労務管理

「有休」を当日取るのは“マナー違反”だと言われた…働く人の権利なのに指摘してくるのは日本人特有?

会社で働く人の権利である「有休」ですが、そこにはさまざまな“モヤモヤ”が横たわっているようです。今回は、「有休の当日取得」に関するお悩みについて、社会保険労務士の小西道代が回答します。

小西 道代

執筆者:小西 道代

労務管理ガイド

有休を当日取得するのは周りから“マナー違反”だと言われて……

有休を当日取得するのは周りから“マナー違反”だと言われて……

心身の疲れをリフレッシュし仕事の生産性を上げるのに役立つ「有休」。ただ、会社内の暗黙の了解による“有休マナー”なるものによって、モヤモヤしている人も少なくないようです。今回はAll About編集部に寄せられた有休のお悩みについて、社会保険労務士の小西道代が回答します。
 

有休を当日取得するのはマナー違反?

【今回のお悩み】
有休を取る際、当日急に有休を利用することは法律的にいいはずなのに周りからマナー違反だと言われます。私は変なマナーだと思うのですが、これは日本人特有なのでしょうか(20代女性/東京都在住)。
 

会社にも「時季変更権」という権利がある

【回答】
確かに、有休を利用することは働く人の権利として法律で認められています。労働基準法でも「労働者の請求する時季に、有給休暇を与えなければならない」と書かれていて、当日急に利用することも可能なように読み取れます。

しかし、働く人の権利と同様、会社にも「時季変更権」という権利があり、「事業の正常な運営を妨げる場合」には別の日に変更することができます。会社は、あなたが休むことで業務にどのような影響が出るのか考え、影響が出る場合には、代わりの人を手配したり、あなたの業務を別の人に割り振ったりする必要があります。有休の利用は、会社がその判断をする時間を考慮して行うよう裁判例でも言及されています。

今回のお悩みにおいては、有休を利用すること自体は法律上の権利ではあるけれど、上司や同僚への影響を考えると、「当日急に」ではなく、できる限り早めに有休申請をしておくことがマナーと言えます。

また、労働基準法では1日を「0時~24時」の暦日で考えるため、当日の有休申請は「0時」を超えている以上、事後申請となってしまいます。事後申請は就業規則に記載があるときのみ有効となりますので、自社の就業規則を確認してください。

日本だけでなく、EUやカナダ、韓国などでも有給休暇の制度はありますが、やはり会社側に時季変更権と同様の権利が認められていることが多く、チームで働く以上、仲間への配慮が必要なのも同じです。
 

どうしても当日急に申請しないといけないときは

とはいえ、体調不良や家族の事情で「当日急に」申請せざるを得ないときもあります。

もしも会社や上司に「マナー違反」と言われたときは、事情を丁寧に説明するとともに、今後は早めに申請する姿勢を見せておくことが大切です。

さらに、自身が希望する日に有休を利用できるようにするためには、日頃から、自身の担当業務を整理して進捗状況が分かるようにしておくことや、周囲とのコミュニケーションを徹底し、いざというときにフォローしてもらえる関係性を築いておくことが効果的です。

<調査概要>
仕事で有休を取得する際のマナーに関する疑問
調査方法:インターネットアンケート
調査期間:2025年1月28~29日
調査対象:全国10~70代の男女100人
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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