定年・退職のお金

国家公務員の「定年後」って?収入は?「暫定再任用」でどうなる?

国家公務員は令和5年度から定年年齢が段階的に65歳に上がり、定年年齢以降65歳までは「暫定再任用制度」で働くことができます。定年年齢引き上げ後の60歳~65歳の収入の変化と令和元年度60歳定年退職した国家公務員の家計状況をご紹介します。

大沼 恵美子

執筆者:大沼 恵美子

貯蓄ガイド

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<目次>
公務員の定年が65歳になる。65歳まで働き続けるためには体力維持が不可欠だな

公務員の定年が65歳になる。65歳まで働き続けるためには体力維持が不可欠だな

60歳以降、国家公務員の給与は2回、管理監督職は3回ダウンする

令和3年6月に決まった「公務員65歳定年」では、定年引き上げスケジュールと共に役職定年制の導入や給与、定年前再任用短時間勤務制の新設など、働き方に関するさまざまなことが決まりました。まず、定年後暫定再任用で常勤(=フルタイム勤務)する場合の給与の変化を解説します。

<定年年齢~65歳の年度末まで常勤職員として働く場合の給与と手当等の変化>
●60歳の誕生日の後の最初の4月1日~定年年齢の年度末まで(※)
  • 給与:60歳時点の7割
  • 期末・勤勉手当の支給月数:常勤職員と同等
  • 扶養手当・住居手当・通勤手当など:10割支給
※管理監督職は60歳の誕生日に役職定年制で降格され、60歳の誕生日から最初の4月1日までの期間は降格となった級の基本給に減額となる。その後定年年齢の年度末まで60歳誕生日時点(降格前)の7割になる。

●定年年齢の年度末~65歳(暫定再任用制度の期間)
  • 給与:職務の級ごとに設定された単一の俸給月額
  • 期末・勤勉手当の支給月数:俸給と合わせて適正かつ妥当な水準となる年間給与が確保できるような月数
  • 扶養手当・住居手当など:支給なし
 
暫定再任用制度とは、令和5年度から定年が65歳に引き上げられるまでの間、定年年齢後の最初の4月1日以降1年以内の期間を更新しながら65歳の年度末まで再任用で働くことができる制度です。フルタイムと短時間勤務があります。勤務時間は、フルタイムは週38時間45分(7時間45分/日)、短時間は週15時間30分~31時間までで1日につき7時間45分以内に割り振ります。

なお、給与や勤務条件については現行の再任用制度と同様で、現行の再任用制度で再任用され令和5年4月1日を迎えた職員は、同日に暫定再任用されたものとみなされます。

<参考資料> 国家公務員の定年引上げについて、詳しくは「国家公務員法等の一部を改正する法律改正の概要 ~定年の引上げ等について~(令和5年4月1日施行)」内閣官房内閣人事局)をご参照ください。

定年前再任用短時間勤務制が新設された

60歳に達した日(60歳の誕生日の前日)以降、定年前に退職した人を短時間勤務で採用できる制度が新設されました。定年前再任用短時間勤務制の対象となる期間は、60歳の誕生日前日から定年年齢に達した日以降の年度末。勤務時間は週2日(15.5時間)~5日(31時間)で決めます。短時間勤務職員として採用されるかどうかは任命権者の裁量によります。

出所:「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」人事院給与局内閣官房内閣人事局

ここからは、令和元年度に60歳定年退職した人を対象にした家計調査結果をご紹介します。

定年退職後、国の機関で働く人は8割、うち5割強がフルタイム勤務

令和元年度の一般職国家公務員の60歳定年退職者を対象に調査した「令和2年退職公務員生活状況調査の結果について(令和3年3月)」(人事院)をもとに、退職した国家公務員の定年後の家計状況をひもといていきます。

この調査によると、調査時点(令和2年9月1日)の調査対象者(4688人)の就労状況は、収入を伴う仕事に就いている人が89.6%です。

就労者のうち就労先が「国の機関(行政執行法人を含む)の再任用職員」が81.0%を占め、勤務形態はフルタイム53.4%、時短勤務46.3%、不明0.3%です。時短勤務の1週間当たりの勤務日数は「週4日」が83.7%を占め、「週3日」9.4%、「週5日」4.4%と続きます。

出所:令和2年退職公務員生活状況調査の結果について(令和3年3月)」(人事院)
https://www.jinji.go.jp/toukei/0151_seikatujoukyou/shiryouR2.pdf

次に、家計収支を見ていきましょう。

働いていれば黒字家計だが、働いていないと月11万円超の赤字

世帯の1カ月あたりの家計は、平均は収支トントンです。詳しく見ると、就業者世帯は8000円の黒字、非就業者世帯は収入では支出の7割弱しか賄えません。

<家計収支>
  • 平均……収入(ボーナスを含まない、以下同じ)37.7万円/支出37.6万円/1000円の黒字
  • 就労者世帯……収入38.8万円/支出38万円/8000円の黒字
  • 非就労者世帯……収入22.9万円/支出34.2万円/11.3万円の赤字
 
世帯の平均収入月額37.7万円のうち、「本人の給与・事業収入」は約66%です。ボーナスを加えると、就労者世帯はある程度ゆとりある生活が過ごせるようです。

次に世帯構成別の家計を見てみましょう。夫婦のみ世帯と親と同居世帯は黒字、子どもと同居世帯は若干の赤字、独身世帯は大赤字です。

<世帯構成別の家計収支>
  • 独身世帯……収入27.4万円/支出32.0万円/4.6万円の赤字
  • 夫婦のみの世帯……収入36.9万円/支出35.0万円/1.9万円の黒字
  • 親と同居……収入38.4万円/支出33.7万円/4.7万円の黒字
  • 子どもと同居……収入40.5万円/支出41.6万円/1.1万円の赤字
 
独身世帯は年間約55万円の赤字ですが、就労者は収入に含まれていないボーナスを加算すると収支トントンになると思われます。

国家公務員は65歳まで雇用と収入が確保できる!

民間企業で65歳定年としているのは22.2%にすぎず、70.6%は継続雇用制度で対応しています(令和4年「高年齢者雇用状況等報告」厚生労働省)。収入は、定年退職時の5割前後が多いようです。また、多くの企業は、55歳前後で減収を伴う役職定年を導入しています。

50代後半で権限と収入面でのダメージを伴う役職定年を経て定年を迎え、さらに収入が減少する継続雇用、というレールが敷かれている会社員からは、「公務員はいいよな、役職定年は60歳。定年後は更新とはいえ65歳まで雇用と収入が確保できるのだから」のため息が聞こえるようです。

出所:令和4年「高年齢者雇用状況等報告」(厚生労働省)

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