住宅ローンの変動金利が上がる日が近い?
住宅ローン利用者のうち約7割が利用しているとされる変動金利は、日銀の政策金利の影響を受ける短期プライムレートに連動します。
2009年以降、「変動」金利といいながらも、基準金利は2.475%のままの横ばい状態だったこともあり、変動金利の上昇をあまり想定しない状況が約15年続きました。しかし2024年にはマイナス金利政策が解除され、変動金利が上昇する可能性があります。
いざ変動金利が上がった場合、変動金利で住宅ローンを借りている人が固定金利に借り換えたらよいのかどうかを確認していきましょう。
マイナス金利政策の早期解除の可能性が高いと考える背景
マイナス金利政策の早期解除の見方が強まったのは、日銀の植田和男総裁の発言がきっかけでした。2023年12月7日の参院財政金融委員会で、金融政策運営について「年末から来年にかけて一段とチャレンジング(挑戦的)な状況になると思っている」と述べたことが注目されたのです。これは、異次元ともいわれるマイナス金利政策の出口戦略のタイミングを意識した発言と考えられます。日銀は今年12月18~19日に金融政策決定会合を開催します。来年は1月、3月、4月に開催を予定しており、これらのタイミングがマイナス金利の解除時期の候補になります。
中でも、日銀は2%の物価安定目標の実現に向けて、春闘での高水準の賃上げが重要とみていることからも、来年4月のタイミングが有力との予想が市場では増えています。
もっとも植田総裁は、粘り強く金融緩和を継続することで「経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針だ」とも述べていることからも、まずはマイナス金利からゼロ金利への流れになるのではないでしょうか。
まずは今の返済、大丈夫?
変動金利で住宅ローンを借りている人にとって、気になるのが当面の返済額でしょう。変動金利が上昇しても、毎月の返済額は「5年ルール」に基づき、最初の5年間は固定され、その後5年ごとに見直されます。変動金利の場合、半年ごとに金利が見直されますが、金利の上昇・下降にかかわらず、5年間の月々の返済額は一定です。
そのため、マイナス金利政策の解除を受けて、短期プライムレートが上昇して変動金利が上がったとしても、これまでの返済額と変わらないため、ひとまずは安心といえます。
6年目に毎月の返済額が見直される際には、「125%ルール」が適用され、返済額の増加は最大で25%以内に抑えられます。例えば、もし月々の返済額が8万円であれば、最大でも10万円に抑えられることになります。
これらのルールが適用されることで、当面はそれほど家計に大きな影響を及ぼすことにならず、安心して返済することができます。
しかし、上記のルールにはデメリットもあります。金利が大幅に上昇してしまうと、毎月の返済額のほとんどが利息へ充当され、元金が減らない、または利息自体も支払いきれないという、いわゆる未払利息の問題が発生することもあります。このような状況に陥ると、予定していた返済期間が終了しても支払い義務が残る危険性もあるため注意が必要です。
当面の返済が大丈夫だとしても、今後の返済は大丈夫?
変動金利が上昇する可能性がある場合、あらかじめ固定金利に借り換えたほうが安心かもしれません。変動金利の上昇リスクも怖いですし、借り換え先である固定金利も一段高い水準になると、さらに月々の返済額や総支払額で負担増となってしまうため、早めの行動が吉と出る場合もあるでしょう。もっとも、借り換えたものの結果的に変動金利が固定金利の水準まで上昇しない場合や、上昇したとしても総返済額では変動金利のままのほうが安い場合も考えられます。状況次第では、借り換えによって総返済額が増加し、「損」を確定させることになってしまうことにも注意しなければならないでしょう。
したがって、「損」を確定させたくない場合、金利上昇リスクを軽減する別の方法として、繰り上げ返済も考えられるでしょう。
まとめ
変動金利の見直しのタイミングは金融機関によって異なりますが、一般的には4月と10月の年2回、適用金利の見直しが行われることが多いです。4月の見直しによって、7月から12月までの6カ月間の適用金利が決まります。春闘での高水準の賃上げが重要視されていることを考慮すると、固定金利への借り換えを検討している方は、特に2024年の春先にかけて金利動向を注視していかなければならない状況が続くことになるでしょう。