私用で有休を取りにくい風潮はなぜいまだにある?
【今回のお悩み】有給休暇は権利として与えられているにもかかわらず、私用で取得しようとすると「私用じゃ認められない」や「他に取ってる人いないのによく休めるね」と上司に言われる風潮はなぜいまだにあるのか(30代男性/千葉県在住)。
理由を聞くこと自体は違法ではないけれど
【回答】おっしゃる通り、有給休暇は「労働者の権利」です。本来であれば、取得することや取得する理由について、上司から何かを言われるものではありません。
労働基準法にも「労働者の請求する時季に与えなければならない」とありますし、法律上、有給休暇を取得する理由に関する記載はありません。理由を聞くこと自体は違法ではありませんが、会社がその理由をもとに取得させないと判断することは「有給休暇の取得妨害」として問題となります。
実際、裁判例でも「有給休暇を取れば評価が下がる」というような発言を上司がし、結果的に有給休暇の請求を取り下げさせたことは「極めて違法性が高い」と判断されています。
日本の有給休暇の取得率は、海外からも指摘されるほどに低く、政府が目標としている「2025年までに取得率70%」にも届いていないのが現状です。
2019年4月からは「年間5日の有給休暇取得」が義務化され、取得させない会社には罰則が科せられるようになったことからも、会社側は有給休暇の取得率を上げるべく、さまざまな働きかけをしています。
所定休日が土曜・日曜日の人の場合、前後の1日を“有給休暇取得奨励日”として有休を組み合わせ連休にするなど、厚生労働省が推奨している「プラスワン休暇」や、会社や部署単位で一斉に日にちを指定して取得する「有給休暇の計画的付与制度」などは、自分だけが有給休暇を取得することで周囲の人へ罪悪感を抱きがちな日本人にとっては、有効な手段かもしれません。
取得しにくい価値観をつくった日本的背景
日本は長らく「終身雇用+年功序列」の仕組みにより、長時間労働やサービス残業などの自己犠牲が美徳とされてきました。上司の中には、有給休暇は体調不良や家族の急用などに使うものであり、旅行などの私用では休みを言い出せない……という価値観を持ったままの人がいるかもしれません。しかし、先述した裁判例のような「有給休暇の取得妨害」が「パワーハラスメント」と認定される近年では、有給休暇を取得しやすい環境を整備することが上司の役割の1つと言えます。
私用で取得することに反対的な上司には「有給休暇は権利だ」と主張するよりも、時代や働き方の変化、そして休暇を取得することによって得られるメリット、例えば、リフレッシュによる生産性の向上、チーム内の協力体制の醸成、モチベーションの維持による定着率向上などを、丁寧に伝えることで、理解を促すほうが建設的かもしれません。
<参考>
厚生労働省 あかるい職場応援団「『ハラスメント基礎情報』【第16回】『有給休暇の取得妨害』 ― 日能研関西ほか事件」
<調査概要>
仕事で有休を取得する際のマナーに関する疑問
調査方法:インターネットアンケート
調査期間:2025年1月28~29日
調査対象:全国10~70代の男女100人
※回答者のコメントは原文ママ