その主演を務めるのが伊藤沙莉さん。歌舞伎町にあるバー「カールモール」のママ兼探偵のマリコ役について、映画撮影の裏側、好きな映画や俳優のお仕事など、さまざまなお話を伺いました。
『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』主演、伊藤沙莉さんにインタビュー
――映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』は内田英治監督と片山慎三監督のW監督作品で、ふたりの監督が6つのエピソードを分業して1本の映画に仕上げています。まず、この作品に出演を決めた理由について教えてください。伊藤沙莉さん(以下、伊藤):マリコの恋人が自称・忍者だったり、エイリアンや宇宙船やスパイが出てきたり、本当に奇想天外な話なんですが、脚本を読んだとき、歌舞伎町ならこういうことが起こるんじゃないかと思ったんです。
マリコが勤めるバー「カールモール」に集まる人たちの群像劇でもあり、彼らの人生が交錯して描かれているところも好きでしたし、みんな少し変わっているけど、一生懸命に生きている姿や、ひとつひとつのエピソードがちゃんと心に響く。そこがいいなと思いました。 ――伊藤さんが演じるマリコは親しみやすくて優しい女性ですが、意外な過去の持ち主ですね。
伊藤:かなり壮絶な過去を抱えている女性ですが、それをあからさまに見せず、彼女のキャラクターを映画の中で“漂わせるように演じよう”と考えて撮影に臨みました。
誰にでも隠していることはあると思うし、そう簡単に本当の自分を他人に見せないと思うんです。だから「マリコはこういう人です」とはっきり色は付けず、スクリーンに漂っている感じを出したいと思いました。
ふたりの監督が正反対で面白い!
――今回、内田英治監督と片山慎三監督のふたりの演出を受けていますが、エピソードごとに監督が違うと演出法も違い、大変だったのではないでしょうか?伊藤:逆にやりやすかったです。内田監督、片山監督、それぞれから違う指示が出されるみたいなことは一度もなく、ずっと自由に演じさせてもらいました。
監督がふたりだから「ふたつの映画を撮っているみたい」とはならず、それぞれの現場でずっと新鮮な気持ちのままお芝居ができてありがたかったです。
――逆にふたりの監督と仕事をして面白かったことはありますか?
伊藤:ふたりは真逆のタイプなんです。片山監督は腰が低い方で「〇〇をやっていただきたいのですが……いいですか?」という感じで聞いてくださるんですが、内田監督は「じゃあ泣いてみて」とか突然指示を出されるんです。同じ映画に関わっている監督なのに、役者へのアプローチの仕方が真逆というのが面白くて。
私はそれぞれの監督と以前もお仕事をしたことがあるのですが、おふたりの共通点は、モノづくりが心底好きというところです。だから撮影をしているときも監督と一緒にモノづくりをしている感覚があり、それがとても楽しくて仕方がなかったです。 ――マリコに共感するところはありましたか?
伊藤:マリコは基本的に受け身なんですね。バーのママとしてお客さんが来るのを待ったり、探偵として依頼を受けたり、常に誰かの言葉や行動を受けて動き出す人。私もあまり能動的なタイプではないので、そういうところは共通しているかもしれません。
あとマリコは、いろいろな出来事に巻き込まれていきますが、どこか自ら巻き込まれに行っているような一面もあるんですよ。そういうところが好きだし、共感できました。
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