名門企業が抱える問題
大手電機メーカーや自動車各社、あるいは大手銀行など、歴史ある名門企業ばかりで不祥事が相次ぐ裏には、組織の構造的な問題が存在しています。彼らは、いわゆる昭和企業です。昭和企業は長らく、終身雇用を基本の雇用形態としてきました。終身雇用はメンバーの入れ替わりが少なく、文化が守られやすく、非常に濃いカルチャーができ上がりやすいのです。それは、日本的な官僚型組織管理をする上では大いに役立つのですが、一歩間違えると会社の常識が社会の非常識になってしまうリスクもはらんでいるのです。昭和企業の不祥事はこうしてでき上がった、社会の非常識的組織風土が生み出したものといえるでしょう。
組織文化に詳しい佐藤和慶應義塾大学教授は、「コンプライアンス違反などの企業不祥事の多くは悪意が原因ではなく、社会の変化に気づかず規範に反する行為を慣性で繰り返す無意識の定着にある」(※3)と説明しています。このような“無意識”を生む組織風土を改めない限り、不祥事に手を染めた企業がいかに組織風土の刷新を誓おうとも、大多数の固定メンバーで運営される組織である限りなかなかそこから抜け出せません。したがって、組織の根底に深く根を下ろした悪しき風土を改革することは、容易にはできないのです。
「最後通告」悪しき組織風土を払拭するには……
では悪しき組織風土の払拭は、いかにして行われるべきなのでしょう。もちろん、終身雇用の放棄と積極的中途採用による組織活性化が大きな起爆剤になることは確実ですが、この流れで組織風土を変えるにはかなり長い時間が必要となるでしょう。まずは、トップをはじめ指導者クラスに社外の血を入れることから始めるべきでしょう。第一歩として、自分たちの常識が社会の常識にかなっているか否か、より上の立場から外の目を入れることです。
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不祥事を起こしたわけではなくとも、古い組織風土を変えようと努力する昭和企業もあります。損害保険業界トップの損保ジャパンは、古くから組織内に根付いた昭和的なノルマ主義に危機感を覚え、会社の指示でなく「お客様のために何ができるか」という新たな文化を浸透させるべく、2019年から2年間の「ノルマ廃止」を実行しました。短期間で目に見える大きな成果が得られるものではないかもしれませんが、古い組織風土を囲ってきた多くの昭和企業にとって示唆に富んだ施策であると思います。
1990年代後半の金融危機、2000年代後半のリーマンショックという大きなパラダイムシフト期において、昭和企業たちは都度うみ出しを迫られ、古い体質からの変革を求められてきました。
そして2020年代初頭、突然のコロナ禍による新たなパラダイムシフト期に発覚した昭和企業の相次ぐ不祥事は、悪しき組織風土の変革を求める時代の最後通告であるのかもしれません。
三菱電機や日野自動車にとって抜本的な組織風土改革が求められている今こそ、10年後に会社が今の形のまま存続できるか否かの正念場になるのではないでしょうか。
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【参考】
※1:三菱電機 公式サイト(https://www.mitsubishielectric.co.jp/reform/)
※2:三菱電機 調査委員会による調査報告書 要約版(https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2022/pdf/1020-b2.pdf)
※3:日経新聞 2月26日 Deep Inside Opinionより