死にたいほどのつらい思いを留まらせる手法・「PCOP」とは
「PCOP」の方式で自分オリジナルのノートを作っておくと、とてもつらいときに自分を救う手立てになる
死にたいと思うほどのつらさを抱えている状態を「心理的危機」と呼びますが、そこから「もう少し生きてみよう」と思い直すためのきっかけになるものとして、「PCOP」(Psychological Crisis Coping Plan:心理的危機対応プラン)という手法が、今、注目されています。
「PCOP」とは、アメリカの臨床心理学者 Crayg J.Bryanによって開発されたセルフマネジメントツール。A~Eの5種類の質問に答えることで、死にたいほどのつらい思いを抱えている自分を冷静にふりかえり、生きていくための自分なりのヒントを見出していく記入式の方法です。
この記事では「PCOP」のマニュアルをベースに、わかりやすく、記入しやすくなるように解説します。手帳やスマホ、パソコンなど、書くことができるものを用意すれば、だれでもかんたんに実施できます。A~Eの5種類の質問に対して、自分なりの考えを書いてみましょう。(【例】では、ちょっと恥ずかしいですが、私が実際に手帳にメモしている内容をご紹介します)
A:警告サイン…つらいときに心身が発しているサインは?
心がとてもつらいときに発している自分のサイン(どんなときに、心と体にどんなことが起きているのか)を書いてみましょう。【例】
- どんなとき:雨の日、とても寒い日、夜寝る前、朝
- 心のサイン:悲観的なことばかり考えてしまう。将来に希望が持てなくなる
- 体のサイン:頭痛、倦怠感、疲れて何もできない、家事や仕事がおっくう
B:セルフマネジメントの方法…ストレスを楽にする行動は?
つらくなったときに、ストレスをやわらげるのに役立つ方法を書いてみましょう。過去に役に立った方法でもOK。思いついたらどんどん書き足していきましょう。【例】
オレンジジュースを飲む/マッサージチェアでもみほぐす/ジムに行く/「王将」でラーメンと餃子を食べる/神社やお寺にお参りに行く/動物園に行く/パステルアートをする/「LIFE」(スーパー)に行く/ウクレレを弾く/海を見に行く/かき餅を食べる/散歩に出かける/友だちに手紙を書く/100円ショップに行く/どこか一か所、掃除をする/「ガリガリ君」を食べる…
C:生きる理由…なぜ生きていられるのか、生きてこられたのか?
とてもつらいときには、「生きている意味なんてあるのかな?」といったことばかり考えてしまうもの。そうしたつらいなかでも、自分が生きている理由、生きてこられた理由、ひとまず死なないために自分にかける言葉、などを書いてみましょう。【例】
- つらいなかでも生きているのはなぜ?:死ぬのは怖いから、家族がいるから
- つらくても生きてこられた理由:義務感
- 死なないために自分にかける言葉:「夜明け前がいちばん暗い」
D:サポーター…つらい時に話したい人、助けてくれそうな人は?
少しでも気持ちがやすらぎ、ほっとできる人。気持ちをサポートしてくれそうな人を思い浮かべてみましょう。亡くなった方でも、直接かかわりのない人でも、人間でなくてもかまいません。【例】
友人Mさん/友人Sさん/夫/母/息子/瀬戸内寂聴さん
E:緊急連絡先…いざという時に相談できる場、窓口は?
「セルフケアではどうにもならない」「今すぐ誰かに相談したい」、そんなときに相談できる窓口を書いてみましょう。【例】以下は「PCOP」から抜粋
- 近隣の救急外来
- 119に電話
- 通院中の医療機関・カウンセリング機関
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556 (相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なる)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24 時間対応)
- いのちの電話:0570-783-556(午前 10 時~午後 10 時)
- LINE 相談窓口「生きづらびっと」:ID 検索 @yorisoi-chat
- LINE 相談窓口「こころのほっとチャット」:ID 検索 @kokorohotchat
悩みの渦中にはアイデアが浮かばない…余裕のある時に「PCOP」を書いておこう
とてもつらいときには、少し心が楽になることをしてみたり、やさしい人と話をするなどの小さな工夫が自分を救う手掛かりになります。しかし、悩んでいる渦中には、そのようなアイデアは頭に浮かばなくなるものです。生きていれば、誰にでもネガティブなことしか思い浮かばない、つらい時期は訪れるもの。そうしたときのために、余裕のあるときに「PCOP」をつくり、つらい気持ちから自分を救うためのアイデアを書き記しておくとよいでしょう。
「PCOP」の原本はこちらをご覧ください。