるように指導されている人以外は、心配して制限し過ぎる必要はありません。

卵の良質なタンパク質の健康効果・体へのメリット

また、卵に含まれるタンパク質は、非常に良質です。

私たちの体を作っているタンパク質は、20種類のアミノ酸が組み合わされ、結合してできています。そのうち9種類のアミノ酸は体内で作れず、食事からとる必要があるため、「必須アミノ酸」と呼ばれています。食品中のタンパク質を構成しているアミノ酸のうち、どれくらいの割合で「必須アミノ酸」が含まれているかを示したものが「アミノ酸スコア」です。アミノ酸スコアが高いほど良質なタンパク質とみなせます。

卵に含まれるタンパク質のアミノ酸スコアは100です(ちなみに、筆者はそう思いませんが「美容と健康にいい」といった宣言文句で有名な「コラーゲン」もタンパク質の一種です。コラーゲンのアミノ酸スコアは0で、あらゆる食品のタンパク質の中で最低ランクですので、栄養素としてはほぼ価値がありません)。

まとめると、卵は非常に栄養価が高く、体によい、優れた食品だということです。脂質異常症などの病気で、食品からのコレステロール摂取を控えるよう指導されている場合を除き、健康なら積極的に食べた方がメリットが大きい食品です。

ただし、卵ばかりを食べ過ぎていると、栄養バランスの面で偏りが生じて、また別の問題が生まれてしまいます。1日2~3個くらいにしておくのが適当でしょう。
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