話題のドリル! 「18×17」が5秒で暗算できるようになる「おみやげ算」
今、書店を最もにぎわせている書籍のひとつが『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(小杉拓也著/ダイヤモンド社)。この本を読み終えたときには、「19×19」までの2桁同士のかけ算なら5秒で暗算できるようになるということで評判で、老若男女問わず売れています。 まずは「おみやげ算」について、「18×17」を例に解き方の流れを紹介しておきましょう。 ▼おみやげ算を使った「18×17」の解き方1. まず、かける数17の「7」をかけられる数18にたします。
18+7=25
2. 次にそれを10倍します。
25×10=250
3. そして「18×17」の一の位同士をかけます。
8×7=56
4. 最後に2と3で求めた数をたします。
250+56=306
以上のような流れで解くことで、「18×17=306」という答えを出すことができるのが「おみやげ算」です。「19×19」までの2桁同士のかけ算なら、どんな数でも筆算を使わずに暗算でできるというのですから驚きです。
これは一体、どんな仕組みなのでしょうか。今、話題の「おみやげ算」に迫ります(なお、この記事は、本書で著者の小杉拓也氏が紹介していた考え方とは少し違う、筆者独自の視点で解説していきます)。
暗算の負担が軽くなる「おみやげ算」
2桁同士のかけ算を解く場合、たいていの人は筆算を使って計算するでしょう。仮に暗算で解くとしても、その流れは次の計算を縦に並べて行う筆算と同じではないでしょうか。▼一般的な「18×17」の暗算の流れ
18×17
=18×10+18×7
=180+126
=306
この解き方では、「2桁×10」と「2桁×1桁」の個々の計算は暗算でできたとしても、「18×10=180」を記憶しておきながら「18×7」を計算し、最後に「3桁+3桁」の暗算をする必要があります。一見、「おみやげ算」と大差ないように見えるものの、「作業記憶(ワーキングメモリー)」と呼ばれる短期的な記憶に多くの負担がかかってしまうのです。
ここで、改めておみやげ算の解き方をひとつの式にまとめると、次のようになります。
▼おみやげ算で「18×17」を暗算する場合
18×17
=(18+7)×10+8×7
=250+56
=306
「2桁+1桁」→「2桁×10」→「1桁同士のかけ算」→「3桁+2桁」と計算の過程が一つ増えますが、暗算の難易度でいえば、どれも比較的負担の少ない計算ばかりです。
おみやげ算のヒミツは中学3年生で習う「展開公式」にあった!
ところで、なぜこのような計算で答えを求めることができるのでしょうか。本書は、九九と簡単なたし算だけで計算できる小学生を対象に解説しているため、その”たねあかし”について難解な説明は載せていないようですが、実はそのヒミツは、中学3年生の数学で習う「展開公式」にあると筆者は考えます。展開公式とは、積の式を和や差の式にするための公式です。例を挙げると、次のような公式になります。 では、おみやげ算を展開公式を使って解いてみるとどうなるでしょうか。
▼「展開公式」を使っておみやげ算を解く方法
かけられる数の一の位の数をa、かける数の一の位をbとします(※つまり「18×17」の場合、かけられる数18=10+8の「8」をa、かける数17=10+7の「7」をbと考える)。
2桁の数同士のかけ算を展開公式を使って変形すると、以下のように表せます。
(10+a)×(10+b)
=10×10+10×b+10×a+a×b
=(10+b+a)×10+a×b(※a×b以外の部分を共通因数10でくくる)
=(10+a+b)×10+a×b
ここで求められた「(10+a+b)×10+a×b」を、先ほどの「18×17」をおみやげ算で計算したときの途中式「(18+7)×10+8×7」と比べてみると(「(10+8+7)×10+8×7」と考えるとわかりやすい)、見事に一致することがわかります。いったん展開して和の式にした後に、a×b以外の「10×10+10×b+10×a」の部分から共通因数10を取り出して、「(10+a+b)×10」と積の式にするところがポイントです。
56×54も暗算! 十の位の数の片方を「1」増やして計算する“おまけ算”!?
展開公式を利用すれば、本書で解説している19×19までのおみやげ算以外に、例えば次のような「十の位の数が同じで一の位の数の和が10になるかけ算」も暗算で解くことができます<展開公式を利用して暗算で解けるかけ算の例>
・25×25=625
・35×35=1225
・47×43=2021
・56×54=3024
例えば「25×25」の場合、十の位の数同士をかけ算して「2×2=4」とするのではなく、まず十の位の数「2」とそれに1を加えた数「3」をかけた数「2×3=6」を100倍して、「6×100=600」を求めます。そこに一の位の数同士をかけた「5×5=25」を加えて、「600+25=625」とすることで答えが出せるのです。
「47×43=2021」も同様です。まずは「4×4」ではなく、「4×5=20」を100倍して2000を求めます。次に「7×3=21」を加え、「2000+21=2021」と暗算で求めることができるのです。
十の位の数の片方を1増やすので、「おみやげ算」ならぬ“おまけ算”といえるかもしれません。ただし、この計算方法ができるのは、「25×25」や「47×43」のような十の位の数が同じで一の位の数の和が10になるかけ算で、どんな数でもできるというわけではありませんので注意しましょう。
せっかくですので、最後に本当にこの計算で答えが合っているのか、「25×25」を例に展開公式を使って解いてみましょう。
25×25
=(20+5)×(20+5)
=20×20+20×5+20×5+5×5
=20×(20+5+5)+5×5
=20×(20+10)+5×5
=2×10×(2+1)×10+5×5
=2×(2+1)×10×10+5×5
=2×3×100+5×5
=600+25
=625
ずいぶん複雑になってしまいましたが、確かにこの方法で計算できることがわかります。
ここで紹介した計算方法は、中学校で習う「展開」や「因数分解」を活用したやり方です。お子さんが小学生のうちは、このようなこむずかしい仕組みの説明は必要ないかもしれませんが、ひと工夫して計算することの楽しさは知っておいて損はないでしょう。これを機に、いろいろな“計算の工夫”を試してはいかがでしょうか。