仏像鑑賞の基礎知識
昨今、仏像に関心を持つ人が増えてきたようで、東京国立博物館の興福寺展などは、少し前には考えられなかったほど大混雑しているそうです。昨年の薬師寺展もすごかった。二つの展覧会の大ヒットの理由は、奈良からスター級の仏像がお出ましになったということです。阿修羅と観音、どっちが偉いのか?
興福寺展では阿修羅像、薬師寺展では聖観音菩薩像と日光、月光菩薩像。どちらも、現地では見られない背中側なども見られるのがミソでした。仏像は拝むものであると同時に芸術品です。お寺に祀られているときは基本的に信仰の対象ですが、美術館に展示される場合は芸術品なので、右から左から、360度回ってじっくり鑑賞しましょう。ところで皆さんは、阿修羅と聖観音菩薩のどちらが偉いかご存知でしょうか?
仏像の世界は、意外と格差社会である
仏像には会社と同じように位の違いがある |
慈悲深いはずの仏様の世界に、なぜ格差があるのか。
それは、仏教が広まる過程で、いろいろな形に発展したからです。
まずは、この図を見てください。
三角形の上の方が偉く、下に行くほど位が下がります。
観音様(観世音菩薩)は二番目の「菩薩」の仲間です。
阿修羅ははじめは一番下の「天」の仲間でしたが、そこからも追放された立場です。
したがって、仏の世界では、観音様のほうが阿修羅よりも位が上、ということになります。
一番偉いのは如来
如来の頭には螺髪と呼ばれるボツボツがある。これがパンチパーマに見える |
もともとの仏教にはお釈迦様、すなわち釈迦如来しかいませんでした。しかし、仏教が広まるにつれ、お釈迦様以外にも、悟りを開いた存在があると考えられるようになりました。
仏像ウォッチングでよく出会う如来は、阿弥陀如来、薬師如来、大日如来などです。
奈良の大仏は毘盧舎那仏といいますが、これも如来の仲間です。
如来の特徴は、大仏様でもお馴染みのパンチパーマ風のヘアスタイルです。また、装身具類をつけず、薄い衣一枚であることでも見分けられます。が、大日如来だけは例外的に冠をかぶったりアクセサリーを身につけていたりします。
阿弥陀如来と薬師如来は同じような姿をしていますが、薬師如来は手に薬を入れた壷を持っていることで見分けられます。ただしこれには例外もあります。
阿弥陀如来は、親指と人指し指などで輪を作っていることが多いため、何らかのオッケーサインを出していたら阿弥陀如来と考えられます。しかしこれにも例外はあるので、ご注意ください。