他国には見られない日本的な組織文化
その大きな原因は、日本的な組織文化にこそあると考えます。著作『カルチャーマップ』で各国の組織文化の違いを明らかにした、米国のビジネススクール教授エリン・メイヤー氏によれば、日本の組織文化には大きく2つの特徴があると言います。1つは、明確な階層主義。もうひとつはコンセンサス(合意)重視の文化です。加えて、ハイコンテクスト(暗黙合意による意思疎通)の文化的素地もあり、これらが絡み合うことで他国には見られない、特異でかつ風通しの悪い組織を作り出しているというのです。 さらに、昭和の高度成長を支えた日本の企業組織が、戦前の官庁および軍部の“官僚的中央集権組織管理”を手本として発展したという歴史を有している点も、これに拍車を掛けたと考えられます。
彼らが手本にした組織体制を例示するなら、最も分かりやすいのは戦前、戦中の軍隊における大本営と現場の関係であり、「本社は頭脳、現場は手足」という厳然たるヒエラルキーが、彼らの風土には脈々と息づいているのです。こうして、ダイハツ工業、豊田自動織機、日野自動車における親会社や本社に物言えぬ現場は、形作られてきたと言えるのです。
アメリカのネット企業大手Googleは、2012年に「効果的なチーム」の特性を探る目的で「プロジェクト・アリストテレス」を立ち上げ、「言いたいことが言える」文化こそが自社の発展や成長を促している、というレポートを公表して注目を集めました。
一般に、「組織やチームに向けて、率直な意見、素朴な質問、違和感の指摘がいつでも、誰でも気兼ねなく言える」か否かは、近年「心理的安全性」が高い・低いという表現で表されることも多く、Googleのレポート以降、この「心理的安全性」が企業マネジメントの領域で大いに注目を集めるに至っています。
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