葬儀の流れや決まり
通夜にあたる「ベロリオ(Velorio)」は参列者が最も多く訪れる日で、自宅、あるいは斎場を借りて行います。どちらの場合も、棺の周りには生花が飾られ、ろうそくの火が灯され続けます。カトリックの聖書の中の「ロサリオ(Rosario)」を唱えて、故人が天国で安らかに過ごせるように祈ります。翌日、遺体は土葬か火葬され、同日の晩から自宅で「ノベナリオ(Novenario)」という儀式が始まります。夜に9日間にわたって続けられ、参列者はロサリオを唱えます。そして最終日に、故人の墓に設置される「十字架建立」の儀式が行われ、翌日に墓地(火葬の場合は遺灰を設置する場所)へ十字架を持って行き設置。再びロサリオを唱えます。
葬儀中、遺族は参列者のためにサンドイッチやクッキーなどの軽食やチョコラテ(ホットチョコレート)、コーヒーなどの飲み物を用意します。
参列者はお供えする花を持って行きます。厳格な決まりはありませんが、色は白が一般的で、品種はユリ、菊、バラが多いです。
最近では、参列者の服装もジーンズなどのカジュアルなものになりつつあって、身に着ける色も特に決まりはありませんが、中にはフォーマルを好んで黒いスーツを着用する人もいます。
埋葬方法
筆者が暮らすメキシコシティでは、かつては墓地での土葬が一般的だったので、日本のように家族が一緒の墓に納められることはありません。家族である場合は、同じ墓地内の別の場所に埋葬されることが多いです。なお、現在は火葬がかなり増えているので、遺灰を墓地や霊園、または教会の地下にある壁型墓地に納めます。あるいは自宅に祭壇を作って遺灰を祀る場合もあります。
墓参りと日本のお盆のような、メキシコの「死者の日」
日本と同じように、メキシコの墓参りでも花をお供えしたり、墓石を掃除したりします。ほとんどの墓地には流しの楽団がいるので、故人の好きだった曲をリクエストして演奏してもらったり、中には一緒に歌い出して、墓前で酒盛りを始める家族もいたりします。
毎年10月31日から11月2日まで祝われる「死者の日」には、墓や自宅の祭壇を飾り付けします。日本のお盆のように、亡くなった人たちがこの世に戻ってくる期間なのです。とはいえ、オレンジ色のマリーゴールドの花、カラフルな切り紙の旗の「パペルピカド」、愉快な表情のシュガースカルやガイコツの人形なども飾られ、祭壇には故人の好物が供えられます。墓や祭壇の周りに家族が集まり、夕食を食べたり、お酒を酌み交わして故人との団らんを楽しむ大切な行事なのです。