「ゆふいんの森」とは
観光列車「ゆふいんの森」は1989年にJR九州初の本格的なリゾート特急として、独自のスタイルを持った専用車両とともにデビュー。以来、改良型ともいうべき「ゆふいんの森」3世と2編成で、博多~由布院(1往復は別府まで)を結び絶大な人気を博している。その魅力を車内の様子や車窓とともに紹介しよう。クラシカルなヨーロピアン・スタイルの列車「ゆふいんの森」
「ゆふいんの森」は、1989年に虎の子の1編成(キハ71系ディーゼルカー)4両でデビューした。その人気ゆえに、列車が増発され、1999年には「ゆふいんの森3世」(キハ72系)が登場し、1日最大3往復している(運休日あり)。正面の丸みを帯びたスタイルは1930年頃にドイツを走っていた列車を彷彿とさせるレトロモダンなテイストだ。キハ72系は2015年に1両追加され5両編成となり、通常は博多~由布院を2往復、初代ゆふいんの森であるキハ71系も4両編成のまま博多から由布院を経て別府まで1往復している。
バラエティに富んだ車内の様子
キハ72系は、キハ71系の構造を踏襲したハイデッカー車両だ。ドアを入るとステップを数段のぼって車内に入る。71系は車両ごとにステップがあり、車両間のスムーズな移動ができなかった。しかし、72系は改善され、車両間の連結部分にはブリッジが渡され、スムーズに進むことができる。このちょっとした仕掛けによって車内散策が楽しいものとなる。また、車内販売のワゴンもスムーズに通れる。 2015年に増備された4号車は車体にドアがないので、隣の3号車や5号車から乗車し、ブリッジを渡って車内に入る。ちょっと面白い構造だ。シートのデザインも4号車だけはユニークで、最近デビューした他のD&S列車の影響を受けているかのようである。手すりなど随所に木材を多用した座席は森の中でくつろぐような雰囲気を醸し出し、車窓を眺めながらのんびりと過ごすことができる。 隣の3号車寄りのトイレの向かいはフリースペースになっている。椅子はなく立席だが、天井から床まで広がる大きな窓からの見晴らしは抜群だ。木製の細長いテーブルがあるので、ちょっと気分転換に立ち寄るのもいいかもしれない。3号車の一部は真ん中に大きなテーブルが付いたボックス席だ。3人以上のグループで予約でき、由布院まで楽しく過ごせそうだ。 そして、その先にはビュッフェがある。立食スペースもあるけれど、混んでくると落ち着いて飲食できないので、あまり利用する人は見かけない。売店とみなし、購入するとすぐに自分の席へ戻る人がほとんどだった。 あとは、通路を挟んでゆったりした2人掛け席が並ぶばかりだが、先頭と最後尾は展望席になる。運転台が一段低いところにあるので、なかなかの眺めだ。ただし、ガラス張りの前面に横棒があるので、写真は撮りづらい。由布院への旅
列車は、博多駅から久留米駅までは複線電化の鹿児島本線を走る。久留米を発車すると、単線非電化の久大本線に入り、車窓が俄然良くなる。しばらくは、平地を走るけれど、南側には山並みが見える。耳納(みのう)連山の説明が車内アナウンスで聴かれる。 筑後大石駅を通過してしばらくすると初めて筑後川を渡り、川沿いに進む。日田駅に停車したあとは、渓谷美に見とれながら走る。何回も川を渡るうちに天ヶ瀬駅に到着。ここは別府、由布院とともに豊後三大温泉のひとつに数えられる。駅前を流れる筑後川の支流・玖珠川沿いに旅館が立ち並び、温泉地らしい雰囲気が伝わってくる。発車すると街の人たちが手を振って見送ってくれる。 しばらく走り、トンネルを2つ抜けると、進行方向右手に「慈恩の滝」が見える。車内放送とアテンダントさんが「慈恩の滝」と大書した紙を見せながら案内する。それに合わせて列車は徐行し、車窓からゆっくりと眺めることが可能だ。 やがて山間部から盆地にさしかかり、右手に台形状の不思議な形をした伐株(きりかぶ)山が見えると、列車は豊後森駅に停車する。駅を発車してすぐ右手にはかつて蒸気機関車の基地だった扇形庫が見える。歴史的な施設として保存され豊後森機関庫ミュージアムとなっていて見学も可能だ。かつて活躍した9600形蒸気機関車が1両静かに展示されているのが目に留まった。 豊後森駅から25分ほど走り、左手にふたこぶの頂上をいただく特徴ある姿の由布岳が見えてくると列車はゆっくりと由布院駅に滑り込んでいく。博多駅から2時間余りの旅は、リゾート地ゆふいんへのプレリュードとしては十分すぎるほど充実した内容だった。「ゆふいんの森」(JR九州のサイト)
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