中学受験

偏差値とは? 学校の成績表は「絶対評価」なのに入試は……

成績表や運動会で「順位をつけない」時代の流れの中、入試では従来通り点数の序列で合否が決まります。偏差値とは何か、どう参考にしたらいいのかなどを解説します。ぜひ参考にしてみてくださいね。

宮本 毅

執筆者:宮本 毅

学習・受験ガイド

<目次>

偏差値とは? 「点数による序列」で合否を決める日本の入試

偏差値とは?

従来通り「点数による序列」で合否を決める日本の入試

最近では、徒競走などで順位をつけない運動会が徐々に広がっていると聞きます。通知表もクラス順位などから割り出す「相対評価」ではなく、その生徒の頑張りなどをそのまま評価する「絶対評価」になったり、学校でテストの成績順位を発表しなくなったなどの話もよく聞きます。

その一方で入試では従来通り「点数による序列」で合否を決めています。一部にAO入試や一芸入試、中には「スカベンジャーハント」を通してグループ活動をしながら人間性をはかる入試なんていう変わり種もありますが、多くの受験生は入試問題を解いてその点数によって合否が決められます。

大量の受験生の中から短時間で合格者を選び出すには、その方法が最も合理的であり不公平感がないからでしょう。やはり努力した分は数値化されて正確に評価してほしいところですよね。
 
つまり現在の教育現場は、序列化を避け「皆にチャンスがある」かのような幻想を与えつつ、受験時には厳しい現実を突きつけるという、いわば「ダブルスタンダード」の上に立っているといえましょう。なんだか子どもたちがかわいそうな気さえします。
 

“母集団”で大きく違ってくる、偏差値とは?

ところで「偏差値」とはいったいどういった概念なのかということをおさらいしておきたいと思います。偏差値を算出する計算式は以下の通りとなっています。

(本人の得点-そのテストの平均点)÷標準偏差×10+50

なんだか複雑そうですね。ともかくこの偏差値という数値は、その点数が平均点からどのくらい離れているかを、とても正確に表してくれる非常に優秀な数値であるといえます。

しかしながら、偏差値とはあくまでも単一のテストでのみ有効だということも忘れてはなりません。問題の難易度や母集団によっても、数値の出方が全く異なってくるのです。

たとえば、中学受験ではいわゆる「三大模試」と呼ばれる公開テストが存在します。「四谷大塚の合不合判定テスト」「日能研の全国公開模試」「首都圏模試」の3つですね。

これらの模試では学校ごとの合格必要偏差値が出されているのですが、たとえば早稲田実業学校中等部に80%の確率で合格できる偏差値は、四谷大塚では偏差値64、日能研では65なのに対し、首都圏模試では偏差値74、サピックスでは57です。
 
なぜこんなにも数値が違うのかというと、その最大の要因は母集団の差にあります。簡単にいうとサピックスの母集団は非常に優秀層が多いため、偏差値50のラインが一般よりも高いレベルとなってしまい、逆に首都圏模試を受験しにくる層はそこまで上位者がいないため、平均点がより取りやすくなっているからです。どちらの数値が正しいのかということではなく、両方とも正しいのです。母集団が違えば同じ学校の偏差値であってもこんなにも数値が違ってくるわけです。「偏差値」といっても一概にひとくくりにはできないものですね。
 
ちなみにサピックスのように優秀層の多い模試では、偏差値の高い学校についてはより信頼度の高い合格判定が出ますが、偏差値の低い学校の合格判定は残念ながら精度が落ちてしまいます。

逆に首都圏模試では、高偏差値の学校の合格判定の精度は低いのですが、これはその層の受験者数が相対的に少ないことに起因しています。たとえば御三家などのトップ校を志望している受験生はあまり受けにこないために、そのレベルの学校の合格判定をするための情報量がどうしても少なくなってしまうということなのです。ですから塾選びや模試選びでは、自分が受ける学校のレベルに合わせて選択するのがいいということになるのです。
 

学力の”最大瞬間風速”!? 乱高下しやすい偏差値

各模試における見かけ上の偏差値の差がもたらす弊害というものも確実に存在します。ある生徒が東京農大第一中学校(首都圏模試80%偏差値では70、四谷大塚・日能研では60、サピックスでは50)という学校に合格したときの話です。その生徒が入試を終えて久しぶりに登校した際、他の塾に通う子から「たいして偏差値が高くない学校だね」と言われ、非常にショックを受けたそうなのです。その生徒は頑張って努力して楽しいことも我慢してようやく第一志望に合格したのに、自分の受かった学校の評価があまりに低くて相当落ち込んだようでした。
 
一方で、ある中学校の特進クラスに合格した生徒と、特進クラスを目指していたが普通クラスにしか受からなかった生徒が、大学受験の時に前者は浪人後に中堅大学に進学し、後者は慶應大学に合格をしたというような例も枚挙にいとまがありません。

私は、偏差値というものは学力の「最大瞬間風速である」と生徒やその保護者の皆さんによく言います。その学年の、あるいはその月の、あるいはまさにテストを受けているその日その時間の学力しか表さない、という意味です。だからテスト内容やその日の体調によっても乱高下するわけです。
そのときの体調やテストの内容によって乱高下する偏差値……

そのときの体調やテストの内容によって乱高下する偏差値……

確かに「徐々に伸びていっている」「最近下降気味である」などの傾向はつかむことができるでしょうが、それでもその瞬間の実力を数値化したものに過ぎないのです。小学6年生のときの偏差値がそのまま高校3年生のときの偏差値になるわけではないのです。

偏差値ってある意味、刹那的なものなんですよね。そんなものにいつまでもこだわったり、一喜一憂したりするのではなく、参考程度にとどめておくのがいいと私は思います。

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