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ポロト湖畔の、とんがり湯小屋の宿で過ごす~界 ポロト(北海道:2022年1月開業)
アイヌ民族の文化継承の拠点でもある白老町、民族共生象徴空間「ウポポイ」に隣接し、館内デザインやサービスに、アイヌ文化を感じることができる「界 ポロト」。 象徴的なのが、アイヌ建築の特徴である「ケトゥンニ」構造に着想を得て作ったという、とんがり屋根の温泉施設「△湯(さんかくのゆ)」。かわいらしく個性的なデザインの建物がポロト湖畔に佇む様子は、アイヌ民族が現代に継承する世界観を彷彿とさせます。 露天風呂はポロト湖に続くように配されたインフィニティ温泉(お風呂と景色が一体化した温泉)。露天風呂へのアプローチは暗く、一層外の明るさを引き立てます。 立ち寄り湯として外来も利用できる「〇湯(まるのゆ)」は、天井にぽっかりと穴が開いており、時間や天気によって、その様子が変わるのが特徴。 自然との一体感を感じつつ、自分とゆっくりと対話をするのにいい空間です。泉質はいずれも、太古の植物由来の有機物を含有した「モール温泉」。茶褐色でぬめりのある温泉は、美肌の湯とも知られています。 ご当地楽(それぞれの地域の伝統工芸、芸能、食などが体験できる「界」ならではのプログラム)は、アイヌ民族が魔除けとして身につけるイケマを使ったお守り「イケマと花香(かこう)の魔除けづくり」。お食事に使われている地元の窯元とのコラボした器の数々もかわいらしく、目でも楽しめます。棚田暦で憩う宿~界 由布院(大分県:2022年8月開業)
棚田をぐるりと囲むように佇む「界 由布院」。どこを切り取っても絵になり、誰もが懐かしさを感じる田園風景が広がります。建築の設計・デザインは、隈研吾氏。 「上質な農家」をキーワードに、ロビーは農家の土間や台所をイメージし、棚田を見渡す座敷として「棚田テラス」を配置。ここに座り、季節ごとに、あるいは刻一刻とかわる棚田や空の様子を眺めていると、時が経つのを忘れそう。棚田の景色に癒されるのは全世界共通のようで、界 由布院は、外国人の滞在が他の界よりも多いといいます。米国大手旅行雑誌『トラベル・アンド・レジャー』が選ぶ 「The 100 Best New Hotels in the World(The It List)」に日本国内で唯一選出されたほど。 全室がご当地部屋。大分の竹を用いたインテリアや、大分県の国東半島で栽培されている希少な七島藺 (しちとうい)で作られた“蛍かご照明”などが配され、夜は幽玄な雰囲気も楽しめます。。 夕食の特別会席では、滋味豊かなスッポンの出汁に、牛肉、猪肉、鹿肉、穴熊肉の4種の肉をくぐらせる「山のももんじ鍋」を提供。珍しい上に臭みなどはなくグルメ派も納得のおいしさ。 朝食は、和食、洋食から選択ができるのですが、実は全国の界の中でも、朝食で洋食メニューを提供しているのは、界 由布院だけなのだとか(2023年8月現在)。 由布岳をのぞむ温泉大浴場は単純泉で、「あつゆ」と「ぬるゆ」を用意。贅沢な景色や食を楽しみつつ、のんびりと温泉を楽しむ癒しの宿です。
地獄パワーにふれる、異国情緒の宿~界 雲仙(長崎県:2022年11月開業)
和華蘭(わからん)という、日本、中国、オランダの文化が混じりあう長崎。その要素を取り入れた「界 雲仙」のロビースペースは、モダンでおしゃれ。アート好きな筆者は入った瞬間から魅了されました。 ここで開催されるご当地楽は長崎に伝わった「活版印刷体験」。自分で文字を選んで並べ、活版印刷機でカードに転写するのですが、作業に集中することで、気持ちがすっきりとして心地よく、できたカードも素敵で旅の思い出になります。 お待ちかねの温泉はといえば、煙と硫黄のにおいが立ち込める雲仙地獄に隣接したロケーションで、温泉のパワーを館内に居ながらにして体感できます。泉質は酸性含鉄単純温泉で、硫黄と鉄分の配合により、温泉の色も変わるとか。 ステンドグラスが美しい大浴場や、リビングスペースを湯上り処にした、部屋の半分以上が温泉のための空間という「客室付き露天風呂」なる部屋もあり、温泉好きも大満足。 51室ある客室はすべてご当地部屋「和華蘭の間」で、オランダから伝わったステンドグラスをモチーフにしたライトや、長崎の焼き物「波佐見焼」などで、文化の香りを感じることもできます。食事にも、さまざまな文化を取り入れており、先付は卓袱料理に欠かせない「豚角煮」をリエットにしたものを、温泉水を使用して焼いた「湯せんペい」につけて味わう一品。湯せんぺいをハンマーでたたき割ってからいただくなど、プレゼンテーションも楽しめます。
灯台と水平線を望むお詣り支度の宿~界 出雲(島根県:2022年11月開業)
島根県といえば出雲大社。そこから車で20分ほど、日御碕灯台のすぐ近くに佇むのが、「界 出雲」です。出雲ひのみさき温泉は、強塩泉で体の芯から温まる泉質。自然に囲まれた東西に開けた立地からは、日の入りと日の出、両方の絶景を拝むことができます。特に出雲松島と朝焼けの絶景が楽しめる東側には、フロントロビーやラウンジ、そして温泉大浴場などパブリックスペースが設けられ、好みの場所で極上時間を満喫できます。 館内は海や地平線を意識したアートに囲まれた空間、日御碕灯台や日御碕神社までは海岸沿いに遊歩道が設けられ、散策にもぴったりです。 夜にはご当地楽として、かがり火がたかれる屋外の舞台でスタッフが石見神楽を披露。出雲の国をかけた神様同士の戦いを描く神話「国譲り」の演目は、出雲大社の起源が描かれ、お参り前の鑑賞がおすすめだとか。 お参り支度の宿として、神様に献上する食事「神饌」の要素を取り入れた「神饌朝食」、ガイド付きで出雲大社を参拝する宿泊プランなども用意されています。 2022年に開業した4つの「界」、いかがでしたか? 個性的でユニークな宿が多く誕生していて、どこに行こうか迷いますよね。2023年は開業はひとやすみ。次は2024年春、宮城県秋保温泉の開業が発表されています。
お湯印帳や各施設で色が異なるオリジナルの風呂敷(※持ち帰りOK)など、界巡りを楽しむツールや、界巡りのプランなども充実。こちら(参考:星野リゾートの温泉旅館「界」は、なぜ人気? 若者からシニアまで大満足のサービスとは)でも紹介の通り、さまざまなサービスもあるので、お好みを探して、ぜひ出かけてみてくださいね。
■温泉旅館「界」