「a×0=0」だけど、「a÷0=0」は誤答
割り算で「どうして0で割ってはいけないの?」と子どもに聞かれたらどう答えますか。まちがっても「そういうルールなの!」などと乱暴な返答をせず、丁寧に答えてあげたいものです。 一般的に、小学校で習う足し算や割り算などの四則演算では、「逆算」が可能とされています。たとえば「18÷6=3」の逆算は、「3×6=18」のような感じです。これを0で割る計算で考えてみましょう。たとえば「18÷0=0」に当てはめると、「0×0=18」となり、この時点で逆算はできないためアウトです。「0×0=0」だからです。
「18÷0=0」と誤答してしまうケースでは、恐らく「0に何をかけても答えは0」という、0のかけ算のルールの感覚で深く思考せずに回答してしまっているのでしょう。
「a÷0」の回答は解なし? 無限大!?
さらに「18÷0=□」とおいて逆算を試みてみましょう。この逆算は「□×0=18」となります。0にどんな数字をかけても答えは0なんだから、これを満たす□は考えようがありません。よって「18÷0=解なし」となるわけです。
でも、「18÷0」は計算できないから「解なし」だよと教えるのでは、算数がたんなる“暗記”になってしまいます。そこでここをもう少し掘り下げていきましょう。
「18÷1」の答えは何ですか? そう、「18」ですよね。では「18÷0.1」はどうでしょう。答えは「180」となります。こんなふうに割る数を、どんどん小さくしていくことを考えてみます。
すると、おもしろいことがわかってきます。
18÷1=18
18÷0.1=180
18÷0.01=1800
18÷0.001=18000
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このように割る数を0に近づけていくと、答えはどんどん大きくなります。よって「18÷0」の答えは「∞(無限大)」としてもよさそうです。
でも、ちょっと待ってください。中学1年生になると「負の数」を学びます。そこで次にこんな式を考えてみましょう。「18÷(-1)=-18」。この割る数を「-1」から少しずつ大きくしていきます。
18÷(-1)=-18
18÷(-0.1)=-180
18÷(-0.01)=-1800
18÷(-0.001)=-18000
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こんどは答えがどんどん小さくなっていきました。この調子で割る数をどんどん「0」に近づけていくと、答えは「-∞(マイナス無限大)」となっていきます。
算数のテストの回答には「解なし」と書くべきとは思いますが、「∞」とか「-∞」という解答も絶対に間違いとは言いきれないかもしれません。
「0÷0=1」になるの? 解なし!?
ところで「a÷0=解なし」というのは何となくわかったけど、じゃあ「0÷0」の答えはどうなるんでしょうか。「18÷18=1」「x÷x=1」のように、同じ数字どうしを割り算したら答えは1になるから、「0÷0=1」なのでしょうか?たしかに、逆算を適用してみても「0÷0=1」→「1×0=0」になります。少なくとも「18÷0=□」→「□×0=18」のような違和感はありません。
じゃあ、とりあえず「0÷0=□」とおいてみて、逆算で□を求めようとすると「□×0=0」となるわけだから、「0にどんな数をかけても絶対に答えは0」なのだから、□はどんな数であっても成立してしまいます。
というわけで、0で割るってどういうことなんだろうということから、いろいろと考えてみると数学の不思議な世界に触れることができます。
ちなみに、このように0で割り算することを「ゼロ除算」といいます。しかし、いかなるアプローチから定義を試みようとも、破綻にいたり数学的には意味をなさず成立しません。電卓で計算しても「エラー」などと表示されるのです。