ユニクロを運営するファーストリテイリングは、2023年3月から報酬の改定を発表しました。
ファストリの給与引き上げを例に引きつつ、給与を上げることの企業のメリット、デメリットと、従業員の立場からも知っておくべき最近の給与上げの仕組みと考え方のポイントなどをまとめます。
給与を引き上げるメリットとは
ファストリの柳井正会長兼社長は今回の給与引き上げに関して、世界水準で見て明らかに低い国内従業員の給与を海外並みに引き上げるべきとして、「グローバル企業として、GAFAはじめ米テック企業などから優秀人材を採用したい」(※1)とその狙いを話しています。柳井氏の話からもうかがわれるように、一般的に企業が給与引き上げを検討する際に最大のメリットとして挙げられるのが、「人材採用面でのプラス効果」です。求職者や転職者は、最終的に待遇で勝る企業を選ぶ確率が高くなるので、給与の引き上げは新卒、中途を問わず採用強化の大きな武器になるのです。
当然、給与の引き上げメリットとして、既存従業員の定着率向上も望めます。給与が上がって就業満足度が高くなれば、今得られている生活水準を維持したいという気持ちが強くなり、組織に対する求心力が高まるからです。
そして、それは同時に、企業内犯罪の防止効果も生み出します。満足度の高い給与を付与することで、従業員が仮に横領などの悪事を思いついたとしても、失うものの大きさからそれを思いとどまらせる効果が生まれるのです。金融機関の給与がおしなべて高いのは、現金を扱うビジネス故に犯罪発生リスクも高いので、犯罪防止の抑止力となるよう高い給与水準を設定しているといわれています。
給与の引き上げは、さらなる組織効果も見込めます。給与が上がれば従業員のモチベーション向上につながり、さらには個々人の成長意欲の醸成にもつながるという“正の連鎖”が期待できるのです。
また、外部からより良い待遇を求めて転入してくる人材は当然モチベーションが高いので、既存従業員との相乗効果で業務上にさまざまなプラス効果が生まれ、組織活性化にもつながるでしょう。柳井氏も今回の給与引き上げに関連して、「もっと良い商品ができるようになる」(※1)と組織活性化への期待感を表明しています。
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