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なぜお米が品薄状態に? 価格高騰はいつまで続く? 「令和の米騒動」の背景を農業ジャーナリストが解説

全国的にお米の品薄や価格高騰が起こり、混乱が生じています。なぜこのような事態が起こっているのか、「令和の米騒動」について農業ジャーナリストの松平尚也が解説します。

執筆者:All About 編集部

お米の品薄状態、価格高騰が続いている

お米の品薄状態、価格高騰が続いている

全国的にお米の品薄や価格高騰が起こり、流通に混乱が生じています。9月に入り新米が収穫され流通し始めてもなお、お米の価格が高止まりしている状況です。

日本人の生活に欠かせない食材であるお米。いったいなぜ今、品薄と高価格が続いているのでしょうか。その背景を分かりやすく解説します。
 

お米の品薄や価格高騰が起こっているワケ

お米が品薄になっている背景には、インバウンドによりお米の需要が増えたこと、パンなど粉食の食品価格高騰で割安なお米に消費がシフトしたことが指摘されています。

ただそれより大きな理由としてあるのが、主食であるにもかかわらずお米の需要と供給を市場(民間)に任せている点です。市場に任せたことで、需要が増えると価格やお米の在庫に影響しやすくなっているのです。

お米の消費量は近年減少していて、日本の田んぼの約4割は休ませている状況です。農林水産省は、“お米余り”に対処してきたのですが、今回のお米の流通や消費の混乱には具体的に対応できていません。
 

この状態はいつまで続くのか

早期米(8月中旬ごろに収穫・出荷するお米)が出回る9月中には品薄は落ち着くと見られています。ただしお米の価格は、少なくとも年内までは高止まりするといわれています。

その理由には、お米の主な流通ルートである農協が農家からのお米の買取価格を上げていることが挙げられます。通常、農協は秋ごろに農家に前払いで概算金(がいさんきん)の支払いをします。今年はその支払い価格が全国で2~5割上昇しており、それが店頭価格にも影響しお米価格の高騰がしばらく続くといわれています。

ただし、長期的なお米の価格の変遷を見ると現在の価格は必ずしも高いとはいえず、30年前の価格は今よりも高く推移していました。茶碗1杯当たりの値段は約40円で、カップ麺約200円、菓子パン140円、ペットボトル飲料が1本150円となる中で、お米は手頃な食材とされています。
 

「備蓄米」という制度もあるけれど……

お米の品薄状態は、民間在庫量(※)が減っていることを意味します。在庫が減るとお米の品薄と値上がりが続くことになります。

日本ではお米の収穫時期のピークは9月と10月です。二毛作が可能なタイなどの東南アジアと異なり、日本では年に1回しかお米が収穫できません。そのため7月と8月がお米の端境期となり、6月末の民間在庫量が端境期前のお米の残りを示す量となります。2024年は6月末の民間在庫量が統計開始後過去最低の156万トンを記録し、お米が品薄となる要因となりました。

お米が品薄になった場合に、政策の中で対応できる手がないのも問題です。日本では「備蓄米」という制度があります。この制度は、政府が100万トンのお米を備蓄し、不作や米不足に陥った際に市場に放出(供給)するというもので、“平成の米騒動”をきっかけに始まりました。

しかし備蓄米は、お米が「供給が不足」となるか「生産量が減少」した場合でないと放出できないという法律の縛りがあります。今年のような品薄だけでは放出できないのです。こうした備蓄米の中身については、制度を柔軟に対応できるように変更すべき、という声も出てきています。

※お米の民間在庫量とは、農協などお米の出荷団体やお米の取扱量が多い集荷業者や米卸などの在庫量を月ごとに農林水産省が集計した量を意味する。6月末の民間在庫量は、中規模のお米販売業者や生産段階の在庫、そしてもち米も含めてより正確に在庫量を計算している。
 

今必要なことは

消費者が農家さんとつながり、お米を通じて米づくりの風景を知っていくことが大切といえます。豊かなお米の食文化を継続していくためには、お米農家が農業を続けることのできる環境が必要です。米づくりのコストが上がる中で、今年のコメ価格は最低限の水準という声も農家から出ています。

日本の1人当たりのお米消費量は、約55kgとここ半世紀で半分以下に減少しました。また、日本のお米の生産量は約800万トンですが毎年10万トンずつ減少している状況です。一方で、お米農家の数も減少しており、2030年には国内の米需要量が不足する可能性も指摘されています。

今必要なのは、日本でお米が食べ続けられるための政策とそれを支える市民の食行動です。私たちは、お米の品薄をきっかけに米食の未来について考え始める必要があるといえるでしょう。

【この記事の筆者:松平 尚也】
農業ジャーナリスト。農・食・地域の未来を視点に情報を発信。龍谷大学兼任講師。京都大学農学研究科に在籍し国内外の農業や食料について研究している。自身が代表理事を務めるNPO法人「AMネット」ではグローバルな農業問題や市民社会論について分析し、農場「耕し歌ふぁーむ」では地域の風土に育まれてきた伝統野菜の宅配を行ってきた。テレビ、Webメディアなどでも幅広く活躍中。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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