翻訳ソフト使用のコツについて、2回にわたって書いてきた。
最終の今回は、
・翻訳ソフトはどのように英文や日本文を解析しているのだろうか?
・数年前の製品と比べて、機能的にどのくらい進化しているのだろうか?
・実用レベルから翻訳者レベルに達するにはどのくらいかかるのか?
の三点について取材を行った。
今回の取材もエー・アイ・ソフト株式会社の翻訳プロダクト開発責任者玉川博康さんにお願いをした。
-- お忙しいところたびたびの取材になり恐縮ですが、よろしくお願いします。
玉川:こちらこそよろしくお願いします。
-- さて、翻訳エンジンの仕組みはどのようになっているのでしょうか?
玉川:と、おっしゃいますと?
-- たとえば、単純な
・SV
・SVC
・SVO
・SVOO
・SVOC
のような英文ならば、機械的な置き換えも可能でしょうが、実際の英文は、修飾語が複雑に絡み合いますよね? これをどのように判定しているのか、教えてください。
玉川:専門的に説明すると非常に長くなってしまうので、簡単に概念のみ回答させて頂きます。
-- はい、わかりやすくお願いします。
玉川:機械翻訳には、解析、変換、生成の3つのフェーズが存在します。
-- 3つのフェーズですか?
玉川:ええ。例文として、 I ate the apple. で説明しましょう。
-- 最初のフェーズは?
玉川:第一のフェーズは、”解析”です。解析のフェーズでは、原文の文の構造を解析します。この段階で、I はateの主語で、the appleは、ateの目的語と英文を解析します。
-- それからどうなりますか?
玉川:第二のフェーズは、”変換”です。変換のフェーズでは、原文を目的言語の構造に変換します。
-- 具体的には?
玉川:日本語の目的語は動詞の手前に来るので、語順を入れ替えたりします。
I----ate----the apple
私---りんご---食べる
と、動詞と目的語の位置を変換します。
-- それから?
玉川:第三のフェーズ、つまり最終フェーズですが、”生成”を行います。
-- ”生成”ですか?
玉川:そうです。”生成”のフェーズでは、目的言語の構造から訳文を作成します。助詞を補ったり、動詞を活用したりします。
私--は--りんご--を---食べた。
のようになります。
-- なるほど。
玉川:機械翻訳では、上記の処理をするのにルールを使用しています。これらのルールを駆使して、複雑なさまざまな英文パターンに対応できるようにしています。