NISA制度の抜本的改革・拡充
今回の税制大綱の最初の項目として挙げられているのが「NISA制度の抜本的改革・拡充」です。NISA(少額投資非課税制度)とは少額の投資であれば、そこから発生する利益(配当金・分配金・値上がり益など)が非課税となる制度のことですが、改正による変更点を以下にまとめてみました。・NISA制度自体の恒久化
これまでNISA制度を利用するには、2023年までに金融機関にNISA口座の開設をする必要がありました。しかし今回の改正で、2024年以降も恒久的に口座開設が可能になります。
・非課税期間の制限撤廃
これまでは投資した金融商品(株・投資信託など)が非課税となる期間は、一般NISAが5年、つみたてNISAは20年でしたが、今回の改正で期間制限が撤廃され、保有期間中は永続的に非課税となります。
・年間投資可能額の拡大
これまでは1年間に投資できる金額は、つみたてNISAは40万円、一般NISAだと120万円、どちらかを選んだ上での投資でしたが、今回の改正で年間360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)と投資可能額が大幅に拡充されます。
また生涯投資額は1800万円(うち成長投資枠は1200万円が上限)まで、とされています。 なお、施行されるのは2024年からです。それまでは現行のNISA制度での運用となります。現行のNISA制度については「一般NISAとつみたてNISA、投資初心者が始めるならどっち?」の記事を参照ください。
教育資金の贈与期間延長
次に、今回の税制大綱で挙げられている「教育資金の贈与期間延長」について紹介します。30歳未満の方が、直系尊属(父母や祖父母など)から、教育資金に充てるための金銭等を受け取った場合、1500万円までの部分については贈与税が非課税となります。
当初の予定では2023年(令和5年)3月31日までとされていましたが、今回の改正で期限が3年延長され、2026年(令和8年)3月31日までが適用期限となります。
教育資金とは、学校等(注1)に対して直接支払われる、入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費または入学(園)試験の検定料、学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費などとされています。
また学校等以外(学習塾、水泳教室、ピアノ教室など)にかかる費用や、その他に通学定期券、留学のための渡航費なども対象とされています。
(注1)「学校等」とは、学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)
結婚・子育て資金の贈与期間延長
また、「結婚・子育て資金の贈与期間延長」についても挙げられています。18歳(注2)以上50歳未満の方が、結婚・子育て資金に充てるための金銭等を受け取った場合、1000万円までの部分については贈与税が非課税となります。
当初の予定では2023年(令和5年)3月31日までとされていましたが、今回の改正で期限が2年延長され、2025年(令和7年)3月31日までが適用期限となります。
(注2)令和4年3月31日以前の金銭等の取得については「20歳」となります
結婚資金とは、結婚に際して支払う金銭(300万円限度)とされており、挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)などが挙げられます。
子育て資金とは、妊娠、出産および育児に要する金銭とされており、不妊治療・妊婦健診に要する費用、分べん費等・産後ケアに要する費用、子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)などが挙げられます。
まとめ
今回は2023年(令和5年)度税制改正大綱の中でも、今後の家計に関係のある「NISA制度の抜本的改革・拡充」「教育資金の贈与期間延長」「結婚・子育て資金の贈与期間延長」について紹介しました。大綱の冒頭には「まず、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充・恒久化を行う」の一文とともに、「NISA制度の拡充」が最初の項目として挙げられています。また「教育、結婚・子育て資金の贈与期間延長」もあわせて考えると、現在2000兆円と言われる個人金融資産の貯蓄から投資への誘導、高齢者から現役世代への資金移動による経済の活性化への政府の強い意志が感じられます。
教育、結婚・子育て資金の贈与は相手のあることですし、お互いの意思も確認した上で慎重に進めるべきかと思いますが、NISA制度の活用は本人の意思のみで始めることができます。新しいNISA制度は2024年からではありますが、今後の恒久化を見越した上で、現在NISA口座をお持ちでない方は、まずは口座開設してみてはいかがでしょうか。
《参考》令和5年度税制改正大綱
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