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今回取材で訪れた吉祥女子中学の中庭

中学受験の世界では、偏差値というものが「絶対唯一のものさし」としてとらえられることがよくあります。しかしトップ校に合格できる生徒はごく一部なわけですから、偏差値だけを価値判断のものさしにしてしまうと、多くの受験生が敗者になってしまいます。

そこで今回は、新興人気中学2校の取材から、次世代を見据えた志望校選びのための新しい基準を、ご提案したいと思います。

その前に、まずは代表的な視点をみていきましょう。


従来の志望校選びのオーソドックスな3つの視点

志望校選びの基準としては、まずは校風や指導理念があげられます。お子様が多感な6年間を過ごす中学・高校を選ぶわけですから、お子様の性格やご家庭の教育方針にマッチするかどうかは、とても重要です。そこをきちんと考えないと、学校が嫌になって、途中で通えなくなってしまう恐れもあります。

また通学時間や通学経路も大切ですよね。3.11以降、この点を志望校選びの第一条件にされる方も増えています。天災によって交通機関が麻痺してしまった場合、徒歩で帰ってこられるかどうかはいまや、志望校選びに欠かせない視点となりました。

そしてやはりなんといっても、大学の進学実績ですよね。お子様が卒業する大学によっては、就職時の有利・不利にもつながり、ひいてはお子様自身の将来を決めることになるかもしれないわけです。やはり大学の進学実績はキチンとみておかねばなりません。

ここまではごくごくありきたりなお話です。保護者の皆さんも、説明会などで聞いてきたことだと思いますし、ご自身でも充分考えられていると思います。でも上に挙げた3つの視点よりも、皆さんの心を縛り、多大なる影響を与えているものがあるのにお気づきでしょうか。それこそまさに、中学受験業界を席巻する「偏差値」なのです。


中学受験業界が設定した「偏差値」に縛られるという不幸

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山脇学園中学にも行ってまいりました。写真は新校舎の内部の様子。

私は、塾で直接子ども達の指導にあたっておりますので、その中で保護者の方と面談する機会も多くあります。

その時、保護者の方が希望されている学校と、指導方針や校風がとてもよく似ているが偏差値はそれよりも低い学校をご紹介することがあります。すると、多くの方がそれに対して眉をひそめます。中には偏差値表の60のラインのところに線を引いて、「ここより下の学校には行かせる気はありません」と断言される方もいらっしゃいます。まさに「あー、偏差値の影響力って大きいんだなあ…」と感じる瞬間です。

私の教え子に、第一志望の東京農大一中に進学した生徒がいます。その生徒は在塾中「学校で自分の志望校を友達に言えない」と言っていました。なぜかと問えば、「だって偏差値が低くてバカにされるから」と。東京農大一中は首都圏模試の偏差値表では63くらいある優秀な学校です。しかしある塾の偏差値表では48になっているため、それを元に見下されたり軽蔑されたりするそうなのです。

これは大変おかしな話です。偏差値というものは学力をはかる絶対的な指標ではありません。また、中学受験を取り巻く大人達が、自分の都合で改変したり歪めたりしている場合もあります。たとえばある塾で、A中学よりB中学の合格実績をアピールしたいと考えたとします。その場合に、自塾の優秀な生徒にB中学の受験を勧めてA中学は受けないよう進路指導すれば、自然とA中学の偏差値は下がりB中学の偏差値は上がります。このように恣意的に偏差値を操作することは可能なのです。大人が勝手に決めた数値によって子どもたちが窮屈な思いをするのは、本当に悲しいことです。このような状況は大人の側から変えていかねばなりません。

次のページではいよいよ、中学受験の志望校を決める新しい視点をご提案したいと思います。