定年退職後にも働き続けたいというニーズが高まっている一方で、希望する仕事が見つからないという声も?
(1)生活するために必要な金額を知る
定年後に働く一番大きい目的は「収入を得ること」でしょう。とはいえ、現役時代と同じ水準で収入を得ようとすると、やりたくない仕事をせざるを得ない可能性が高くなってしまいます。そこで、これだけあれば生活できると思える金額を知っておくことをお勧めしています。まず3カ月でよいので家計簿をつけて今の生活費を知り、定年後の生活費を想定します。その上で、「年金を受け取れるようになったら一切働かずに、年金の額の中で生活したい」のか、「年金は旅行など娯楽に使い、健康なうちは就労収入で生活したい」のか、あるいは「年金は70歳まで繰下げしたいから、70歳までは貯蓄の取り崩しと就労収入で生活したい」のかなど、自分の希望を考えて、最低限仕事で稼ぎたい金額を割り出しましょう。
(2)肩書きのない自分をイメージする
退職後、会社の肩書きがなくなった自分が、どんな価値を提供できるのか考えることがとても大切です。高い役職に就いていた人ほど、社名や肩書きがなくなることは不安かも知れません。でも誰しも昔は肩書きはなかったはずです。若い頃の自分を思い出し、これまで積み上げてきた経験、培ってきた知見とスキルを洗い出して考えてみましょう。(3)求人募集を見て現実を知っておく
新卒から一度も転職せず同じ会社で勤めてきた場合、求人募集を見たことがない人も多いのではないでしょうか。50代になって初めて求人募集を見て「自分が応募したいと思う求人ってこんなにないのか!」と驚いたなんて人も。(2)で洗い出した自分の提供できる価値と相性の良い募集がないか、現役時代からチェックしておくとよいですね。ちなみに、「定年後再就職」のキーワードで検索すると、警備、介護関連、ドライバー、運搬、マンション管理人、清掃関連の求人が多くヒットしますが、それだけ人手不足の業種ということ。働き口は少なくないのです。もちろん、丁寧に見ていくとそのほかにもさまざまな求人が見つかりますよ。
(4)やりたいことを見つけるワークをする
「やりたいこと」を広げて選択肢を増やすことで、やりたい仕事に出会える可能性が広がります。そのためにも「やりたくないこと」はできるだけ減らしたいもの。「これはキツい」といった思い込みを外して、初めてのことにもポジティブに取り組める人ほど、就職に苦労しません。自己理解を深めるワークをすると、視野が広がり、さまざまな仕事に興味がわいてきますよ。選択肢を増やしてみませんか?自己理解を深めるワークをして選択肢を広げよう
(5)会社の外の世界で仲間を作る(趣味・勉強・遊び)
筆者には、定年退職後にいろいろな形で働いているシニア層の友人も多いですが、皆さんに共通しているのが、趣味や遊びにいつも一生懸命であること。その趣味も、学生時代から続けている人は少なく、多くの人が50代や60代になってから新たな世界に飛び込んでいます。俳句、ギター、サックス、書道、カメラ、ウオーキングなど趣味はいろいろですが、人生100年時代の今、50代や60代といっても決して始めるのは遅くなく、趣味を生かして収入につなげる人もいます。資格取得を目指して、勉強仲間と一緒に定年退職後に法人を立ち上げるなんて人も。健康なうちに会社の外の世界で仲間を作り、互いに刺激し合うことは、やりたい仕事に出会える可能性を高めることができるのです。
とはいえ、社内の交流をおざなりにしてよいわけではありません。現役時代の会社の同僚から仕事の紹介や推薦をされて、やりがいのある仕事に就いている人も多くいるでしょう。社内外どちらにおいても、「あの人に頼みたい」「あの人と一緒に働きたい」などと信頼される人でいることが大事なのです。
(6)健康に留意する
一般的に定年退職を迎える60歳における平均余命(平均してあと何年生きられるかという期待値)は、男性23.59年、女性28.84年(※1)であり、およそ20~30年は第二の人生を送ることになります。しかし年齢と共に病気のリスクは高まるため、精力的に仕事や趣味に打ち込める時間は、これより短い期間となってしまいます。厚生労働省が3年ごとに発表している健康寿命(日常生活を制限されることなく生活できる状態)は令和元年時点で男性が72.68歳、女性が75.38歳(※2)であり、やりたい仕事に出会えたとしても100%の力を発揮できるのはそんなに長い時間ではないのです。
健康寿命をできるだけ延ばすには、日頃の生活習慣を見直すことや、ストレスを溜めないよう笑顔を意識すること、心をコントロールすることなど、個々人が健康に留意することがとても大切です。
(※1)「令和4年簡易生命表の概況」/厚生労働省
(※2)「健康寿命の令和元年値について」/厚生労働省
いかがでしたでしょうか。50代になったら、退職後にやりたい仕事に取り組めている自分をイメージして、できることから準備を始めていきましょう。お金の計画、スキルの棚卸し、そしてなにより自身の価値観にじっくり向き合うことが大事です。