中学生のときの話。オイラが通っていたのは田舎の公立中学校。もちろん、通学範囲に名門の私立などなく、偏差値に見合った公立高校に行くのが当たり前であった。公立の高校だから、入試問題の範囲も教科書に限定されており、それに合わせて勉強をしていた。
当時は、遊びたい盛りの中学生。東京に遊びに行く口実はないかと思案した結果、「模擬試験を受けに行けばいい」とひらめいた。これならば、交通費・食費は出るし、当時は都立でさえ三教科だったから、試験は午前中でおしまい。午後からは遊べる。午前中は試験を受けたのだから、すぐにかえってきて勉強しろとはさすがに親も言わない。
「なんて頭が良いのだ」と自画自賛して模擬試験を受けに行ったら、問題が全然解けない。オイラは公立高校の入試に合わせて勉強はしていたのだが、東京で行われる模擬試験は私立や国立高校が対象に含まれる。範囲が全然違うのだ。数学は基本を組み合わせればどうにかなったし、国語も何とかなった。ところが英語だけは壊滅だった。何しろ単語が全然分からないのだ。文法問題は何とかなったが、長文がちんぷんかんぷんである。
これには困った。いくら出題範囲が違うとはいえ、この点数ではスポンサーも金を出さない。そこで、その日は遊びに行くのを急遽やめて、書店に直行し、単語集を1冊購入した。たしか旺文社から出ていた、豆単の中学生版だったと思うが、これを購入して、帰りの電車の中から勉強を開始した。
次の模擬試験までの期間が2週間。その間、単語だけを集中的に暗記した。別に都内の私立高校用の模擬試験で偏差値を取れても、公立高校に行くしか選択肢のないオイラには関係はないのだが、模擬試験を口実に東京で遊べるというのは田舎の中学生には魅力的なことであった。
結果はどうだったかというと、あれほど分からなかった長文もすんなりと読め、偏差値で言うと、20くらいあげることができた。これで、「英語は単語力だ」と勘違いし、後々英語が伸び悩んだ原因になったのだが、とりあえずの危機を脱することはできた。
英語ができないと言うのなら、どのレベルで、どの分野でつまずいているのか原因を突き止め、そこから勉強を開始するのが効率的である。漠然としてできないのではなく、どこかにつまずいている箇所はあるのだ。
たとえば、長文が読めないのならば、単語が引っかかって長文が読めないのか、文法・構文的問題で英文が読めないのか、英文を読む持久力に欠けているのかで、処方箋は異なる。それを無視して、むやみやたらに英語を勉強したところで、英語はできるようにはならないのである。
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