遺族年金は、非課税の扱いになる年金ですが、注意点も?
公的年金から給付される遺族年金は非課税の年金です。所得税や住民税の算出では、つまり収入とみなされません。ところが健康保険と介護保険では収入とみなされることがあります。どのような時に収入となるのか、詳しくご説明します。
遺族の生活費をカバーする遺族年金
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は全員、国民年金への加入が義務づけられています。さらに働き方によっては、厚生年金にも加入します。これらの年金に加入している一定の要件を満たす人が亡くなった場合、遺族に対して生活費を賄うためにそれぞれの年金制度から次のような遺族年金※が給付されます。・国民年金に加入していた人(自営業者、フリーターなど)
18歳までの子のいる配偶者や子に対して、子が18歳になった年度末まで遺族基礎年金が給付。
・厚生年金に加入していた人(会社員・公務員・私学教職員など)
遺族基礎年金と遺族厚生年金が給付される。遺族基礎年金の支給対象と支給期間は国民年金と同じ。たとえば、厚生年金に入っていた妻が亡くなり、遺された夫が受け取れる遺族厚生年金に関しては、「夫が55歳以上の時に妻が死亡した場合で、夫の収入が850万円未満の時に、夫が60歳以降の老齢厚生年金開始まで」という条件で給付される。
※遺族年金の受給は、亡くなった人の加入状況や遺族の年齢、子どもの有無などで異なります。詳しくは下記記事をご覧ください。
「遺族年金の受給資格要件を確認」
「遺族基礎年金の受給額はいくら?」
「遺族年金の受給における6つの注意点」
遺族年金は収入としてカウントせず非課税
遺族年金は非課税となる年金ですので、所得税や住民税、国民健康保険税、介護保険料の算出では収入の対象外です。それにより、本人の収入によりますが、夫を見送ったシニアの妻の多くは、所得税や住民税が非課税、国民健康保険税や介護保険料が低額になるケースが多いようです。詳しくは「遺族年金は非課税!意外と知られていない事実」で解説しています。
遺族年金が収入とみなされるケース2つ
税金や社会保険料の算出では収入なしと扱われる遺族年金ですが、注意点があります。たとえば子どもなどが入っている健康保険に扶養家族として入る時や介護保険施設(ショートステイを含む)を利用する人の負担限度額認定の判定では収入として扱われます。
1. 健康保険の扶養家族になるための収入要件
被保険者と同居の場合は、年間収入(遺族年金も含む)が130万円(60歳以上等は180万円)未満で、被保険者の収入の1/2未満であること。別居の場合は、年間収入の条件は同じでその金額が被保険者からの仕送り額より少ないこと、です。
2. 介護保険の負担限度額認定
介護保険制度では、介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)やショートステイを利用する際に低所得者に対して負担限度額認定を行い、食費と居住費の補足給付※をしています。判定基準は、本人と配偶者を含む世帯全員が住民税非課税・本人の収入(遺族年金を含む)・本人(夫婦)の預貯金額、です。
※詳しくは自治体のホームページでご確認ください。
この介護保険の補足給付の判定に「遺族年金を含む」となったのは平成28年8月からです。
高齢者が増加し社会保障費が膨張する中で、高齢者にも応分の負担を求める流れができました。「遺族年金は非課税」の見直しは今後も徐々に進むと感じています。
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