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ほぼ5社に1社は定年退職金が出ない!?
定年退職すると必ず退職金が支払われる、と思っている人が大多数でしょう。ところが2018年10月に発表された「平成30年就労条件総合調査結果の概況」(厚生労働省※)によると、退職給付制度がある企業は80.5%。ほぼ5社に1社は退職給付制度がありません。※調査は5年ごとに行われる
まず退職給付制度について解説します。
退職給付制度は2種類ある
退職給付制度とは、一定の事由で退職する人やその親族等に対して一定の金額を支払う制度のことです。退職一時金制度と退職年金制度の2種類あります。●退職一時金制度
退職時に一括して一時金(退職給付手当、退職慰労金、退職功労報奨金等)を支給する制度
●退職年金制度
労働者の退職後、一定期間または生涯にわたって一定の金額を年金として支給する制度
企業の導入割合は、「2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」(2022年3月、日本経済団体連合会)によると、「退職一時金制度と退職年金制度の併用」が66.1%(2018年は72.1%)、「退職一時金制度のみ」15.9%(同10.9%)、「退職年金制度のみ」10.3%(同13.0%)です。
出所:2021年9月度退職金・年金に関する実態調査結果(2022年3月15日 日本経済団体連合会)
退職年金制度は「確定拠出年金」「確定給付企業年金」が多い
退職年金制度を持つ企業についてその種類を詳しく見ると、「確定拠出年金(企業型)」と「「確定給付企業年金(規約型)(基金型)」がそれぞれ7割を超えています。確定拠出年金(企業型)と確定給付企業年金を組み合わせた制度「キャッシュバランスプラン」は36.3%、原則廃止が決まっている「厚生年金基金」は1.7%、「中小企業退職金共済」は1.3%です(複数回答)。「確定拠出年金(企業型)」を導入している企業では、マッチング拠出(*)の導入が進んでおり、「導入済み」が46.5%、導入を検討中は6.4%です。なお、個人型DC(=以下「iDeCo」とする)は、マッチング拠出と併用することはできません。
(*)マッチング拠出:
確定拠出年金(企業型)を導入している企業の従業員が、自分で企業の拠出金額を上回らない範囲で掛金を拠出できる制度
では、定年退職金の平均相場を、学歴別、企業規模別、制度別に見ていきましょう。
大学卒の定年退職金は1997万円(厚生労働省)
前出の「平成30年就労条件総合調査結果の概況」によると、2017年の1年間における勤続35年以上の定年退職者の学歴・職種別退職金は次の通りです。( )内は2013年のデータです。
大学卒(管理・事務・技術職):1997万円(2156万円)
高校卒(管理・事務・技術職):1724万円(1965万円)
高校卒(現業職):1627万円(1484万円)
学歴別・退職給付制度の形態別に見ると、かなりの差が!
では次に、学歴別および退職給付制度の形態別の差を見てみましょう。大学卒(管理・事務・技術職)のケースでは、退職一時金制度のみは約1340万円、退職年金制度のみは約1960万円、両制度併用は約2330万円。退職一時金制度のみと、両制度併用の差は約1000万円! 老後資金の柱である定年退職金の額が、制度によりこれほどの差があるとは、ちょっと考えてしまいますね。
●大学卒(管理・事務・技術職)
退職一時金制度のみ:1344万円(1567万円)
退職年金制度のみ:1958万円(2110万円)
両制度併用:2329万円(2562万円)
●高校卒(管理・事務・技術職)
退職一時金制度のみ:1105万円(1470万円)
退職年金制度のみ:1749万円(1822万円)
両制度併用:2198万円(2272万円)
大学卒の定年退職金は2200万円台に(日本経済団体連合会)
前出の「2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」によると、標準的に進学し、学校卒業後ただちに入社し、その後標準的に昇進・昇格した者(管理・事務・技術労働者ー総合職)が60歳で定年退職した場合の退職金は、大学卒2243.3万円(2018年は2255.8万円)、高校卒1953.0万円(同2037.7万円)です。中小企業の定年退職金は約1092万円
東京都産業労働局労働相談情報センターが2020年12月に発表した「中小企業の賃金・退職金事情 令和4年版」(従業員10~299人の中小企業1012社、調査は2年ごと)によると、退職金制度がある企業は72%(令和2年は66%)です。退職一時金制度のみ」を採用している企業は72.5%、「退職一時金制度と退職年金制度併用」は22.7%、「退職年金制度のみ」4.8%(退職金制度がある企業を100とする)です。
では、定年退職金のモデル退職金を、学歴別、企業規模別、制度別に見ていきましょう。( )内は前回調査(令和2年)のデータです。
●60歳定年退職のモデル退職金の額
大学卒:1091.8万円(1118.9万円)
高専・短大卒:983.2万円(1026.0万円)
高校卒:994.0万円(1031.4万円)
●事業規模別の定年退職のモデル退職金の額
<従業員数 10~49人>
大学卒:979.3万円(979.2万円)
高専・短大卒:922.5万円(910.8万円)
高校卒:880.3万円(937.9万円)
<従業員数 50~99人>
大学卒:1141.8万円(1230.9万円)
高専・短大卒:979.2万円(1104.0万円)
高校卒:1065.9万円(1082.0万円)
<従業員数 100~299人 >
大学卒:1323.0万円(1342.8万円)
高専・短大卒:1172.0万円(1264.7万円)
高校卒:1204.5万円(1260.9万円)
●退職給付制度別の定年退職のモデル退職金の額
<退職一時金制度のみ>
大学卒:997.4万円(987.4万円)
高専・短大卒891.9万円(923.5万円)
高校卒:892.0万円(932.9万円)
<退職一時金制度と退職年金制度を併用>
大学卒:1319.2万円(1364.2万円)
高専・短大卒:1234.8万円(1296.1万円)
高校卒:1277.8万円(1305.5万円)
※「退職年金制度のみ」のデータの掲載はありません。
以上から、定年退職金の額は、学歴や企業規模、退職給付制度の形態によって大きく変わることがわかります
出所:「中小企業の賃金・退職金事情 令和4年版」(東京都産業労働局労働相談情報センター)
自社の退職給付制度をチェックしておこう
定年退職金の役割や形態、金額などは、今後も退職金制度や定年制の見直し、厚生年金基金の廃止、iDeCoの導入や確定拠出年金制度の拠出上限額の引き上げなど、さまざまな要因から変わり続けるでしょう。それは、リタイアメントプランニングだけでなく住宅ローンの組み方にも影響します。まずは自社の退職給付制度を、次に企業年金制度、特に確定拠出年金制度の取り扱いについて確認しましょう。これらは公的年金制度の改正とリンクしていますのでこちらのチェックも必要です。