漢字の宿題が苦手……漢字の「反復練習」の落とし穴!
漢字の宿題が苦手
何度も書くのは大変ですが、実は効果という点から考えても、書く回数は増やせばいいというものではありません。
たとえば、誤った文字をそのまま何度も書き続ける。一気に「偏(へん)」を書いてから、次にまた「旁(つくり)」を書く。そんなふうに「最終形さえあっていればいい、書く作業」になってしまうことが起こりかねず、そうなると漢字の定着率は当然下がります。
部分ごとに漢字を書いたり、途中から間違えてしまったりするのは、漢字の書き取りあるあるです
何度も書いて覚えることはひとつの方法ではありますが、反復練習以外にも漢字の学び方はいろいろあります。そこで今回は、従来の漢字学習が苦手な子のための勉強法や、家庭でのサポートの仕方などをアドバイスします。
学年別漢字学習のポイント
まずは、学年別の漢字学習のポイントを押さえておきましょう。基本的に漢字の学習は、象形文字(山・日)や指事文字(上・天)から始めて、会意文字(男・鳴)、形声文字(草・海)へと進んでいきます。漢字の構成(まとまり)や音を意識できるので、効果的に学ぶことができます。
■低学年(1・2年生)
基礎的な漢字をコツコツと覚えていく時期。漢字の意味や成り立ちに驚きをもって受け止められる頃なので、とにかく楽しく学んでほしいと思います。ちょっとしたことでも、ぜひほめてあげてください。『漢字はうたう』(詩:杉本深由起・イラスト:吉田尚令/あかね書房)や『漢字だいぼうけん』(著:宮下すずか・イラスト:にしむらあつこ/偕成社)などをはじめ漢字をテーマにした絵本や読みものもあるので、興味をもつきっかけに活用するのもおすすめです。 ■中学年(3・4年生)
覚える量や抽象的な意味の漢字が多くなるのにともない、苦手・嫌いな子が増えてきます。しかし一見複雑でも、分解すると低学年で学んだ簡単な漢字の組み合わせで成り立っているものが大半ですから、焦らず落ち着いて取り組めば問題ありません。その子に合った覚え方で苦手意識をなくしていきましょう。
■高学年(5・6年生)
社会や理科などで漢字を使う用語が増えてきます。難しいと感じるかもしれませんが、逆に好きな教科の用語から覚えるという方法をとることもできます。
漢字が得意だったり中学受験を控えていたりすると、単調で時間のかかる漢字の宿題を強く嫌がることもあるので見守りつつ対応を考えてみましょう。
漢字学習をサポートする親が知っておきたい3つのこと
次に、子どもの漢字学習をサポートするにあたって、意外と知らないこと、知っておきたいことを3つ紹介します。■1:漢字の先取りはしてもいいの?
基本的に先取りと相性が良いためとてもおすすめです。新しい漢字を学ぶことにより、語彙もアウトプットの回数も増えます。もし覚えた漢字を忘れてしまったとしても、見たことがあればアンテナに引っかかりますから、定着率はアップします。
また、なんといっても書けるようになりたいという気持ちがあるときが、一番の覚え時です。興味のあるもの(好きなキャラクターや技の名前、戦国武将の名前など)や、使う頻度の高い身近なもの(自分や家族の名前、住所、学校の名前など)は、ぐんぐん吸収します。 「習っていない漢字は使ってはいけない」という、いわゆる学校の“謎ルール”もありますが、使用不可とする先生でも「振り仮名を振ればいい」「使ってもいいが間違っていたら減点対象とする」など、条件次第でOKを出してくれることもあります。禁止になっていたら、まずは相談してみるといいでしょう。
■2:漢字の書き取りの宿題がつらいときは?
子ども本人はもちろんですが、あまりに嫌がったり手をつけなかったりすると、見守る親にとっても負担ですよね。そんなときは、嫌でも割り切って宿題に取り組むのか、先生に相談するのかなど、子どもと一緒に考えてみてください。
相談する際は、宿題の現状を共有するだけでなく、具体的にこうしたいということがあれば伝えましょう。先生の考え方も、「嫌なことでも最後までやり遂げられるようになってほしい」「漢字の学習であれば、内容は任せる」などさまざまです。納得できない答えもあるかもしれませんが、宿題の意図を知ることで対応しやすくなります。
先生への相談は文句でも否定でもないのですが、子どもが嫌がることも少なくありません。先生とのやり取りの発生や、自分だけ違う課題をすることに、抵抗があるという場合は、家庭での解決を図ってみましょう。たとえば、親子で話し合って宿題の目的を「漢字を覚える」から、「できるだけ短い時間で仕上げる」「なるべく美しく書く」など別のものにずらすのもいいでしょう。
■3:小学生でもキーボード入力をする時代、親世代と違う学習方法への理解
親世代よりキーボード入力する機会が増えている、今の小学生。入力時に気になるのが、漢字の変換しすぎ問題です。本来ひらがな表記が一般的なことばまで、書けなかったり読めなかったりするのに漢字にしてしまうのです。
それはそれで新しい漢字に触れる機会ともいえますし、何でも漢字にできるのがうれしいという気持ちもわかります。とはいえ「出来ます」「有難う御座います」「其の位」……読みにくいですよね。デジタル入力が増える今の子どもたちだからこそ、漢字を使わないというポイントを理解することも、実はとても重要です。
子どものタイプ別、漢字学習のコツ
ここからは、子どものタイプ別に漢字学習のコツや家庭でのフォローの仕方をご紹介します。ひとつのタイプだけでなく複数の特徴がある場合は、気になるものから試してみてください。【本が好き】
“読めるけれど書けない”漢字が多くなりがちなのがこのタイプ。「達」の「羊」の横画を二本にするような間違いをしがちですが、語彙は豊富で漢字の意味にもある程度のイメージをもてています。
この場合、漢字の形をしっかりと認識することが必要ですから、漢和辞典を使って漢字の部品(漢字を構成する要素・パーツ)や正確な意味を確認しましょう。たとえば上の例なら「羊」であることを意識できるだけで、間違いはグッと減ります。
【視覚からの情報が入りやすい】
構成要素が一つひとつはっきりと認識できるように、色分けをしてみてください。部首だけでなく、部品ごとに色をつけてもいいでしょう。
「態」の例のように部首を違う色で書くと、鉛筆・色鉛筆を持ち変えるときに集中力が切れやすいので、後から丸をつけるのがおすすめ
【話すことが好き】
書き順や漢字の覚え歌は、声に出して唱えてみましょう。特に書くのが苦手な子は、学校から指定がなければ、読みがなや漢字の意味は書かずに、声に出すだけでもかまいません。
親世代にも人気のロングセラー『下村式 となえておぼえる漢字の本』(著:下村昇/偕成社)などは、シンプルでわかりやすいと思います(問題集もあります)。 【書くのが好き】
反復練習は飽きてしまうけれど、意味のあることを書くのは苦にならないタイプであれば、工夫次第でのびのびと学習できます。
自分でテストを作ったり、辞書で熟語を調べて書いたり、日記や物語などの文章を書いたりと、アウトプットの量を増やすことが、漢字の定着につながります。大人はどんどんほめつつ、間違えた漢字があればそっと教えてあげてください。
【机に向かって勉強するのが苦手】
本来、学びと遊びはひと続きのもの。遊びの中で漢字を覚えていきましょう。漢字のカルタや熟語トランプなどのカードゲームで遊んだり、難読語クイズを出し合ったりすることで、漢字に触れる機会を作れます。デジタル教材でやる気が出る子もいます。 【漢字ドリルが続かない】
「勉強が続かない=やる気がない」ではないかもしれません。まずは、ドリルとの相性を見直してみましょう。たとえば、同じ文字を繰り返し書いたり、なぞり書きをしたりするドリルでコツコツ覚えたいか、多少難易度が高くても、読み書きだけを記入する形式のものの方がいいか。また、人気キャラクターのドリルや迷路などのゲーム要素があるものがいいか、シンプルな方が好みか。ドリルの綴じ方の開きはあまり気にならないか、開いたときにまっすぐになるものがいいか。切り離せるプリントタイプがいいか。紙質は、ツルツルがいいか、ザラザラがいいかなど。
【飽きっぽい】
飽きっぽいというのは、好奇心が強く、フットワークが軽いということ。上の方法を組み合わせてみてください。筆記用具を変えたり、きれいな紙に書いたりするのも有効です。
【「どうやって書くんだっけ?」とすぐに聞いてくる】
できれば辞書を引いてほしいところですが、毎回引くように言うと、勉強そのものが嫌になってしまうかもしれません。
ですから、こちらが答えるときにひと工夫してみましょう。たとえば「健」など一文字なら「にんべんに建設の建」、「市営」など熟語なら「市が営む」というように答えると、お子さんも、部首や成り立ち、熟語の構成を自然と意識するはずです。
【きれいに書かないと気が済まない】
宿題が終わらずやきもきしたり、こだわりの強さが気になったりと、親が不安になりがちなのがこのタイプ。思う存分書くのは悪いことではありませんが、そのせいで他のことができなくなるなど何らかの支障が出ている場合は、声をかけてあげましょう。
特に低学年で、先生の採点が厳しかったり、本人が真面目だったりすると、きっちりお手本通りでないといけないと思い込んでしまうことも。「今の字もきれい」ということを教えるために、父母兄姉などいろいろな人がほめてあげるといいでしょう。
また、子どもが「これはバツになる(から書き直したい)」と言っても、親の目から見て大丈夫だと思えば、そのまま提出してみてください。それでマルになれば、このくらいの文字でもいいというラインを広げることができます。
※学習障害(LD)などが原因で、文字を書くのが難しいこともあります。もし、ほかの発達には大きな遅れがないのにもかかわらず、子どもが、読んだり書いたりするときに困っている場合は、学校や地域の保健センターなどで相談してみてください。
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