労務管理

【実録】あの手この手で給料を削ってくる! 巧みな(?)“とんでも労働条件”スリー

当然大丈夫だと思って実施していることが実は法違反だった。誤った労働法の知識のまま労務管理がなされていませんか? 法令遵守はもちろんのこと、就業規則や個別の労働条件通知書(雇用契約書)の記載事項が適性に実施されているか今一度チェックしておきましょう!

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

まああの手この手で給料を削ってくる……

まああの手この手で給料を削ってくる……


当然大丈夫だと思って実施していることが実は法違反だった、労働法を巧みにかわす形に見せかけて労働者を誤魔化している……。

誤った労働法の知識のまま労務管理がなされていませんか? 特定社会保険労務士の筆者が見てきた、不思議な労働条件について紹介します。法令遵守はもちろんのこと、就業規則や個別の労働条件通知書(雇用契約書)の記載事項が適性に実施されているか今一度チェックしましょう!

事例(1)休憩時間を90分として実働7時間30分で給与計算されている……!

私の勤めている会社は、休憩時間が90分という労働条件です(苦笑)。もちろん休憩は60分しか取れません。

休憩60分の8時間労働でこの基本給だと最低賃金がクリアできないため90分にしたようです。大体の会社は勤務時間9時間から休憩1時間を引いて、8時間労働になると思いますが、勤務時間9時間から休憩1時間30分を引いた7時間30分労働で基本給を計算されているので、 見事に最低賃金を少し上回るようにしてあります。まあ、あの手この手で給料削ってきてます

 
休憩時間は1日の勤務時間が6時間を超えれば45分以上、8時間を超えれば60分以上必要です。この相談者の場合、就業規則・労働条件通知書(雇用契約書)に休憩時間90分と記載があるのに取れていないということが事実であれば違法です。そもそも労働条件は就業規則や労働条件通知書(雇用契約書)により合意されている必要があります。

労働法に疎い経営者もいますのでルール通りになるよう是正を求めるか、実態に合わせ45分・60分などに労使合意のうえ変更すべきです。一方で管理監督者の場合は休憩時間がなくとも問題ありません。労基法による管理監督者に当たるかどうかも確認しましょう。

<参考資料>休憩関係(厚生労働省静岡労働局)

事例(2)残業代を含んだ額で最低賃金をクリア……?

私はアルバイト社員(時給社員)ですが、残業が多いため支給額合計の換算で見て最低賃金以上の額が支給されていると判断していました。でもよく調べてみると、残業代を除いた基本時給額は最低賃金以下になっているようです。最低賃金を上回っているか下回っているかはどう判断するのが正しいのでしょうか。

 
最低賃金法によって最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。最低賃金の対象は毎月の基本的な賃金。実際に支給される賃金から次の賃金を除いたものが最低賃金の対象となります。
 
  1.  臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  2.  1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3.  所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  4.  所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  5.  午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  6.  精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
  
従って、残業代など(時間外手当・休日手当・深夜手当)を除いた額が最低賃金額以上でなければなりません。残業代などを含んだ額で判断する訳ではないのです。特にパート・アルバイトが多い企業は要注意。誤解していませんか?

出典:最低賃金の対象となる賃金(厚生労働省HP)

出典:最低賃金の対象となる賃金(厚生労働省)

 

<参考資料>最低賃金の対象となる賃金(厚生労働省)

事例(3)売り上げ減少で、経営者からの一方的な通告により賃金引き下げ……!

先日の定例会議で、経営者から「経営が苦しいため来月から社員全員○割ほど賃金を下げる」と告げられました。確かに売り上げが減少しているのは薄々感じていたので仕方なしとも思いますが、こうした一方的な方法による引き下げは問題ないのでしょうか?

 
賃金の引き下げ=労基法違反ではありません。しかし、就業規則・労働条件通知書(雇用契約書)に記載されている賃金よりも実際に支払われる額が少ない場合、労基法24条違反(給料の一部不払い)となる可能性があります。この場合は各労働者の個別的な同意が必要です(労契法8条)。同意が得られず、労働条件通知書(雇用契約書)による賃金よりも実際に支払われる賃金が少ない場合は、労基法24条違反(賃金の一部不払い)となる可能性があります。
 
また、同意が得られない場合でも就業規則の不利益変更が行われる場合も考えられます。就業規則などで各労働者の賃金等の額が決定されている場合には、これに反することはできません(労契法12条)から、就業規則の変更も合わせて行う必要がでてきます。変更は下記の合理性がなければできません(労契法10条)。
 
就業規則の変更により労働条件を変更する場合にはその変更が、以下の事情などに照らして合理的であること
  1. 労働者の受ける不利益の程度
  2. 労働条件の変更の必要性
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
  4. 労働組合等との交渉の状況

合理性なしの場合、就業規則に明記してある給料よりも実際に支払われる給料が少ない場合、労基法24条違反(給料の一部不払い)となる可能性があります。

<参考資料>労働契約法のポイント(厚生労働省)
<参考記事>賃金規程とは?記載内容・メリットなど賃金規程の基本
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