5位:沢井製薬、後発薬業界最大手の検査不正への対応
後発医薬品(ジェネリック医薬品)製造最大手の沢井製薬で、胃薬で時間がたつとカプセルが溶けにくくなるという性質のものについて、製造後3年の薬に対する検査不正が発覚しました。試験時に溶けやすいカプセルに詰め替えて規定に適合したものとして処理していた、という不正です。2015年から実に8年間も放置されていました。業界では2020年以降、検査不正が相次いでおり、製品の自主回収、業務停止命令などが出されたことで、ジェネリック医薬品の供給不足問題にも波及しています。そのような中で業界最大手の不正発覚は、品不足に拍車をかけるだけではなく、業界そのものの信頼感を著しくおとしめるものと言えます。
同社内で不正が発覚したのが今年4月で、特別調査委員会を立ち上げ当該薬の調査を進めていたとはいえ、7月に製品の回収を開始しその事実を公表したのが10月というのは、健康に関する製品としてはあまりに遅いでしょう。本件はあまり大きく報道されていませんでしたが、業界リーダーとしての自覚に欠けた対応には猛省が促されることです。
4位:日本大学、アメフト部大麻不法所持による複数学生逮捕事件の対応
8月に日本大学アメリカンフットボール部で、大麻所持で複数の学生が逮捕されました。逮捕以上に問題となったのは、検察出身の澤田康広副学長が学生の大麻所持を知りながら、もみ消そうとしたのではないかとの疑惑でした。幹部がそろって出席した会見では、林真理子理事長と澤田副学長の不協和音が目立つなど、むしろガバナンス上の問題がクローズアップされる結果となりました。その後は、林理事長が澤田副学長に早期辞任を求めるも拒否にあったり、最終的に辞任することになった澤田副学長が林理事長をパワハラで訴えるというおまけまで付き、ボロボロの管理体制が白日の下にさらされたのです。日大では2018年に同じアメフト部が“危険タックル”事件を起こし、大きな社会問題となりました。監督、コーチの解雇、大学幹部への処分などが行われ、理事長が別件の脱税容疑で逮捕されて林新理事長が就任。大学運営の立て直しが本格化したものと誰もが思っていた中で、ガバナンス不全の組織風土がひとつも変わっていないという事実が浮き彫りになったわけです。日大の管理体制の再建は未だ遠いという印象です。
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