一度目の会見では「社名変更はしない」と断言した同社でしたが、二度目の会見ではメディアや世論に押される形で「社名を変更する」と方針を転換しました。
社名とは、いわば企業の顔であり企業イメージの根幹をなす存在でもあります。一般に、企業はどのようなときに社名変更を行い、どのようなメリットあるいはデメリットがあるのか、見ていきましょう。
実は東芝、ソニーも社名変更していた
まず世間的に多くあるパターンの社名変更は、知名度やイメージ向上を狙って行うものです。上場企業などでは古くから、日本語でお堅いイメージのする社名を分かりやすい横文字の社名に変えたり、単純で覚えやすい名前に変えたりしています。企業戦略的にはCI(コーポレート・アイデンティティ)戦略と呼ばれるものがそれで、企業イメージの向上と同時に、従業員に対するモチベーションの向上を狙い社名や社章、ロゴマークを変えるのが一般的です(社名を変えずに、社章やロゴマーク、コーポレートカラーだけ変える場合は、VI(ビジュアル・アイデンティティ)戦略と言います)。
昭和の代表的な実例で申し上げれば、古くは東京芝浦電気が東芝になったり、東京通信工業がソニーと社名変更したのがそれです。東芝は単純に長い社名を短縮したものです。
ソニーは、「音」を意味するラテン語の「SONUS」と「坊や」という意味の「SONNY」から名付けられ、会社のイメージを横文字的な社名にして表現したのでした。
どちらも社名変更の基本的な狙いは、高度成長期の花形産業であった家電メーカーとして、一般人が覚えやすく親しみやすい社名にすることで、購買しやすくすることでしょう。
好ましくないイメージを変えるために
旧社名が業界内であまり好ましくないイメージがあり、全く違う社名に変更した例もあります。例えば、銀行同士の2回の合併を経て出来上がった太陽神戸三井銀行は、結果的に三行の銀行名が並んだ長い社名だったのですが、合併行につきまとうまとまりのないイメージが強かったために、さくら銀行(その後住友銀行と合併して現三井住友銀行)と名前を変えたという例が挙げられます。
これは業界内で他行にも波及し、同じく合併行の協和埼玉銀行が、あさひ銀行(その後大和銀行と経営統合し現りそな銀行)と社名を改めています。
このように、社名変更は基本的に“イメージ転換”という大きなメリットがあるのですが、半面で新社名が旧社名との関連性が薄い場合、まったく別の新しい企業が誕生したという印象にもなるために、旧社名時代の実績が新社名会社のものであるという印象が引き継がれにくくなってしまう、という特性も否定できないのです。そうなると歴史のある企業などは、実際の信用力が落ちるわけではないものの、過去の実績からの裏打ち的なイメージは醸し出しにくくなる、というデメリットがあるとは言えるでしょう。
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