労務管理

「舌打ち」「ため息」「不機嫌」も立派なハラスメント! 職場の「フキハラ」事例に専門家の見解は

All About編集部が実施したアンケートに寄せられた不機嫌ハラスメント「フキハラ」についてのさまざまなエピソードを紹介。あわせてフキハラに遭遇した際の対処策を専門家に聞きました。【職場で体験したハラスメント #3】

執筆者:All About 編集部

頻繁にため息が聞こえてきた時、あなたならどうしますか?

頻繁にため息が聞こえてきた時、あなたならどうしますか?

All About編集部が全国の男女に実施した「職場で体験したハラスメント」アンケートに寄せられた回答の中から、ため息や不機嫌にまつわるハラスメント「フキハラ」に関するエピソードをピックアップしてご紹介します。

また、社会保険労務士・行政書士の小西道代さんから、「ため息(不機嫌)ハラスメント」についてのアドバイスもいただきました。
<目次>

かまってアピールのため息

まずは、文字通り「ため息」についてのハラスメントですが、この「アピール型」はまだましな方かもしれません。

「大きくため息をついて周りに同情か声をかけてもらいたかったのか、わざとらしいくらいに大袈裟な人がいた。あまりのわざとらしさにうんざりして無視していましたが、それでも続けていましたので、席を立ち離れました(50代・男性)」

「こちらに何があったのか聞いて欲しい感じで、『うーん』や『はぁ……』など何か問題が起きて困っている感じを出す人がいた。あまりにも回数が多い時は、触れずにスルーしていたが、かわいそうなのでどうしたのか話しかけるようにしていた(30代・女性)」

「お局様が、気に入らないことがあるとすぐにわざとらしい大きなため息をついていました。その都度『どうしたんですか?』と言ってほしそうでした。初めは怖かったですが、割り切って自分が暇なときは声をかけ、機嫌をとってあげました。忙しいときは無視しました(30代・女性)」

嫌味や叱責のため息

嫌味や叱責をさらにブーストするため息。これは凹みますし、建設的なことがなにもありません。

「部下のミス、同僚のミスを報告した際に明らかに機嫌が悪くなりため息をつき、ネチネチと理屈をならべこちら側の意見を聞いてくれない。こちらが意見を言うだけ不機嫌になるので、余計なことは言わずに我慢しながら聞き流し、謝り続けます(30代・男性)」

「予定時刻までに仕事を終えることができなかった際に、露骨にため息をつかれました。これほどメンタルに響くことはありません(40代・回答しない)」

「上司に質問をした際にため息を必ず吐かれ、とても嫌な空気になりました。新人も質問しづらく、仕事が円滑に回らなくなる要因となっていました(20代・女性)」

攻撃型のため息

ため息をつく本人の意図も測りかねるし、一番精神的にきついため息がこれかもしれません。

「毎回自分の座る机の前を通るなり、ため息ばかりついていて特に何かを言ってくる感じではないのですが、自分が何かしたのかと思い少し不安になりました(30代・女性)」

「私のことが嫌いなのか、みんなにもこうなのか分からないが、その人の席の近くに複合機がありFAXを送ろうと操作をしていると毎回『はぁ』とため息をつかれたり、机をトントン指でたたいたり、舌打ちをしてくる(20代・女性)」

また、こんな回答もありました。ため息は癖になるのですね。

「わざとらしくため息をつく嫌がらせではないが、本当にため息をつくのが癖な女性がいた。害がないとは言え、正直周りはあまり気分がいいものではない。直してほしいのがホンネ(50代・女性)」

舌打ちをされる

不機嫌で舌打ちをするなんて、マンガの感情表現ではないのだからとも思いますが、回答を見る限りかなりたくさんいることが分かりました。

「舌打ちをよくする人がいて、たとえ自分に向けられたものでないとしても不快な気持ちになります。他の人が怒られているところを見かけたり聞いてしまったりするだけでも縮こまる思いがします(20代・女性)」

「1番いらっとするのは、『チッ』と舌打ちをされること。すごく馬鹿にされて嫌な感じがしてかなりイライラした。立場上私が1番下だったので、特に何も言うことができず、ひたすら我慢するしかなかった(40代・男性)」

不機嫌の演出方法さまざま

ため息や舌打ち以外でも、不機嫌の演出方法はさまざまあるようです。

「上司や同僚は毎日不機嫌です。朝挨拶しない、乱暴に道具を扱うのはあたりまえです。あとは客だろうが仲間だろうが関係なく小声で文句をずっと言っています。気に入らないと口調がきつくなるので萎縮してしまいます。自分ももしかすると同じ行動をしているのではないかと不安なので、やってはいけないお手本が近くにあると考えるようにして自分はやらないぞと戒めています(40代・回答しない)」

「上司の機嫌が悪い時に話しかけるとまともに聞いてもらえないため、トラブルを報告したくても、見るからに不機嫌な時は報告できないことが多くありました。上司のため、改善要求することすらできませんでした。結局大事なことを言えずに後で怒られることになりました(40代・女性)」

「上司が不機嫌なことがよくある。不機嫌だとモロに仕事での当たりがきついので、周りが仕事をめちゃくちゃやりにくい。上司の次のポジションにいるので、私がいつもなだめて機嫌を取っている。本当にめんどくさいが、ヨイショしてあげないと、周りが可哀想(30代・男性)」

「不機嫌になると詰めてくる上司がいた。こちらは普通にしているのに返事したあとに、自分が不機嫌だからといって『なに?』と詰められた。『え? なに?』と言われましても……と思い引くのを待っていたのだが、引かなかったのでパワハラだと思いカウンセリングに行った(20代・女性)」

回答を読んでいくと、誰かが不機嫌を表現することで仕事に支障をきたして、無駄な時間を自分も過ごすことになるということがよく分かります。ハラスメントをした当人も損をしている気配がありますよね。

無視もまたハラスメント

こちらは「ハラスメント」という言葉が台頭する以前から延々と行われ続けているいやがらせ行為です。

「他のスタッフが挨拶を無視したり、仲間内でだけ話したりすることがありました。仲間外れにされていたスタッフは明らかに孤立しており、業務に支障が出ていました(20代・女性)」

「直属の上司だけ社長と副社長から無視されていた。挨拶しても返さないし、話しかけても無視されていた。それなのに、社長と副社長は『説明がない、わからないのに聞きに来ない』など無茶なことを言われていた。なにか言えばクビにさせられるんだろうなと思ってなにも言えなかった(20代・女性)」

【専門家アドバイス】継続的な不機嫌や無視もパワハラ認定される

不幸にも「ため息(不機嫌)ハラスメント」にあってしまった場合に何ができるのか、社会保険労務士の小西道代さんに法律面も含めてお聞きしました。

「1日のうちで多くの時間を過ごす職場に、不機嫌な人がいると、『今日も頑張ろう』という気持ちがくじかれてしまうこともあります。職場は、1人ひとりが役割を担い、チームで協力しながら成果を出していく場所。そんな中に不機嫌な人が1人でもいると、周囲に与える心理的影響は大きく、結果として生産性や職場全体のパフォーマンス低下にもつながりかねません。

厚生労働省が毎年公表している『個別労働紛争解決制度の状況』では、『いじめ・嫌がらせ』に関する相談が10年連続で最も多い結果となっていて、職場の人間関係に関する悩みがいかに多いかが分かります。継続的な不機嫌や無視が『精神的な攻撃』とみなされて『パワハラ』と認定されると、会社は被害者への配慮や加害者への注意指導、再発防止対策を行う義務が発生します。それどころか、一部の不機嫌な人のために、周囲にメンタル不調者が出てしまうと貴重な戦力が離脱し、会社としてもデメリットしかありません。

個人ができる対策としては、気にしない・無視するといった方法もありますが、それでは根本的な解決にはつながりません。チームをまとめる管理職がチーム内の雰囲気に気を配りながら、不安やギスギスした空気が生まれそうなサインに早めに気づいて対応することが求められます。無理に我慢せず、信頼できる上司や社内の相談窓口を活用しましょう」

継続的な不機嫌や無視は1人で抱え込むような問題ではなく、会社全体の問題にもなりかねないので、早めに相談をした方がよさそうですね。

<調査概要>
職場で体験したハラスメントに関するアンケート
調査期間:2025年2月25日~3月27日
調査対象:全国10~70代の男女150人

<参考>
厚生労働省「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況

小西道代(こにし みちよ)プロフィール
行政書士法人グローアップ代表。社会保険労務士法人トップアンドコア役員。大学卒業後、日本マクドナルドに入社。幅広い年齢層と共に働くことで、法律や制度だけではない労務管理・組織運営に興味を持ち、弁護士事務所等で経験を積む。自身も喫茶店を経営した経験から、労務トラブル予防の労務相談を得意とする。All About「労務管理」ガイド。
 
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